終わりの見えないデスマッチⅡ

2017年05月23日

終わりの見えないデスマッチ(11)

戻ると、帽子をかぶった、まだあどけなさを残した顔をした少年が、タオルとタバコを持って待っていた。「また出ましたね、玉潰し。」弘一は試合が終わってホッとしたのか、クスって笑った。「またって何だよ。俺が卑怯者みたいな言い方だな。」「だって、この前もだったじゃないですか。」3週間前、今回の相手よりも腕の太さとか比較にならないほどの筋肉量を誇る、口ひげを生やしたハゲた重量級バルクマッチョと戦った。腕を上げて、何とか掴みかかってこようとする。こんなデカイ相手に押さえ込まれでもしたら、とてもじゃないが逃げられないし、力任せに何されるか分かったものではない。バカ力で骨を折るくらい軽いものだろう。それに、打ち込んだところでこの筋肉の厚さでは効きそうにない。相手を目潰しでひるませ、顔を上向きにして避けたので目を直撃しなかったにせよ、顔を背けようとして集中力が削がれたところを、膝で思いっきり金的を狙って振り上げたのだった。功を奏し、見事に膝で玉を潰され、厳つい顔立ちのバルクマッチョは苦悶の表情を浮かべて両手で股間を押さえ、スローモーションでも見るかのようにゆっくりとへたり込み、正座を崩したような状態でずっと重低音のようにジワジワと襲い掛かってくる痛みをこらえていた。10カウント後もずっとこの姿勢のまま、口を開けて舌を出しつつ涎を垂らしながらただただ沈黙し、ずっとその痛みをこらえたままだった。
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2017年05月24日

終わりの見えないデスマッチ(12)

「あれはラッキーだったな。」「狙ってましたよね?最初から。」弘一はそう言ってニヤリとする智哉の頭を撫でた。智哉は弟分でもあり、弘一のスパーリング相手でもあった。いくら裸同士だからと言って、そう簡単に金的は狙えるものでもない。そして、こっちにも同じ弱点が残念ながらついている。弘一のモノは若干被っているとはいえ膨張時には軽く20cmくらいはあって、普段服を着ているときでさえとぐろを巻いたようなシルエットが相当目立つ。俺が狙うように、相手が狙ってくるのもお互い様だ。互いに急所を曝け出して戦っているのだから。かといって、守ってばかりでは勝てない。金的すらも反則ではないのだから、もうルールなんて全くないようなものである。それに、ルールって何だ?試合ではなくて、喧嘩だったらルールなんてそもそもない。試合でいくら強くたって、実際は金的打ったら反則負けだなんて過保護なルールで守られている勝者だ。金的打たれてのた打ち回って、結果反則勝ちしてそれが勝ったと言えるのか?自分の急所すら守れないようで、何が何に対して強いと言えるんだ?そんな疑問が常々あった。いや、誰だって普通に考えればそうだろう。それに、それを餌に勝機をつかむのも作戦のうちでもある。普段から持っているモノなのだから、日頃から急所は誰だっていつだって曝しているのだ、それも無防備に。それが奇跡的に、平和理に危険にさらされないという日常が、偶然にも継続しているだけのことである。不特定多数がルールを守ってくれるなんて保証は一つもないのだから。

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2017年05月25日

終わりの見えないデスマッチ(13)

