終わりの見えないデスマッチ

2017年05月12日

終わりの見えないデスマッチ(1)

神奈川県川崎市、港に通じる三車線の広い直線道路を走る。両サイドは工場に囲まれ、街路樹もまだらではあるが、外灯は必要以上に明るい。しかしすれ違う車はほとんどない。その突き当たりは港になっていて、左折すると簡素なエメラルドグリーン色のフェンスが現れる。その先に倉庫群が立ち並んでいる。ただ、傾きかけた立ち入り禁止の標識が出ていることからも分かるように、現在ではどれも使われていない。その廃倉庫の一角に、シャッターは錆びているけれどもほんのりと灯りが漏れている倉庫が見える。整理する人がいるわけでもないから車とバイクが無秩序に置かれており、その向こうの灯りの脇にある外階段を上がって2階のドアから入る。倉庫全体は薄暗く、奥の方は全然見えない。使用されなくなって相当経ったであろう大型で複雑な形をしたベルトコンベアーがうっすらと見える。


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2017年05月13日

終わりの見えないデスマッチ(2)

手前には、ここだけ新しく設置したのであろう大きな照明が吊り下がっている。そして、使い古して汚れの目立つリング。ロープはあるときから1本なくなったままだ。そして周囲は板で底上げされて、コロシアムのように階段状になっている。ただ、よくよくみるとこれもところどころ釘が出ていたり板が割れていたりと、このまま座ると服に傷がつくリスクがかなり高い。たいていはそこに座るんだけれど、オッズ計算やアナウンスするテーブルの右脇が椅子の用意された、いわゆるVIP席になっている。よくある、いや、噂ではあるといわれている地下闘技場に模したのだろうが、なかなかの安普請振りである。ただ、照明だけが新品だと言うことをアピールするが如く、白熱の光を放っている。

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2017年05月14日

終わりの見えないデスマッチ(3)

随分とギャラリーが増えてきた。好き者だな。8割が男で、女もちらほらだがいる。まあ、ギャラリーがいるおかげで金が入るのだから。まだ、皆自販機から飲み物を買ったり、談笑したり、また外でタバコを吸ったりと、ゆったりしているが、賭けを管轄するテーブルの周りだけは結構な人だかりができている。中間オッズが公表された。1対3.4か。俺が負けると思っている客がこんなにもいるとは。弘一は第三戦だ。第一戦は確か新人同士。チラシには、白黒のザラ紙にそれぞれのスペックと顔、上半身の2枚の写真、そしてここ最近の対戦成績が簡単に書かれている。俺の対戦相手のほうが俺より身長は低いけど体重もあるし、色黒でガッチリしていて、確かに肌が白くて胸の薄い俺と見た目で比べれば分からなくはない。俺が陸上経験ありで、対戦相手は元柔道部だそうだ。またオッズが出た。1対4.1?最初のオッズを見てびびったか?弱気な奴らだ。タマついてんのか?しかし、まあこれだけ来ていればファイトマネーもそうだが、勝てば・・何買おうか迷うな。この前はベッド買ったから、布団を一新するか・・
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2017年05月15日

終わりの見えないデスマッチ(4)

そうこうしていたら、更衣室から二人が出てきた。本来だったら別々の通路から出てくるのだろうが、ここはそんな配慮もなく、リングに上がるところまで一緒。セコンドとかレフリーさえいない。マイクで解説をする。腕に赤と青のバンドをそれぞれつけている。それだけだ。他に一糸まとわぬ姿。何も身に着けず、道具も使わない。何が反則と言うのも別にない、凶器を使わなければ何でもありだ。この2階からだとよく顔まで見えないが、両方ともバンドつけなければどっちがどっちだかよく分からない。どっちも普通体型で、赤い方が色黒で髪が長めで、青い方が細いかなって程度だ。どこから拾ってきたのか分からないが、立てかけてある黒板にはチョークで1対2.1と書いてある。どっちもデータがないから、見た目でしか賭けようがないもんな。コングが鳴った。色黒が殴り掛かるけれど、青い細身に避けられる。バランスを崩したけれどもう一度、大振りだよな。腰が引けてるし。細身の方が放った右が色黒の顔にヒット。弱いな。色黒がタックルし、細身が倒された。首を絞め出したけれど、細身が顔を連打したからすぐに放す。色黒の奴は結構な鼻血を出していて、手を鼻に当てているが、色白の細身が勢いづいて顔を狂ったように殴り始め、5,6発喰らったところで色黒は後退し、後ろ向きになって小走りに、溢れる血を手で抑えながらリングを降りた。逃げ出したわけだ。正味2分くらいか?
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2017年05月16日

