終わりの見えないデスマッチⅥ

2017年06月17日

終わりの見えないデスマッチ(34)

智哉とは最近ご無沙汰だ。声をかけるけれど、高校を辞めてからバイトをしているが、そっちが忙しいんだとか。ジムのサンドバック相手に蹴りを打ち込む。ズバッと重い音が響き、脛にその振動が伝わるが、めり込み方がやはり人とは違うし、その蹴ったリアクションも分からない。無機質な相手に、規則的に打ち込んでいく。人がサンドバックのようにいつも同じところにいるわけではないし、ずっと不死身で倒れないなんてこともない。何をしても、ずっとそこに何もなかったかのように存在するだけだ。智哉は俺に飽きたのか、と思うと、不意に涙が頬を伝った。それを紛らすかのように、ほぼ垂直まで傾かせた腹筋台にぶら下がる。シャツがめくれて研ぎ澄まされたシックスパックが露わになった。周囲の目が弘一に注がれるが、何事もないかのように、また黙々とメニューをこなす。ただ、何か遣り甲斐のようなものを急に失った、喪失感に襲われていた。脳裏では、黒々として水平線のかなたまでずっと広がった底知れない海の情景を思い浮かべていた。果てしなく拡がり、とらえどころのなく光さえも届かないような深い闇のような海を。

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2017年06月18日

終わりの見えないデスマッチ(35)

憂鬱な気分でまた試合を迎えた。ただ、チラシを見て、そんな気分は吹き飛んだ。智哉、俺の相手が智哉だ。髪型がオールバックになっていて精悍な顔立ちになったが・・あれから5か月、久しぶりに見る智哉に全身に電気が走ったかのような刺激が走った。どこにいるのだろうか、控室を見てもその附近にも姿は見えない。しかし、リングの方を見ると、その前列でサングラスをかけた男と談笑している黒いTシャツを着た男が、まさしく智哉だった。相手は黒いスーツを着ていて、リクライニングされた椅子席、VIP席と呼ばれているエリアに座っている。試合が始まったが、智哉と黒スーツの男が何をしゃべっているのかが気になって、全然試合を見ていなかった。オッズは7.1対1で俺が勝つ予想になっている。デビュー戦だし、俺の方が実績があるし、当然といえば当然だ。タバコを吸うが、緊張でタバコを階下に落としてしまった。手が知らずして震えていた。対戦慣れしている相手であるし、場数を踏んでいるのに、これほど緊張するのはデビュー戦以来かもしれない、そう思うとお互いがデビュー戦のようなものか、しかし、智哉は終始何か話しかけていて、試合がこれからあるなんていう様子を感じさせなかった。気を落ち着かせようと外に出た。やはり港から見る海は今日も変わらず黒く、そして月明かりに照らされた波の尖端部だけが白く輝き揺らめいていた。

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2017年06月19日

終わりの見えないデスマッチ(36)

携帯でそろそろということを知らされ、ロッカールームで服を脱いだ。鏡を見ると、この前のマッチョ男と試合で受けた左腕の上腕二頭筋から肩にかけた箇所が青く内出血のように痣になっていた。そんな痛みも今まで感じなかったのに。そういえば、左腕を上に持ち上げる動作に最近力が入らない。肩から上に上げようとすると違和感がある。カラダのパーツが知らず知らずに悲鳴を上げている。考えてみれば、いろいろ負担をかけるようなことをしてきた。いろいろガタが来ているのかもしれない。智哉は一向に現れないと思っていたら、リング上に既にいた。VIP席から上がったようだ。吸い寄せられるように俺もそこへ向かった。コングが鳴る。こうしてギャラリーがいる前で広いリングで対戦するのはもちろん初めてだが、智哉の成長をずっと見守ってきたのは俺だ、俺が智哉の弱点を一番よく知っている。実践は俺の方がよっぽど積んでいる。ただ、俺は今までリング上で金的を喰らったことは殆どない。長いリーチと懐の深さを活かしていることと、俺のモノは撒餌のようなもので、金的狙いに来た奴はだいたい膝蹴りか右フックを喰らうことになる。自分の急所くらい守れないようではファイターとは言えない。ただ、智哉はそれをすり抜けて狙ってくる。俺に勝つには金的しかないだろうから、そこだけは注意していなければならない。
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2017年06月21日

