終わりの見えないデスマッチⅣ

2017年06月05日

終わりの見えないデスマッチ(22)

次の試合が決まった。相手は当日にならないと分からない。これは事前に相手と接触を試みるのを防ぐためでもあり、怖気づいてドタキャンされても困ると言うこともあるからだが、当日急に出場する者や、逆に体調不良等で都合が悪くなる者もいるから、事前通知する意味があまりないのが実情であった。全ては賭けが成立するかにかかっていて、誰が誰とという試合を見に来ているわけではないのだから。ただ、今回は2人だと聞いている。賭けが成立するかどうかなので、例えば相手がいかにも弱弱しい感じで体力差があったら、そもそも賭けが成立しない。また、急に相手がキャンセルしたからといって、不戦勝とかいうシステムはない。もちろん、全く勝運がないとはいえないが、オッズが高ければイカサマを疑われるだろう。今日も高校帰りの智哉を呼んで、実践トレーニングをしようとしたが、今日はその気力が起きなかった。「どうしたんですか?」智哉に訝しげに尋ねられるまで、考え事をしていて放心状態だった。というのも、2,3ヶ月前になるか、やはり1対2の試合を観たときのことが思い出されるのだった。

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2017年06月06日

終わりの見えないデスマッチ(23)

1対2という試合はそのとき初めて見た。2人のうちの一人は見覚えがあった。背丈は普通で全体的にほっそりしていて、肩までかかる髪、細い眉に日焼けサロンで焼いたような不自然な肌の黒さ。ホストなんだろう。借金苦か金か女のトラブルか知らないが、ホストっぽい風情の参加者もそこそこいる。俺とも対戦したことがあったが、牽制のための回し蹴りが顔に当たってしまい、それっきりダウンだった。しかし、それからも何回か見ているが、その試合に興味がないからか、買ったか負けたかということまで覚えていない。2人を相手する方は、160cmそこそこ、髪も短くて田舎臭い容貌、ただカラダつきはゴツい。肩が盛り上がって見えるのも筋肉なのだろう。胸にも一面に薄い体毛が生えている、オス力が強そうな印象。まあ、2人のうちもう1人もホストなんだろう。やはり髪が長くてアバラ骨が遠目でも認識できるくらい細い。顔も凡庸で、喧嘩もできなければ勉強もできない、取り得がなさそうな薄幸そうな顔立ちである。まあ、こんなんだったら1人でも2人でもあまり大差ない印象を受けた。

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2017年06月07日

終わりの見えないデスマッチ(24)

始まった。両者が中央に向かう。一人で二人相手にするのは無理だから、一人をまず倒してからだろうな。やっぱほっそりした方からいくのかなと思ったが、向かい合っているのはこげ茶色の肌をした方だ。もう一人は90度離れて様子を窺っている、というより役に立つのかなっていう印象だ。仕掛けたのはこげ茶肌の方、顔を殴りに行って当たったのはいいけれど、長い髪を掴まれた。ボコボコにされるかなと思っていると、ガリガリに痩せた方が後ろに回り、羽交い絞めにした。振り解こうとしているが、痩せていて身長があり、首のところで手を組み合わせて外れないようにしているから難しいらしい。髪は掴んだままだったが、度重なる頭突きを喰らって意気消沈したのか、程なく手を離してしまった。

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2017年06月08日

終わりの見えないデスマッチ(25)

大振りでガンガン顔に右、左、右、左と連打していく。唇からか出血して胸と床は真っ赤な血の色が徐々についていき、顔も元の顔がどうだったか思い出せないほど、原形をとどめずどんどん赤黒く腫れていく。時間制限もないし、セコンドがいないからタオルも投げられない。倒れていないからタップもできないし、ダウンもできない。二人相手はこのシステム、想定外なのではないか?何か因縁でもあったとしか思えないこの光景、相当打ち疲れて動きも緩慢になってきた。相手も目が腫れて開かないのではないだろうか?顔は鬱血し、鼻よりも目や唇の方が突き出ている。これで最後と言わんばかりに金的に痛恨の蹴りを喰らわせた。もう化け物のように血まみれで腫れあがったその男は、とどめの金的で膝から崩れ落ち、床に跪いて、ゆっくりと頭から倒れこんだ。タップする気力もないのか、ダウンの10秒を以てその凄惨で一方的な試合は終わりを告げた。

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2017年06月09日

終わりの見えないデスマッチ(26)