終わりの見えないデスマッチ(5)

会場はざわつきだし、ブーイングも聞こえてきた。何人かがそいつを取り囲んでリングに戻そうとしている。賭けている奴らだろう。リングは2回まで降りていい、ただ、1分以内に戻らなければ負けになるというルール。もしくはダウンして10秒間立ち上がらないか、3回リングをタップすれば負け。セコンドがいるわけではないから、傷の手当ても水の補給もしてくれない。負けたものにあるのは野次と罵りだけ・・野次だけならかわいいものだが、大抵裏で焼きが入ったりするんだけどさ。どうも色黒は号泣しているらしい。こんなんじゃいくら説得したって試合にならないわ。新人と言っても、別に俺みたいに金に執着せず、ただ試合をしたいから出てきているわけではない。その筋の下っ端だったり、借金かさんだポン引きだったり、詐欺グループの金の受け取り役だったりと、訳アリの人たちが集まる。ま、ボクサー崩れとか相撲部屋を抜け出してきたデブとか、体重体格差すら関係なく千差万別だけど、裏組織とのつながりがある以上、金を賭ける人、試合をする人、ここにいる人全てが裏ルートから何らかのつながりがあって来ている人だった。片輪のじいさんがリングを掃除しているから、ケリがついたのだろう。勝者の青いバンドをつけたのが戻ってきた。眉毛細いし色白と言うよりも青白くて喧嘩が強そうにも見えないけど、あのパンチはボクシングでもちょっとはかじっていたのかもな。
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2017年05月17日

終わりの見えないデスマッチ(6)

メッキのはげかかった手すりに手をかけて、タバコを吸う。俺の対戦相手らしい奴が個室に入って行った。皮のジャンパーに金色の龍の刺繍が入っているのが遠目で見える。髪もチラシが白黒で分からなかったが金色だ。彼の対戦成績は三戦全勝。俺も1回だけ試合を見たけれど、さっきの色黒の奴とやり口は大差ない。ただ、力が強くてバランスが崩れず、当たれば一発で相手をダウンさせる破壊力を持っている。2回戦が始まった。随分と今度は背が低い同士。一応、賭けだからそういうバランスも配慮しているのだろう。オッズを見ても1対1.6だ。そういや、青いバンドの方が二回りくらいずんぐりした感じで、重心が安定してそうだ。手数はしかしスリムな赤バンドの方が多い。どっちも牽制しているというか様子見をしている感じだ。この試合はラウンドとかはない。どっちかが勝つまでずっと行われる。左右のパンチを繰り出すけれど、微妙にずんぐりの方に届かない。上手いこと足を使って避けているようでもあるし、スリム側のフェイントのようにも見える。スリムな方が蹴りを尻のあたりに喰らわせたが、それをずんぐりが掴んで、体を預けて引き倒した。スリムはリングに倒れて全身がバウンドする。後頭部を打ったんじゃないか?すかさずマウントを取り、両腕すら足で押さえ込まれて、防ぐ手立てがなく顔面に容赦なくパンチが打ち込まれる。コングが3回鳴った。よく見えなかったが、きっとタップでもしたのだろう。顔とか殴るのはいいけど、素手なんで、殴る方もダメージ喰らうと思うが。後先考えずだなんて素人だな。
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2017年05月18日

終わりの見えないデスマッチ(7)

タバコを吸い終わり、更衣室に入ろうとすると、俺の対戦相手は既に裸でジャンパーを羽織って座っていた。俺がロッカーで着替えていると、背後から「オイ。」と声がかかった。部屋にいるのは、一戦目の勝者を含めて3人だ。「オマエ、俺に勝つ気でいるのか?」俺は無視して無言で服を脱いでいると、背後から一方的にしゃべってくる。「避けると余計痛い思いするからよ、ちゃんとしろよ。意地を張るのもいいけどよ、俺、実際、弱いものいじめとか好きじゃねーんだ。チャッチャと終わらせれば悪いようにはしないからよ。」脅しているつもりなんだろうが、口数多いのは不安の裏返しだ。「俺、怒らせたら自分でも何しでかすか分かんねーからよ、そこんとこよく考えておけよ。」一戦目の敗者と二戦目の勝者も戻ってきた。色黒の奴はまだグズグズ何やら言いながら泣いている。勝者の方は既に着替え終わって携帯を弄っている。アナウンスが聞こえる。リングに上がれとマイクで言われたので、階段を下りていく。


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2017年05月19日

終わりの見えないデスマッチ(8)