終わりの見えないデスマッチ(37)

試合開始のコングがなると、智哉は軽快なステップでこっちに向かってきて、積極的に回し蹴りやフックを繰り出してくる。もちろん全然届かないが、距離を取るためでもあるし、デモストレーションの意味もあるのだろう。智哉の回し蹴りは初めて見たが、かなり速いし安定している。しかし、俺の間合いに踏み込まなければ当たらないことくらいは分かっているだろう。俺も応えて、蹴りを入れていく。ハイキックは踏み込まれる怖れが高いから、ミドルで様子を見る。ただ、どれも腕でブロックされている。右でフックを入れると避けずに踏み込んできた。やはり腕でガードする。ボクシングの技術のようだ。前蹴りで距離を取り、もう一度左フックを入れても、やはり腕でガード。カラダの軸も安定していて倒れない。智哉がずっと俺の垂れ下がるモノを見ていることが分かっている。金的のチャンスを虎視眈々と狙っているのだ。また意味もなく蹴りを放つ。俺から踏み込んで智哉の顔面を狙ったが、ガードされて、同時に智哉のストレートが俺の腹に当たる。中ぐらいの石が腹にめり込んだような感覚だ。距離を置いて蹴りを放ったが、若干バランスを崩したところを智哉の拳が俺の右脇腹にヒットする。そして、俺が渾身の力で顔を狙っていったところを避けられて、顎の辺りにアッパーを喰らい、天井のまばゆいばかりの灯りを見た後、フラッシュのように瞬いて、視界が揺らいだなと思うと足から崩れ落ちた。目眩でしばらく立てなかったが、その間に腕を抱えられてリングを引きずられていった。

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2017年06月22日

終わりの見えないデスマッチ(38)

しばらくして何とか目の焦点が合い始めてきた。リングの端で俺は寄りかかっていた。介抱されているのかと思ったが、違う、ロープで俺の腕が引っかけられているのだった。そして、目の前には智哉が立っていた。ダウンは取られていなかったようだ。智哉の顔がちょっと笑ったように見えた。途端、急に腹を抉るような痛みがして夢見心地から現実に引き戻された。鍛え抜かれているとはいえ、弛緩した腹への一撃は堪えた。そして、俺をサンドバックのように、智哉は腹に拳を打ち付ける。その一つ一つが俺の腹に楔のようにめり込み、波動状の衝撃が湿っぽく緩慢に、しかも休息する間もなく次々と襲ってくる。足が思うように動かないためにロープから腕を外せない。ロープにもたれかかり、一つ一つが全て力のこもったパンチを腹で受けた。俺も歯を食いしばってこらえるが、そろそろ限界だ。足が痙攣したかのようにガクガク小刻みに震え出した。すると、智哉は俺のその無防備に垂れ下がり揺れ動くバカでかいウインナーのようなモノを握り、乱雑に扱いて、若干大きめの声で言った。「おい、どうだ?弘さん、参ったといえば許すぜ。」

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2017年06月23日

終わりの見えないデスマッチ(39)

年下なのにぞんざいな口の利き方だ。ただ、声を出そうとしても腹に受けたダメージでなかなか口に出てこない。さすがに鋼のように鍛えた腹筋を以てしても、こんなにも一つ一つが重いパンチを喰らうのは堪えた。「お前、誰に口聞いてんだ?言う訳ないだろ?」息を整えて何とか振り絞るように言うと、「後悔するぞ。」智哉は、そう言い放ち、その後ろにふてぶてしく垂れ下がった2つの玉を無慈悲に握りしめた。「参ったと言え。」これから行われる行為が確実に効果的に行われる準備をするかのように、二つの玉を逃がさないよう、その小さな手の平では持て余し気味のそれの位置を確かめている。この先のことを考え、恐怖で呼吸がまた荒くなってきた。あまりにも救いようがなく絶望的な状況だが、智哉の目を見据えて言った。「いいから、やれよ。」智哉は、弘一の悲壮なる決意を聞くと、軽く微笑んだ。