まだ、あの色黒のセミロングはエッエッとえづきながら泣いている。鼻血と鼻水が入り混じったものを無様に垂れ流しながら。この光景、そういや4年前の地元の成人式でも似たようなものを見た。成人式が終わって、久々に開かれる高校の仲間との懇親会まで時間があったから、トイレのついでに裏にある小学校に行ってみた。校舎が増築工事の最中で、時折ドリルでコンクリを砕く音が聞こえた。「おい、オラァ」と工事とは違う方向から声が聞こえた。半分埋まったタイヤの向こうの築山からだ。「分かった、お前らのことを誤解していた。謝る。」鼻血を出して詫びを入れているのは高校のときの数学講師の定岡だ。まだ30そこそこの若い教師で、俺が3年の時にD高からH商に赴任してきたから、正直あまり馴染みがない。ただ、門で毎朝服装や髪をチェックしていたり、カバン検査をしたりと生活指導に力を入れていた印象がある。特に不良の取締りには厳しかった。パーマをかけてきた奴をバリカンで刈ったり、タバコを吸った奴を一列に並べて殴っているのを見たことがある。だから目をつけられたのだろう。「テメー、何目線なんだよ?」「反省してねーだろ。」成人式とは思えない派手な服装の男4人が取り囲んでいた。イケイケな教員だから、まだ教師気分で指導しようとしているんだろう。この街の成人式後の一大イベントを知らないようだ。金髪に染めたリーゼントをカッチリ決めた細身の奴が背後から羽交い絞めにする。「やっちまおうぜ、コイツ。」
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2017年05月26日

終わりの見えないデスマッチ(14)

「顔は止めとけ、サツにチクられても面倒だからよ。」さほど焼きを入れられたようには見えないが、殴られて若干唇が切れたらしく、定岡は口から血を垂らしながら言った。「お前ら、こんな卑怯な真似して恥ずかしくないのか?男だろ?」「うっせーな、テメーに言われたかねーんだよ。」また殴られる。「おい、コイツが男かどうか、試してみようぜ。」と、合法ドラッグの吸いすぎなのか、甲高い声を出してフラフラとしていた金髪が言う。ヤンキー共はそれで全てが分かったのか、何やらニヤニヤしていた。タバコを吸っていたヤンキーの一人が、定岡のウェットに手をかけると、いっぺんにずり下した。課外活動の帰りかどうか知らないが、そんな格好で現れるのがそもそも不用心だったといえる。全てを一気にずり下ろされて、毛むくじゃらなモノがボロンと露わになった。結構毛が濃く、剛毛に隠れて、正直そのモノはよく見えなかった。「アハハハ、ご開チーン。」「やべえ、定岡、笑える。」「超小さくね?」「何だよ、これ、おもしれー。」ヤンキー共は、意外と小さかったモノを見て、口々に囃しだした。「お前ら、止めろ。止めろ。」定岡はその恥ずかしさからか、さっきより声を抑え目にして言い放った。「おい、定岡よ、お前が男かどうか、試してやるよ。」

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2017年05月27日

終わりの見えないデスマッチ(15)

眉がほとんどなくて顎がしゃくれた男は、またさっきと同じことを言うと、同時にかがんで思いっきりその毛むくじゃらな股間へと正拳突きした。「グッ。」そして次に控えていたシンナーのせいで前歯が数本欠けた奴が、すぐにエナメルの白い靴を振り上げて股間を蹴り上げる。「あっつー。」定岡は甲高い声で痛みをこらえる。「止めて、ここだけは止めてくれ。お願いだ。」涙声でそう喚く。「何だよ、お前それでも男かよ。」「根性見せろや。」3発目もやはり股間を狙って蹴り上げられた。とっさに腰をクッと引いたが、逆にモロに入ったようだ。「あー、汚ねえ!!!」羽交い絞めをしていたリーゼントが定岡を振り解く。定岡は小便をジャバジャバと放出し出し、そして頭を地面につけて土下座して「ごめんなさい、ごめんなさい、許してください。」そう、泣きながら叫ぶように言った。さすがに見ていて、情けない思いがした。いくらなんでもこんなすぐに根を上げるのか。この程度の奴にいろいろ指導されていたのかと思うと、何やらこっちも悔しかった。「何だよ、コイツつまんねーわ。相手すんのがだせーよ。もう、行こうぜ。」ケツを出したまま、自分の撒いた小便の水溜りの上で、頭を濡らして土下座する定岡に愛想が尽きたのか、4人は揃って築山の向こうへと消えていった。見えなくなっても、なお定岡は泣き喚いて土下座を続けていた。
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