終わりの見えないデスマッチCⅡ

2022年02月21日

終わりの見えないデスマッチC(9)

翌週、指定時間に来ると、こちらをジッと睨んでいる、金髪をソフトモヒカンにした、まあヤンキー上がりなんだろうなって外見だった。弘一はそもそも対戦相手の情報をほぼ見ていない。写真も不鮮明であるし、そもそも先入観を持たないでいたいからというのもあった。それに、この格闘場は撮影は禁止だ。もちろん興業主は撮っているのかもしれないが、試合を目の前で見ない限りは対策を立てようがない。リングからわぁぁという悲鳴めいた声が聞こえた。対戦相手がリングを降りて駆け出していた。不戦勝か。不戦勝というのも実際は多い。対戦相手が現れないと言うこともよくあることだ。また、見た感じで勝てないと分かれば、早々に降参してしまうこともある。現れない場合は不成立になるので、そもそも賭けにもならないしファイトマネーさえ出ない。先週の弘一もそうだったが、現れたけれど対戦せずに不戦勝という場合、ファイトマネーと賞金ももらえ、怖じ気づいて逃げ出した相手にもファイトマネーは出る。もちろん怒号が飛び交って手当たり次第の物をぶつけられたりはするが、試合はしたことになるのだ。それにしても、その相手が戻ってくるが、遠目で見ても毛皮を着ているよな?という感じであった。近くで見ると、顔は人間だけれど、明らかに尻尾が生えているし、そもそも猫背の背中はかなり硬そうな黄金の毛で一面覆われていて、毛が生えていないのは顔と尻くらいのものだった。それでいて服を器用に着るところを見ると、やっぱり人間なのかなとも思ったが、まあ何されるか分からないから逃げ出す理由もよく分かった。リングに降りて対峙すると、さっきよりも増してこちらを睨んでいた。コングが鳴ると、前傾姿勢のまま徐々に近づいてきて、明らかに足を掴もうとしていたが、弘一がカラダを一回転させつつ放った蹴りが狙い通り顔面にヒットして、小さなカラダごと吹き飛んだ。足の感触からは顎の辺りに当たったか?まあ、それっきりだった。

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2022年02月24日

終わりの見えないデスマッチC(10)

上を見ると、更衣室の辺りからさっきの毛むくじゃらがこっちを見ていた。顔つきはまだあどけなくて、人だとしたら人の良さそうな感じであった。そもそも服装が毛をまるっきり隠すようなものだったので、服を着たら人そのものであった。弘一が着替えている間もずっと弘一を珍しい物でも見るかのように見つめていた。人が珍しいのだろうか、やっぱり人ではないのかな、とも思ったが、後から来た少年を見ると笑顔になり、普通に日本語を話していたので、人なんだなとも思ったが、口を開いたときの牙を見ると、咬まれたりしたら結構まずいのかなとも思ったりした。更衣室に戻ってから気分転換にまたタバコを手にしたが、まだその苦みに慣れず、手に持ったまま火を付けずにいた。次の試合も半グレなのだろうか、首の辺りに鯉の刺青をした細身の男と、やはり足のふくらはぎ辺りに桜吹雪のようなタトゥを入れた細身の男が睨み合って、お互い罵り合っていた。力比べを賭け勝負に使ったのか。暴力団も半グレも、資金難だからな。それにしても、弘一はそのクソつまらないであろう試合の前に組まれていたと言うことに些か不快な気分であった。俺はこんな屑みたいな奴らの前座かよと。以前はメインを張ったこともあるというのに、しばらく顔を見せなければこんな扱いか。まあ、人気商売だからな。あと数試合残っていたが、観るだけ時間の無駄だなと思い、出口に向かうと、携帯電話のバイブが右ポケットで震えた。

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2022年03月14日

終わりの見えないデスマッチC(11)

見ると、メールが入っていた。この前の吊り目からだ。見ると、「残りを観ていかないのか?」と書いてある。ここにいるのか。戻り、更衣室から観客席を観たが、それらしき男は見当たらない。不思議に思っていると、「聞きたいことはないのか?」と、こちらの内心を見透かすかのようなメールが入っていた。吊り目は確かにここにいる、しかし俺の見えるところではない。そして智哉の事情を少なからず知っている・・。ゾクッと悪寒が走った。俺はその吊り目が偶然俺を見つけて、知っていることを好意で俺に教えてくれていると思っていたが、どうも違う。俺に近づいてきたというのが正しいかもしれない。「聞きたいことがあると言ったら?」と返信すると、「また、一晩費やすことになるな。」と半ば予想通りの答えが返ってきた。吊り目に力尽くで知っていることを吐かせるというのも一つの手だと思ったが、しかし智哉につながる糸を断ち切ってしまう恐れもある。それに向こう側からむしろ教えたがっているのだ。それも・・弘一の正直な部分がズッシリと重みを増していった。

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2022年03月17日

終わりの見えないデスマッチC(12)