というのも、実は弘一に身に覚えがあったからである。この前、来て早々に見知らぬ男が寄ってきた。40前後でサングラスを取らずに、そのよく日焼けした男は、「次の試合、いつもの倍払うから、負けてくれないか?」と言われたのだ。「俺、そういうのやってないんで。」と早々に断った。別に八百長が不健全だとかいうつもりは毛頭ない。金が目当てで転んだと思われたくないとかいうわけでもない。そんな妙なプライドだったらとっくに捨てている。単に、うまく負ける自信がないからだった。俺には八百長を悟られずに試合を進める自信がない。単にそれだけだ。男と話したのはそれっきりで、試合自身は素っ気無く終わった。距離を取るための前蹴りがダメージになり、自分からリングを降りて上がってこなかったのだった。それで2人と戦えと言う提示・・公開処刑だと思えば、あの3ヶ月前のことがつながる。あの男は、あれ以来試合で見ることはなかった。あれが来週の俺の姿か。ボロ雑巾のように誰にも顧みられない俺を見たら、智哉はどう思うだろうか。あんな惨めに負けたとしたら、俺に欲情しなくなるか。でも、そんなときこそ激しくして欲しい、そう思うと、弘一はがむしゃらに智哉のそれを頬張った。口の中で、若さの迸りから急速な膨張と硬直を見せ、そして急加速的怒張は最早口外に出ようと言う力が強くなり、智哉のまだ生え揃ったばかりの臍毛に接触するくらいに反り立ち、それでもなお力が余っているかのように振動していた。そして、いささか乱暴に弘一のその部分へと突き刺した。弘一がまさに求めていた、熱い猛々しいモノで突かれると、その陰惨な気分が快楽へと転換し、上方は深く濃厚なキスで同じくつながっていた。

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2017年06月10日

終わりの見えないデスマッチ(27)

当日を迎えた。渡されたチラシを見たが、この前の相手ではなかった。ただ、南米人のような顔立ちの浅黒くて細い男と出っ歯で奥目の普通体型の男が載っていた。奥目の方はかなり痩せぎすではあったが、病的な目をしていた。ヤクザ関係かな、直感でそう思った。今日は四戦組まれていて、弘一は最後の試合だった。一戦目が始まった。いつもの細くて若い者同士が、手を組み合わせて力比べをしている。そして、力の若干強い方が押し返す。押し返された方は、急に跳び蹴りを喰らわせた。相手の脇腹辺りを掠めたが、ダメージはあったようで、すぐに立ち上がって押し倒し、フォールを取る。プロレスと勘違いしているようだが、相手もそれは同じで、タップして、それが負けということになった。またびっこをひいた男がリングの掃除に入る。一旦外に出て、港から海を見つめた。明かりのない海は墨のように黒く輝き、そして底がないかのように深遠だった。それが吸引力でも持っているかのように弘一を誘った。見つめれば見つめるほど、その海が神秘的で何もかも包み込む、生きとし生けるものの母胎のように見え、携帯の呼び出し音が鳴らなければ、おそらくその海の奥底にある何かを探しに行くところであった。

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2017年06月11日

終わりの見えないデスマッチ(28)

ボディブロー01

「そろそろです。」事務的な電話だった。智哉には結局このことは言わなかった。試合前には会わないようにしているが、きっとどこかで見ているのだろう。ロッカーで着替え、リングに向かうと、既に相手はリングにいた。二人とも俺と同じくらいの長身だ。奥目の方の右目は義眼のようだし、南米人の顔立ちの男も前歯が3本くらい欠損していた。コングが鳴った。義眼の奴は早くも後ろに回りこんでいる。もう一方は隙っ歯を覗かせてニヤリと醜悪な笑みを浮かべると、何かペットボトルのキャップのようなものを咥えたようだった。こっちから仕掛けた。その隙っ歯に蹴りを入れようとしたが、これはかわされた。しかし、フェイントで回し蹴りを行った。後ろは見えていなかったが、ふくらはぎの辺りがヒットしたようで、倒れる音がした。そして向かい合う。仰け反って蹴りを放ったのが良かった。相手の顔面を掠ったが、その際に霧状のものを噴き出して、その青い器具が口から跳び出した。若干目が染みたところから、目潰しのための噴霧剤だったのかもしれない。予想外のことに戸惑い、額に深い皺を浮かべてこちらを見るが、既にもう一度、今度はしっかりと重心を保った蹴りを放っていて、防ぐ間もなく後頭部を直撃し、前から倒れていった。ダウンだ。よし、と思ったが、その間に義眼はカラダを起こしていて、すぐに俺を羽交い絞めにした。しかし、俺の腕が長いというのが計算外だったようだ。義眼の下にぶら下がるモノを探り当てるのは容易だった。握り緊めていくと義眼は両手で俺の手首を掴んだ。顎の辺りを目掛けて殴ると、そのまままた倒れた。そして、隙っ歯の方は幸いなことにダウンしたまま起き上がってこなかった。ダウンを取る時間が長く感じたが、10秒が経過し、懸念とは裏腹に勝利を得たのであった。

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