ゲイなんすっけど、小説書いてみました。

ゲイ系の小説を書いてみました。素人が書く小説ですし、発表するほどのものでもないのですが。エロい内容も若干含まれていますので、気にされる方はお勧めしません。コメント残してくれるとうれしいです。

ハサミムシ

ハサミムシ(1)

「克利、克利!」
ウッセー。シカト。
「克利!いるんでしょ?今日、バイトは?」
「ウルセーな。休みだよ。」
「嘘でしょ?どうせ辞めたんでしょ?」
「・・・。」
「お母さんね、心配だから言ってるの。もう何回目なの?あのね、お父さんだって退職して、うちにあなたを養うお金なんてないんだから、真面目に稼いでくれないと困るじゃないの。あなた、もう32になったのよ。」
また、いつもの小言だ。聞かなくても言いたいことは分かっているし、こっちが聞いていようが聞いていまいが、どうせ最後まで話すんだろ?
高校受験にいくらかかって、予備校にいくら、大学にいくら、会計士の予備校にいくら、まあこっちにしてみりゃだから何って感じだが。返せって?投資だろ、それ。勝手に投資しておいて、損したから返せって?バカな。
「同級生の小永井君、今度帝京大学の講師ですって。ゆくゆくは教授かしら。お母さんが言ってたわよ。うちもたまにはそんなことを言わせてちょうだいよ。」
講師くらい誰でもなれるだろ。マリオカートやりながら、克利はつぶやいた。大体、俺だって会計士に受かってればこんな生活してないけどね。会計士になったら、一流会社の顧問にでもなって、適当に言われた通りの監査をしてさ、固定給をもらって、まあ安泰な生活だよ。面倒なことは会計士補にやらせてさ、俺は最後に判だけ押せばいいんだから。
「あんたさぁ、これからどうしていくの?アルバイトの給料なんてたかが知れているじゃない。小永井君、あんた馬鹿にしていたけれど、抜かれちゃったじゃないの。悔しくないの?もう会計士なんていいから、ちょっとはまともな職について・・ちょっとどこ行くの、克利、克利!」
ウッセー、マジで。耳にタコ。ミニにタコ。自分の腹をポンポンと叩く。最近は相撲取りのように、腹をたたくのが癖になった。体重は人並みだけれど、急に腹がポコッと出てきた。スリムだったんだけど、というか、腹を除けば今もスリム体型なんだけどな。まあ、いいや。背脂鬼盛ラーメンでも喰ってから行くか。
腹ごなしをして、食欲を満たした後は性欲だな。木曜日は中野のヤリ部屋でデカマラデーのイベントがある。克利はモノには自信がある。ウケだから使いはしないのだが。デカマラパスポートを提示すると700円割引になる。今日も勝負競パンを装着して、中央線に乗り込んだ。
電車は乗ったけれど、しばらく動かなかった。
「人身事故の影響で、上下線とも当面運転を見合わせております。地下鉄東西線、新宿線、京王線で振替輸送をしておりますので・・」
何やってんだよ、克利はホームに唾を吐き、迂回して中野に向かった。
ヤリ部屋は、居酒屋が立ち並ぶ通りを突っ切って、角の薄汚れたビルを上がった4階にあった。
デカマラパスポートを提示して、1000円札を出した。
「お客様、申し訳ありませんが、当店は短髪イカニモ系をコンセプトにしてまして、」
「はあ、知ってますが、これ。」
パスポートを受付に向かって見せる。
「お客様のような長髪は、ちょっとこの店のコンセプトに合いませんので、申し訳ありませんが。」
克利は激昂して、どもりつつ言った。
「オオオ、オマエさ、こここ、このパスポートさ、誰、だ、誰が発行したんだよ。ん?」
「申し訳ございません。」
「いや、入れるんだよ。オマエ、俺はさ、入る権利があるんだよ。バカだろ。大学出たのか?」
「お客様、」
「入れろよ、じゃなければ、オマエみたいなバカはいいから責任者呼んで来いよ。オマエが判断する話じゃないんだよ。」
デカマラパスポートには、所持者はデカマラデーに限り割引になるとしか書いていなかった。また、有効期限の半年もとっくに経過していた。
他の客もいつの間にか入ってきたが、受付の手前で携帯をいじっている。
「おい、いいからカギ渡せよ。バカと話してられねーんだよ。権利を行使します。全宇宙で共通なんです。カギ渡さないということは、どこのロッカーにも入れて構わない、そう解釈していいですか?」
受付から若い男が出てきた。克利の首元を掴むと、強い力で入口の方まで連れて行った。
「すみません、不当な行為です。誰か、警察呼んでもらえますか?ああ、痛い痛い、刑法上の罪になりますよ?いいんですか?バカだからそんなことも分からないんですか?」
ドアから突き飛ばすように出され、一気に閉められた。
「つぶれろ、バーカ、死ね。」
そう、ドアの向こうに向かって大声で騒ぎ、階段をまたブツブツ言いながら下りて行った。
この様子は動画サイトに投稿され、ゲイの間ではそこそこの有名人へと成り上がった。もちろん本人はそんなことは知る由もないことで、2ちゃんねるにそこのヤリ部屋の悪口をネチネチと書き込むのが当面の日課となった。



