急所蹴り

2023年04月05日

だって夏じゃない(1)


金的011a0a1

金的011a0a2

門田淳平と定岡光和は、今日もこの逗子海水浴場で監視員の仕事をしていた。普通であればライフセーバーが携わる仕事であるが、ここ数年はライフセーバーのやり手がおらず、逗子海水浴場のような波も穏やかで遠浅の海岸は海難事故もここ数年ゼロが続いているということもあって、淳平も光和もライフセーバーの経験はなく、泳ぎが得意だからという履歴書の文言だけで採用された。淳平は細身で、脱ぐと腹筋がボコボコ浮き出て見えるほどだからそれっぽいのだけれど、光和の方は現役柔道部だからか異様に筋肉の盛り上がったマッチョな体形をしていて、水に入ったら絶対沈むなという感じであったのに、採用されるくらいであった。まあ、本当にこれといって事件事故はない。家族連れが殆どだ。淳平は、してはいけないことになっているのだが、忙しいときは海の家のバイトもしていた。ここは湾全体が見渡せる小高いところにあって、のんびりとできる。と、遠くに一人だけ、浮かんだり沈んだりという影が見えた。海の家にいた淳平は光和にサインを出す。が、こっちのいうことに気づいてはいるのだが、どうも動かない。埒が明かないのでそっちに行くと、
「今、このおばあさんが体調を崩したみたいで介抱しているんだ。あっち、やっておいてくれないかな?」
と、おばあさんがおそらく熱射病か何かで寝ているところを団扇であおいでいた。結局、小学生くらいの女の子を助けたのは淳平だった。だから、おそらく泳ぎは不得手なのであろう。

人気ブログランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
toppoi01 at 14:58|PermalinkComments(0)

2022年12月24日

ウルトラマンジャック(1)

「うぉっと、現れました。われらが正義の味方、ウルトラマンです。」実況中継の割には、淡々と話すアナウンサー。ウルトラマンとその相手、ゼラブ星人が荒川の湿地帯に現れた。出現する1時間前に時空が歪み、周囲の大気が急に不安定になるので、カメラは間に合わなくとも無人撮影機が周囲を取り囲む。「あっと、ウルトラマンから攻撃を仕掛けました。蹴る、蹴る、一方的な展開だ、しかしゼラブ星人には効いていない。」実況といっても実は1時間前の光景で、モザイク処理が施されている。当初は臨時ニュースの扱いだったが、ゼラブ星人の声明によって人間に危害を与えないことがわかると、ウルトラマンとの戦いはショーの様相を見せてきた。今まで、この一方的な展開、ウルトラマンが殴る蹴るをしたところでゼラブ星人にはなんらダメージを与えていない、それだけのものだったのだが、この戦いの後、アナウンサーも淡々と話すということはなくなった。「あっと、ウルトラマンが倒れました。それをゼラブ星人が、折った、折りました、右腕から明らかにバキッという音が聞こえ、あっと、足も、足も折りました、両足です、ウルトラマン、悶絶しています、ウルトラマン、」というところで、両者はまた時空の歪みに消えていった。

人気ブログランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
toppoi01 at 08:00|PermalinkComments(0)

2019年12月15日

イスラエル王ダヴィデ(8)

リングで急所蹴り_01 (2)
「がぁぁぁあ!!!」
内臓の奥深くから絞り出されるような雄叫びが広場を揺るがせた。これはダヴィデも未だかつて経験したことのない、死にも勝るような痛みであった。腰巻きから大部分がはみ出したそのモノは、どうしたってその鋭い攻撃から逃げおおせるはずがなかった。そして、それから三日三晩、ゴリアテの息子は憎しみを込めて、ありったけの力でダヴィデの下腹部だけを狙って蹴り続けた。その度に、人間の声とは思えない咆吼がバビロンの街の隅々まで響き渡った。カラダに響き渡る重低音のような痛みに耐え、ようやく収まってきたかと思われる頃に、ゴリアテの息子はまたも渾身の力を込めて下腹部を痛打した。ひたすらその繰り返しだった。アブディエルによって畏怖すべき程に巨大化した下腹部は、痛みもそれに比例して筆舌尽くしがたいほど壮絶なものであった。時には二つの大きな玉は勢いよく上方に跳ね上がって剛毛に覆われた臍の上辺りまで達し、棍棒のように不敵にぶら下がるモノも思いっきり跳ね上げられ、その衝撃で、バチンという激しい音と共にタマと一緒に汗まみれの引き締まった腹に叩きつけられた。また、時には玉が二つして足の甲と股との間に見事に挟まれてゴム毬の如く扁平に変形して潰された。折角アブディエルから賜ったモノがかようにしてまで苛まれるとは。ダヴィデは涙を流し、後生だから止めてくれるよう惨めに懇願したり、また王であることを忘れたかのように泣き叫んだりもした。前王が下腹部を蹴り上げられるという屈辱よりも今ここにある尋常でない痛みがそうさせたのである。しかし、ゴリアテの息子は父親の惨めな最後を聞いて育ったので、醜態を晒して許しを請うダヴィデの願いを聞き届けるどころか、決して下腹部を蹴り続けるのを止めようとはしなかった。

人気ブログランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
toppoi01 at 08:30|PermalinkComments(0)
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

記事検索
最新コメント