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2017年06月24日

終わりの見えないデスマッチ(40)

智哉は真剣な眼差しで弘一の顔を見つめ、一呼吸おいてから、「いくぞ。」と念を押すように言い、何かに取り憑かれたかのように顔を紅潮させて目を見開いて歯を食いしばり、万力のように徐々に手に力を込めていった。その力は半端ではなかった。「ギヤァァァァァ!!!」俺は生まれて初めて、腹の奥底から雄叫びのような声を出した。意識的に出しているのではなく、本能から勝手に声が出ていた。智哉からは今までも急所への攻撃を喰らったことはあったが、こんなに長時間にわたり苛まれたことはなかった。「ガアァァァアア!!!」体中の血の気が引いて、全身に悪寒が走った。全身の筋肉という筋肉がその痛みに抗うかのように脈動していた。汗だけが、その痛みの元凶の方向へと伝っていった。全く逃げ場のない俺の玉は、防御力ゼロの状態で、ただ智哉の押しつぶさんばかりの握力に辛抱強く耐えるだけだった。ケツから生きながら鋭い刃で串刺しにされたかのような、猛烈な痛みが全身を稲妻のように襲った。「ヒヤァァァァ!!!」どれくらいの時が経ったか、天井を見て目を見開いて口を開け、ヨダレを垂らしたまま、もう声が出なくなっていた。体中が痙攣をおこし、汗は脂汗のような粘着質なものに変わり、噴出してカラダをコーティングした。大理石のような純白なカラダだったが、全身がうっすら紅潮し、反面先ほど執拗に責められた腹だけが特に、隕石が次から次へとぶつかってクレーターを作ったかのように、まだら模様の青緑色に変色していた。

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toppoi01 at 09:37|PermalinkComments(0)

2017年06月25日

終わりの見えないデスマッチ(41)

正気に徐々に戻っていくと、目の前に智哉の顔があった。とても冷静で乾いた目で俺を見つめていた。「これで最後だ、弘さん、参ったと言えよ。」腫れて一回りも二回りも大きくなった玉を優しく手で包み、揉み解し、まるでさっきの行為が嘘のように、打って変わっていたわっているかのような態度だった。そして、グッと近づいて、真剣な目で諭すように言った。「本当に最後だ、参ったと言え。」そんなに俺に勝ちたいのか。けれど、俺のプライドが許さなかった。「言わねえよ。」すると、智哉は俺をロープから荒々しく外し、そして俺の両足を掴んで、うぉぉぉと雄叫びをあげ、そして全体重をかけてかかとから股間めがけて振り下ろした。スローモーションでも見るかのようにゆっくりと金的へと振り下ろされる瞬間まで一コマ一コマが明確に見えた。それから、いきなりテレビのコンセントを抜いたかのように目の前が一瞬ピカッと強い光で煌めいた。リング上でカラダが、油の中に生きた蝦を投入したかのように、一瞬跳ね上がった。そして目の中で火花が飛び散り落ちた後、プツッと記憶が途切れた。

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toppoi01 at 07:12|PermalinkComments(0)

2017年06月26日

終わりの見えないデスマッチ(42)

いつの間にか10秒が経ち、俺は終わった。周囲は静まっていて、大の字になってリング上に俺一人が倒れていた。そっか、もう終わったのか。起き上がろうとすると、俺の腹の上には大量の卵の白身のようなゾル状の液体が出されていて、深く刻まれた腹筋をあみだくじのように分かれて伝い、まるで一つの大きな流れとなってリング上に滴り落ち、液溜まりを作っていた。俺の下腹部は、まだまだ責め苛まれた余韻を残して鈍痛を伴っていたが、試合に負けたとは思えないような猛々しい容貌をし、ビクついていた。まだいけるぞという、ファイティングポーズを取っているようにも見えた。まだまだ終われないな。俺は実質は勝ったんだ。手をついてゆっくり立ち上がる。智哉もリベンジを挑んでくるだろう。俺に新たな確固たる目標ができた瞬間だった。股からいかにも重そうにぶらさがったモノもそれに応えるかのように身震いし、まるで獲物を探しているかのように先から透明な液を垂らしていた。

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