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ハサミムシ(2)

携帯が鳴る。予定より5分くらい早い。
「今、駅に着きました。」
「では、東口に降りてもらえますか?」
駅に向かう。急いで行っても自転車で5分くらいかかる。着いてから、電話を入れる。
「マックの前に立っています。」
見ると、皮ジャンをまとった、何というかちょっと浮いた感じで立ち尽くしている男がいて、左手に赤いガラケーを持っている。
近づいていって携帯を鳴らすと、そいつが出た。ああ、やっぱりコイツかと。向こうも一瞬驚いた感じだった。
個人でやってるマッサージ、まあウリ専だ。顔はモザイクがかけられていたんで、こっちは初めて見る。向こうは俺のことを全然知らないわけだから、まあ想像と全然違うことだってよくあることだ。
それにしてもな、まあ90分1万円と安かったってのもあるが、これ、本当に20代か?って感じの顔なんだけど。縦ジワがすげえし、坊主って言っていたけどさ、半分禿げている感じだし。まあ、いいや。カラダ目当てなんだし。マッサージと言いつつ、抜きありマッサージなんておかしいだろ。どんだけ淫乱なんだろって感じ。
向こうも全然しゃべんねーな。さすが個人営業、接客なってねーよ。何か、皮ジャン洗ってんのかよって感じだし、ジーパンもヨレヨレだし。なんかな、1万でも高えわ。
家に着く。離れの6畳間。克利の勉強部屋として使っているのが建前なので、本宅とは渡り廊下でつながっているけれども、トイレすらない。テレビもないからゲームもできない。
まあ、本気で会計士になろうとしていたのは大学にいた期間を含めても3年くらいか?ま、2年留年している時点で親も分からないもんかね?結局大学も辞めて、会計士関係の本だって今じゃ漫画に埋もれて埃まみれ出し。そういや、ずっとあいつは玄関で立ち尽くしていた。入れよ、親に見つかるとまたややこしいから。
「あの、ここで、ですか?」
「そうっすけど。」
「スペースとか、結構厳しい感じしますが。」
「ああ、この布団のとこでいいんで。」
スペースではなく、黒く汚れたこの煎餅布団でやるのかっていうことだ。
「シャワー、大丈夫ですか?」
「ああ、俺、そういうの平気だから。じゃ、始めてよ。」
「では、今から90分コースということで。では、ちょっとご用意をさせていただきます。」
そんな説明はうわの空で、克利はそそくさと服を脱ぎ、ブリーフ1枚になった。服は机の下に押し込んで。
「では、まず仰向けになってください。アロマオイルを塗っていきます。このオイルは肌質を・・。」
「ちょいちょい、ちょい待った、何してんの?オイルはまずいだろ。」
「お客様、アロマオイルコースでは・・?」
「いやいや、察しろよ。それにさ、何、オマエ、脱がないの?」
「脱いだ方がよろしいですか?」
「当たり前だろ。おかしいだろ、俺が脱いでてオマエが着たままなんてよ。」
克利の両足にまたいだ形で座りながら、渋々と脱ぎ、上半身裸になった。写真で見るよりも幾分毛深く、ピンク色の乳首が胸毛からピーンと突き出していた。
そして、肩から腕にかけて、揉みほぐし出した。
「ああ、そんなのいいから、乳首いじって。」
「全身マッサージは順番がありますので。」
「エロい乳首。感じるんだろ、これ。」
克利はマッサージ師の乳首を抓った。
「すみません、止めてください。」
「何言ってんだよ、この売女が。止めろ止めろって、本当は欲しがってるんだろ?すげえ淫乱な乳首。舐めてやろうか?」
マッサージ師は立ち上がった。
「お代はいただきませんので。自分、こういう商売ではありませんから。」
「おい、どこ行くんだ、おい。オマエは買われたんだぞ?俺の玩具だ。自分の立場、分かってないだろ。」
「こういうことはしない方がいいと思います。」
皮ジャンを着て、商売道具の手提げかばんを持ち、ドアを開けた。
「バッカじゃねーの?契約違反だろ。違約金払えよ、おい、売女、おい。」
「何だよアイツ。ブッサイクのくせに調子こきやがってよ。身の程を知れってんだよ。」
克利はブツブツ文句を言い始めた。そして、パソコンを開き、無料動画サイトからお気に入りの動画を再生しだした。編集済みの動画で、腹筋のきれいに割れたあどけなさの残る少年が、正常位で色黒のゴーグルをはめた中年に、横からの固定されたカメラとヤリながらハメ撮りされている、2パターンが同時に映し出された映像が画面いっぱいに映し出された。
「へ、売女。オマエのケツマンガバガバなんだよ。しょうもない。いくらもらって出てんだ、おい、オマエだよ、オマエ。」
克利は、自分の乳首をつまみながら、自分のモノを引っ張り出し、思いっきりガシガシとしごいていた。動画サイトに負けないくらいの声を出して。
マッサージ師が出て行った後のドアは半開きで、隣のおばさんがずっと垣根から覗いて、その醜悪な光景を見ていたことには克利は全く気付いていなかった。隣のおばさんはあまりのことに絶句して、しばらくそこから動けなかった。
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ハサミムシ(3)

