粗末
2020年11月09日
終わりの見えないデスマッチB(29)
客がまばらなときから会場入りしていた。オッズが出たが、18倍と客からは全く期待されていない数字が出ていた。ジャナバルもナデートも、実来より年上で実来が来る前からいるのにも関わらず、まだデビューはしていなかった。それに、確かに出ることは夢でもあったのは確かだけれど、だからといって健もまだデビューして間もなかったので、皆が驚いていた。どうやらまだ会ったことのないオーナーの意向らしい。しかし、リングは遠目で見ていたけれど、近くで見ると結構汚く、観客席も薄暗かったから分からなかったが、こうして明るいところで見ると、本当に金をかけていないというか、パイプ椅子なんてゴミ捨て場から拾ってきたのかと思うくらいさび付いていたりクッションから緩衝材が飛び出ていたりしていて、階段状になった観客席も、いかにも素人が作ったような、ただ座る場所さえあればいいくらいに作られた簡素なものだった。「下見?でも、そんなところを見ていても何もならないんじゃないか?」と声をかけられた。サングラスに黒いスーツ姿だが、どうしても着せられている感が否めないくらいにまだ幼いように見えた。「リングに上がってみたら?」「いや、勝手にそんなことをしたら怒られます。」「俺が許可すれば大丈夫だから。」容貌を見ても、まあ裏社会の人間ではないが、裏を知った感じでもあるような、そんな印象だった。折角言うのだからリングに初めて上がってみた。ここは思ったよりも明るく、場所によっては眩しかった。サングラスの男の方を見ると、実来よりも興味を持っていろいろ見ているようだった。「今日、デビューだろ。頑張れよ。」と、ロープの外に出て、こっちを見つめていた。
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toppoi01 at 08:30|Permalink│Comments(0)