2024年08月01日
Le Pendu-吊るされた男-(3)

急に顔に冷たい液体がかけられた。目を開けると辺りは真っ暗だった。夜?アンケートは昼だったなと思ったが、首を持ち上げたところを「お目覚めか」という言葉とともに左手首を急に持たれて立ち上がらされた。カチっと音がして、両手首を上の架柱に固定された。半分寝ぼけていた頭も目覚めた。どこか分からないところに両腕を固定されて動けない状態にされた自分がいる。そして、何も身に着けていない。状況が全く把握できていないところに、「そろそろゲームを始めるとするか。よく来たな、今日は長い夜になりそうだ、ゆっくりしていけ」という声が聞こえた。どこだかわからないが、どこかの地下室のようで、湿っぽくてカビ臭かった。前方に階段が見えて上が明るい。「うわぁぁぁ。」と声を出した。地下室内に自分の声が響き渡り、そして反響して吸い込まれていった。身動きができない状態で、地には足が付くのだが、肩幅程度に開かれてダンベルで括られていて自由には動かせない。すると、誰かが下りてきた。そして、地上との扉が閉められて、懐中電灯の明かりだけが見えている。誰かが近づいてくる。

「誰、誰ですか?僕が何かしたでしょうか?お金も何も持っていないし、こんなことをされる覚えがないです。人違いですよ、人違い。」
目の前にいるだろう懐中電灯の向こう側に向かって、半ば叫ぶように言ったのだが、何ら反応はなく、また静けさが戻った。懐中電灯は少し手前で止まり、代わりに左右の壁から弱いスポットライトがこちらに向けて照らされた。
「なかなか良さそうだ。これは楽しめそうだな。」
「何する気だ!」
「まあ、そんないきり立つな。どうせ叫んでも喚いても、外に声など洩れないし、誰も来ることはない。それに・・」
男はクククと笑うと、
「そのうちもっと叫びたくなる時が来る。叫びたければいくらでも叫べばいい。」
また、男はクククと笑った。

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