2024年08月23日

Le Pendu-吊るされた男-(6)

吊された男_009

「がっはぁあっ!?」
弱い部分を責められて、すっかり弛緩していたところに、まともに腹の中央部めがけて強い衝撃を食らってしまった。自慢の8パックはいとも簡単に破られ、内臓の奥深くまで拳がめり込んでいった。
「いいぞ、この腹筋をかき分けて奥まで突き抜ける感覚、もう1発だ。」
「ぶふぅぅぅ。」
またも胃液が歪んだ唇から滲み出た。拳はグリグリと、まるで内臓を素手で触っているかのように腹を抉っている。

吊された男_010

「おう、腹筋が悲鳴を上げてるな。」
と指で腹筋自体をつまむ。
「あ、あああぁ。」
腹筋のうちの一つが千切れそうな感覚。腹筋の割れたところに指がズブズブと入っていき、腹筋のパーツをはがそうとしているかのようだ。
「おいおい、腹にしっかり力込めろよ、ボコボコの腹筋が壊されちまうぞ。」
崇は腹に力を入れようとしたが、普段であればパキパキパキと氷が割れるかのようにキレイな溝を造り上げることができるのだが、うまくいかない。
「随分とほぐれたようだな。そろそろ本気を出すか。」
「ふぐぅぅぅっ!!!」
強烈な右膝蹴りが防御能力を喪失した腹筋を突き破り、奥深くまでめり込んでいった。悶絶してのた打ち回ろうにも吊るされているからそれすら許されない。
「おらぁぁぁ!!!」
「喰らえぇぇぇ!!!」

吊された男_011

「まだまだぁぁぁ!!!」
連続で重い膝蹴りが容赦なく腹にめり込んでいく。
「かっふぅぅぅ。」
「がふぅぅっ。」
「けへぇぇぇっ。」
最早吐き出す胃液すら枯渇し、呼吸すら困難な状況だ。そして、それっきり、記憶はそこで途絶えた。

吊された男_012

寒くてハッと気が付いた。雄鶏の鳴く声が遠くから聴こえてきた。

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