木曜日はリサイクルの日。ゴミ捨て場に新聞紙の束、発砲トレイ、酒瓶や空き缶が一か所にまとめて捨てられている。
克利は家の側にある収集ボックスから、アルミ缶を取り出し、足でそれを踏み潰した。縦にしてもなかなか潰れないので、まず横に転がして、踏み潰してから端を折り曲げてコンパクトにする。それを何個か見繕って繰り返して、自転車の前かごに入れる。もはや木曜日の習慣ともなっている。
夜中の2時、自転車で家を出る。街灯で照らされているので2時と言ってもそんなに暗くもない。信号機は黄色のまま点滅している。周辺は克利の家の東側が新興住宅街なので、道路もきれいに一直線に舗装されて、歩道も完備されている。終電も終わり、人通りはほとんどない。今度は左に曲がる。西側は古い住宅地で、細い道も多く、道が入り組んでいる。
すると、ボロボロの大きなずた袋を引きずって、灰色の作業着だか何だか原形をとどめていない服を着た、髪の長いホームレスが半ば左足を引きずりながら歩いているのを見つけた。克利は見つけるや否や全力で自転車をこぎ出し、追い抜きざまにさっき踏み潰したアルミ缶を、ホームレスめがけて全部投げつけた。ホームレスは意味不明な言葉を喚き散らした。克利は「ゴミ!社会のゴミ!」と、シーンと静まり返った住宅街の中で怒鳴った。
性格に言うと、ムシャクシャしたときのストレス発散のためであって、習慣ではない。ただ、ムシャクシャすることが水曜日の夜にあるから、半ば習慣めいてしまったのだ。