吊り目の男が指定した場所は、この前と同じ、地下鉄の駅からもちょっと距離のある、薄汚れたラブホテルだった。この辺りはよくよく見れば、薄汚れた雑居ビルの中に「SASUKE」「和也」「superman」といった、いかにもこっち系のバーが点在している。ゲイ御用達のラブホテルなのだろう。指定された部屋に入ると、吊り目はバスローブになってブランデーを飲んでいた。
「この前、大分教えてもらったつもりだが、まだ言い足りないことでもあったか?」
「いや、別に新情報というものはない。この前言ったことと変わりはない。」
「じゃあ、俺と会ったところで何もないのではないか?」
と入口で立ったまま、訝しげに吊り目の男を見つめた。
「まあ、かけな。知りたいんだろ、智哉のことを。」
と、ブランデーの瓶を傾けつつ言った。
「あんた、一体何なんだ?智哉とどういう関係なんだ?」
その質問に答えることもなく、指でグラス一杯に入った大きな氷をかき混ぜながら、
「会いたいというだけだったら、何も難しい話ではない。」
と、顎でクイッと指図をした。健康そうには見えない褐色の顎の先には、使い古されたベッドがあった。ドクンっと、大きく心臓が高鳴るのが自分でも分かった。後ろ向きになり、いつもよりも幾分ゆっくり服を脱ぎ、カルバン・クラインのトランクスを脱ぎ去ると、そこには既に戦闘態勢に入った猛々しいモノが薄暗い天井を見上げていた。すでにその先の行為を予想し待ち焦がれているのか、粘り気の少ない透明な汁がトクトクと湧き出ていて、雨上がりの蜘蛛の糸にキラリと光る滴のようになって赤黒く汚れた絨毯の上へと垂れ下がっていった。最早弘一のカラダはまだ何をされていなくとも、その鉄アレイのように重たくぶら下がっている二つの重りがぎゅっと締め付けられているような感覚、智哉が目の前にいて渾身の力を込めて握っている、その感覚がカラダにしっかり染みついているのだ。その様子を吊り目は如何にも嫌らしい眼つきで見つめていた。そのモノがまだかまだかと苛ついているかのように不規則にビクついて、泉のように透明な汁を湧き出している様を。

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2022年03月28日

終わりの見えないデスマッチC(13)

「スゲエ、こんなスゲエの見たことねえぞ。たまんねえよ。」
「おい、本当だろうな、会わせるというのは。」
「会わせると言っていない。」
モノを握ったまま見上げて言った。
「会う方法を教えるだけで、会うか会わないかはお前さん次第だ。」
乱雑にモノを扱くと、ブランデー臭い口で頬張った。そして重量感溢れる二つの玉は徐々に徐々に二つの手の平で挟まれて、万力のようにゆっくりと力を込められて潰されていった。弘一の端正な顔は次第に苦痛で歪み、そして口を半開きにしたまま悲鳴に近い声を上げるのであった。
「ククク、いいぞいいぞ。お前の気持ち、分かるぞ。」
と、苦痛で歪む顔を見つめながら、さらに力を込めて二つの玉を潰しにかかった。
「かぁぁぁ。かはぁ。」
と、今度は優しく揉むように、玉を揉み出した。
「おいおい、俺も楽しませてくれよ。」
と、荒々しく弘一の腕を掴むと、股間へと持って行った。吊り目の男の股間はしっとり濡れていた。醜悪な笑顔を浮かべ、
「ここだ、ここに連絡を取ってみろ。」
と、二つに折られた紙切れを差し出した。
「会うにはそれ相応の対価が必要だ。後は自分で交渉しろ。」
と、睨み付けるように見つめる目と段々荒くなっていく鼻息に、何を求めているかを察した。

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2022年03月31日

終わりの見えないデスマッチC(14)

股間を押さえて、小さく低い呻き声を出しつつもんどり打っている姿を尻目に、薄汚れたホテルを出た。手帳をちぎったような紙切れには、携帯電話の番号が書いてあった。それ以外には何の情報もない。かけるのはいいけれど、かけたら何がどうなるのかも分からない。しかし、かけるしか選択肢はなさそうだ。かけてみた。しばらくして、男が電話口に出た。男は事情を知っているようで、日時を指定してきた。金のことは言われなかった。ただ、話した限りでは日本人ではなさそうだということと、会うに当たっての条件というのが、「会うまでは射精禁止」というのが何とも不気味であった。
智哉と会ったら何を話そうか、そもそも最初、何て挨拶すればいいのか、そんなことばかりを考えて過ごした。別れた理由、今、どこで何をしているのか、今までどうやって過ごしてきたのか、聞きたいことは山のようにあるし、しかし知ったら知ったでこっちが傷つくことも当然あるだろう。弘一はやはり智哉のことが好きで、今もずっとそれを引きずっていることは、いなくなってようやくハッキリした。その気持ちを伝えなければという思いがずっとあり、それが触られるのも嫌な吊り目野郎に陵辱されてさえもこれは智哉にされているんだと自分に言い聞かせて耐えてきたのだ。

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