ノールール

2023年09月08日

タワー・ド・ボンバイエ(4)

「ルールは空手のルールがいいのかい?それとも他に何か提案があるの?」
ハッと他の二人が啓太郎を見つめた。
「高梨君、それは空手のルールではないと、上級生になんて説明したらいいか。」
「啓太郎のことだから、型で優劣をつけようというんじゃねーかと思ったら、なんだ、話が分かるじゃねーか。」
「バカ、調子に乗るな、左右田。空手部の伝統をここで乱すわけにはいかないだろ。」
「へっ。伝統っていうけどな、そもそものこのタワー、最初はガチでやってたんだろ?それが元通りになっただけの話だろ。」
「左右田君の言うのも尤もだよ。」
と啓太郎が話をつないだ。
「そもそも空手は護身術といわれるくらい戦わない武道だけれど、実戦で役に立たなければ護身術にもならないよね?それに、昔は審判もいない、タワー・ド・ボンバイエ本来の喧嘩ルールだったのだろうし、左右田君が良ければ、ノールールでいいよ。この二人が勝負あったと判断するまで。」
「バカにするな!!!」
左右田は激怒して大声を出した。完全に格下と思っている啓太郎になめられていると思ったのだろう。
「テメエ、後で後悔しても知らねーぞ。オマエなんか、俺が本気出せば瞬殺だからな!!!」
と、上着を脱ぎ去って放り投げた。左右田のカラダは、それこそ筋肉隆々、肩の盛り上がりといい、腕の太さといい、胸板の厚さといい、筋肉量がものすごく、空手着を着ていなくとも筋肉が守ってくれているといった感じであった。対する啓太郎は、ゆっくりと上着を丁寧にたたんで床に置き、その上に眼鏡をそっと置いた。色白で左右田に比べると華奢であるが、細マッチョという言葉がしっくりくる、引き締まっていて無駄のない筋肉で、それこそ筋肉だけが浮き上がったようなカラダをしていた。腹筋もまるでアイス最中でもみているかのような、きれいな8パックにパキパキと割れていた。
「じゃあ、二人、主審はどっち?」
そんなこれから対戦する相手の体格差を見ても、啓太郎はペースを崩さなかった。周囲は固唾を飲んで見守っていた。

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toppoi01 at 13:07|PermalinkComments(0)

2022年12月27日

ウルトラマンジャック(2)

「隼人、しっかりしろ、おい、隼人。」
狭山湖のほとりで気を失っているのが見つかった。というか、いなくなったときは狭山湖のほとりで伸びている。彼の名は井手隼人。科学特捜隊隊員であり、ウルトラマンだ。彼がウルトラマンになったのはよくわかっていない。ある日、寝ていた時に体が激しいけいれんを起こして昏睡し、それ以来、勝手にウルトラマンにさせられているというのだから、寝ている間にウルトラマンという宇宙人が寄生した説が有力である。隊員の間では、隼人がウルトラマンだということは、隊員の間では周知の事実だ。ウルトラマンが出現したら隼人はいなくなり、ウルトラマンが倒れて消えたら隼人が全裸で狭山湖にいるからだ。どうやって狭山湖にたどり着くのかは、まだ誰も分からない。ただ、ウルトラマンと怪獣が戦っている様子は防犯カメラでとらえられ、その日のうちに全国に放送されている。そのうち、ウルトラマンの正体がバレる日も来るのかもしれない。そう思うと、科学特捜隊は気が気でならない。なんせ、ウルトラマンが破壊した建造物は数知れない。ウルトラマンも伝説ではスペシウム光線とか使えるはずなのだが、今は全く使わない。また、伝説ではいろいろなところに出没していたが、今のところ市街地で多く出現しているため、破壊された建造物もそれなりに多い。ウルトラマンジャックが隼人だと露見すれば、莫大な損害賠償を請求されるに違いない・・

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