水曜日は、行きつけのヤリ部屋が安い日だった。いや、25歳以下が500円であって、克利は32歳なので、7歳もオーバーしているのであるが、偽造した大学院の学生証を呈示して、いつも入っているのだった。この日は当然のことながら、客層は若め。克利はこの曜日はわざわざバイトの時間を早めに切り上げて、16時には既にヤリ部屋でスタンバイしているのであった。
水曜日はアンダーウェアの日だが、克利はいつもSPEEDの、赤くて中央に白い斜線の入ったデザインの競パンを履いてきていた。ガリガリの洗濯板のような胸にポッコリとした下腹、競パンは選択肢としてはないはずだが、克利にとってはお気に入りだった。
克利のタイプは、ずばり競パンが似合う奴。水泳体型でビキニ跡があればなおいい。できれば競パン履いた者同士で競パンプレイができればベスト。ロッカースペースとハッテンスペースとの間には喫煙兼休憩スペースがあって、ロッカースペースとは薄いのれんのような布きれで仕切られているのであるが、ロッカーの開ける音がするたびに、のれんを除けて品定めをしていた。
ハッテンスペースは暗くて顔とかチェックできないし。17時には克利を含めて4人。ただ、どいつもこいつも普通体型のオッサンばかりで、克利の目に叶う者はいなかった。ロッカーの開く音がしたので例によって除くと、横顔をちらっと見ただけだが爽やか系のイケメン。携帯を入れるフリをしてロッカールームに行き、明るいところでじっくり堪能。アンダーウェアになってシャワーを浴びに行くまで、しっかりと舐め回すように見た。
で、シャワーから出た直後が要チェック!スッポンポンなわけだから、大事な場所をじっくり吟味。黄色い競パン履いた!これ、俺とヤリたいってサインじゃん。早速中でスタンバイ。中では中肉中背どもがアホ面して立ってやがる。帰れ、アホ。邪魔なだけだ。
来た。すれ違いざま、ケツをペロンって触る。いい弾力。俺の股間もムクムクしてきたぜ。克利は真っ黒く変色して突起した乳首を平手でこする。興奮したときのいつもの癖だ。競パンプレイするんだから、ガラス張りの部屋を押さえておくか。部屋に半身入れた状態で陣取る。5分くらいそうしていたが、ちっとも来ないので、しびれを切らしてロッカールームに戻る。何、帰る用意してんじゃん。
ジーンズを履こうとしていたので、その隙に競パンをずり下ろそうとしたが止められた。脇から出してやれと思って手を入れようとすると拒まれた。
「何、何だよ、オマエは。」
俺の口テク使えばこっちもんだと思って、競パンの膨らみに口を持っていく。ベロを出して舐めようとした。
「お客様、お客様。」
受付からちょっと太めの店員が出てきた。
「迷惑行為は禁止されていますので。」
その間にすばやくジーンズと履いて白いシャツを羽織り、バッグを手にして逃げるように出ていった。
「はぁ?ハッテン場でハッテン行為して何が悪いの?」
「迷惑行為ですので。」
「セックスが迷惑なわけねーじゃん。ここってそういうとこだろ。教育受けたか?頭おかしいんじゃねーの、オマエ。」
「店内のルールに従えないのでしたら、退場してください。」
「オマエだろ、それ。病気か?病気だよ、オマエ。病院行けよ。いい病院あるよ。」
「退場してください。」
太めの店員は、顔を紅潮させて、ゆっくりと大きめの声を出した。
「当たり前だろ。誰が来るか、こんな店。臭えしよ、掃除してないだろ。勉強しろ。死ね。」
悪態をつきながら、克利はこの店を出た。
「バカが、ふざけんじゃねーよ。」
エレベーターの中でも帰り道も、ずっと悪態をつき続けていた。すれ違う人は皆怪訝な顔をして見つめ、誰一人として意味を理解する人はいなかった。電車の中でも、駅を降りても、家に帰ってからも。
もちろん、そのことは2ちゃんねるのハッテン掲示板に書き込んだが、早速袋叩き状態になり、パソコンに対してさえも悪態をついていた。

ホームレスのオヤジはまだ喚いていた。ゴミにゴミをぶつけるのは痛快だな。ま、俺のぶつけたのは有用なゴミで、ぶつけられたほうが無用のゴミだがな。
向こうから自転車が来た。警官か。通り過ぎようとしたら、遮られて止められた。
「お急ぎのところすみません、ちょっとよろしいですか?」
「悪いが、急いでいるんで。」
「自転車の確認をさせてください。」
「俺のだよ。防犯登録してあるじゃん。」
「身分証明書の提示をお願いいたします。」
「持ってないし。」
「これからどちらへ?」
「家だよ、決まってるだろ?」
「お仕事の帰りですか?」
警官が集まってきた。逃げるか。しかし、自転車のハンドルが掴まれている。
「すみませんが、こっちは急いでいるんで。」
「うん、すぐ済むから。防犯登録の確認はできましたんで。お仕事はどういったことをされてます?」
「おい、頭悪いだろ、オマエ、学校出ているか?急いでいるって市民が言っているだろ。拘束する権利があるんですか?何条の何項に書いてありますか?」
「うんうん、で、お名前から教えてもらえますか?」
「警官は国家の犬ー、犬に言葉は通じなーい、よってしゃべることなーし、帰れバカ。最も頭悪いオマエは、まず帰れ。」
警官に悪態をずっとついていた。
「オマエら警官の仕事はゴミ掃除だ、社会のゴミを掃除することだ。犬が。俺は法によって守られているんだ。弁護士呼べよ。オマエはバカだから話にならない。」
ゴミ、今掃除してんだけどな。応援で駆け付けた警官は、心の中でそう呟いた。