裸足なので鉄独特の冷たさが伝わってくる。階段を下りた後、リングまでは一応赤いじゅうたんが敷かれている。これは、さすがに裸足だと木のささくれが刺さったりするからなのだろう。しかし薄汚れてところどころがめくりあがったり大きなシミがあったり、決して花道と言う感じではない。弘一はリングに上がると、対角線のコーナーに寄りかかり、時を待った。名前、スペック、そしてオッズを読み上げる。どよめきが起こる。まあ、高オッズだからな。弘一のカラダは透き通るような白さで、服を着ていればガリガリに痩せた真面目な青瓢箪のようだが、脱ぐとカラダから脂肪という脂肪を削ぎ落としたかのような、シャープで筋張ったカラダが浮き出てくる。183cmと長身で、手足も長く、鉄筋でできているかのような鋼鉄の肉体ではあるが、相手のレスラーのようなカラダを見ると、体格差は歴然としていた。写真よりも実物の方が胸の厚みがえげつない。胸囲は1mを超えているのではないか。そして、胸全体にうっすらと、そしてその厚い胸に刻まれた谷間に密集して生えている胸毛から臍、そしてその下へと延びていく腹毛が相手をさらに厳つく見せている。最終オッズは1対4.4だった。多数が俺の負けを願っている。周りの客も言ってみりゃ敵ばっかってことだ。
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2017年05月21日

終わりの見えないデスマッチ(9)

相手はアナウンスの間、ロクにこちらを見ることもなく、コーナー附近を落ち着かない様子でずっとうろついていた。コングが鳴る。相手はよく聞き取れない雄叫びを上げつつこっちへ向かってくる。その声の大きさに圧倒され、俺は中央に出る間もなく、一気にコーナーに追い詰められた。フェイントで相手の突進をとりあえずかわすが、右、左と相手はパンチを交互に打ち込んでくる。足のステップは前のめり気味に、目は俺の顔面をずっと見据えていたが、相手は顔面狙いと見せかけて俺の左脇腹に打ち込んできた。「ガッ。」相手は前につんのめって惰性で俺の左脇へとよろけた。俺は脇腹を腕でガードし、同時に相手の金的に蹴りを入れたからだ。そんなクリーンヒットと言うわけではなかったが、足の甲が相手の玉にめり込む感触があった。すぐさまカラダをひねって後方回し蹴りを喰らわすと、相手はそれを避ける余裕がなかったからか肩の辺りに入り、その勢いで仰向けに倒れた。俺は、相手の左足を持ち上げた。相手は関節を決められると思ったのか、すぐに起き上がろうとして俺の手を放そうと試みたが、俺のかかとは相手の無防備に曝け出した股間にめがけてふり下された。

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2017年05月22日

終わりの見えないデスマッチ(10)

「あっ、ああぁぁぁ!!!」俺のかかとは今回はしっかりと急所を直撃した。相手は仰向けのまま股間を両腕で押さえて足をばたつかせ、七転八倒している。さっきまでの威勢はどこに消えたのだろうか。喉の奥から絞り出すような声がまだ聞こえている。大の大人が、人前で急所を押さえて苦悶する姿ほどみっともないことはない。まして、見た目からして屈強な男が、たかが股間への一撃でこのような醜態を晒すのは滑稽で無様である。今まで何をそこまで鍛え上げてきたのかと問わずにはいられないような醜態だ。相手は、片手で股間を押さえつつ、もう一方の腕を振り上げた。タップしようとしているのか、させるか。二つ目のタップする手を捕え、俺のもう一方の拳はアッパーを喰らわすかのように、片手では庇いきれていなかった玉を正確にえぐった。「ひゃぁぁぁ。」気管支から息が抜けたかのような声が聞こえ、そして、「あが、あがっ」と痙攣しながら息も絶え絶えに断末魔をあげて、エビのように背を丸くしている。俺が股間を守っている両手を無理矢理剥ぎ取ろうとすると、「無理、無理、やめてくれぇ。」と哀願され、かばうように手で股間を守っている。「避けると余計痛い思いをするからさ。」そんな願いは聞くわけもなく、先ほど言われた言葉を小声でつぶやくように反芻して言うと、手をはがして現れた相手の玉を細長い指でしっかりと握って包み込み、指の先を立てて爪をめり込ませて一気に力を加える。「ギィヤァァァァ!!!」と切り裂くような悲鳴を上げ、もう自分の玉を守ることなくリングに仰け反った。大きな悲鳴の向こうでコングが三回鳴った。タップしたのか。これからだったのにな、と汗ばんで一段と白く輝いているカラダを反転させて、リングを降りて行った。相手はリングの中央で、股間をずっと握りしめたまま蠢いていた。弘一とは違った汗で、黒い肌が照らされて輝いていた。対角線上のコーナーには無傷のジャンパーがかけられたままだった。
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