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ハサミムシ(4)

コンビニでレジを打つ。水道料金のシートに赤いスタンプを押して、お釣りと一緒に返す。そして、さっき入荷した雑誌の梱包を解いて、並べ始める。
「おい、ハサミムシ、ハサミムシじゃんか、オマエ。久しぶりじゃね?」
「あ、マジで!ハサミムシだ、ハサミムシだ。ウケる。」
ハサミムシ・・中学、高校を通じて俺につけられたあだ名。クラスの男子だけでなく女子も、そして顧問の先生もそう呼んでいた。
簗場とメスゴリラだ。久しぶりに遭った。成人式以来か?簗場は昔から馬鹿面をしていたが、さらに太って馬鹿度合いが増したな。メスゴリラもすげえ迫力。簗場より体重あるんじゃないか?
「何、コンビニで働いてんだ。超ウケる。」
「ハサミムシ、ちょっと禿げたんじゃね?マジか。禿げてんじゃん、コイツ。」
俺はシカトぶっこいていた。
「おい、テメー、何シカトしてんだよ。また、遊ぶか?」
「いえ、いえシカトなんてしてないです。しなければいけない仕事が溜まっているんです。」
遊ぶっていうのは隠語で、要はイジメだ。簗場の顔を見ると、放課後の鬼ごっこを思い出す。
鬼は簗場だけではなく、いつも5,6人いた。逃げるのは俺の他にもいたが、大体、俺は逃げ切ることができなくて、真っ先に捕まった。
捕まると、鬼の言うことを1つ聞かなければならない。プロレス技や柔道の技の実験台だったり、下半身だけ全部脱がされたり、眉毛を半分剃られたり、髪の毛燃やされたり、石食わされたり、まあいろいろだ。ただ、誰が鬼であろうと、それらの大半は簗場の指示によるものだった。
克利はそんなことがいろいろあり過ぎて忘れているのだろうが、ハサミムシの由来は、プールと校舎の間で鬼ごっこをして捕まった時に、壁面と地面との境に数匹のハサミムシがいて、それを喰わされたことからだった。
最初は「便所虫」と言われていたのだけれど、昆虫博士と呼ばれていた秀才からの指摘を受けて、それ以来ハサミムシと呼ばれるようになったのだ。
「久しぶりの再会なんだしよ、なんか奢れよ。」
「え、マジで?奢ってくれんの?」
何言ってんだよ、デブメスゴリラ。
「じゃあ、アッタシ、スムージー飲みたいかも。」
「俺、セブンスターくれや。」
ベトナムから来た留学生のバイトが、レジを打っていいものやら戸惑っている。
「ちっげーよ、2個ずつ。そうそう。払いはアイツだから。」
「バイビー、ハサミムシ。ちゃんと働けよ!」
簗場たちは意外とあっさり帰って行った。克利が簗場たちが車に乗り込むところを見つめている間、ベトナム人留学生は「ハサミムシ」という単語の意味を携帯で調べていた。
「今の、誰にも言うなよ。言ったらクビだかんな。お前なんかすぐクビだ。」
ベトナム人留学生にさっきとは打って変わって威勢よく言い放った。
やられたらやり返す、それが克利の信条だ。店内からセメダインと虫眼鏡を取り出し、コンビニを出て駐車場の脇にある緑色をしたフェンスの前にしゃがみこんだ。蟻の巣を見つけると、そこにおもむろにセメダインを流し込んだ。働きアリの数匹は飲み込まれたが、あとは散り散りに散らばって行った。それを虫眼鏡で追いかけた。太陽光を集中させて、一匹一匹を焼き殺していった。
「逆らうとこうなるのだ。二度と来るな。お前たちの来るところではなーい、立ち去るがよい。」
にやけながら、虫眼鏡で次のターゲットを追いかけていた。
その姿を店長の息子がすぐ側で立って見ていた。ベトナム人留学生からたどたどしくも詳細な報告を、既に聞いていた。しばらくはその行為を見つめていたが、注意せずに放っておいた。
満足げにコンビニに戻ると、事務室に呼ばれ、そこで店長から共限りで解雇ということとスムージー等の未払金の支払について、淡々と説明を受けた。

帰りに蟻の巣を見たら、セメダインは土に吸収されて跡形もなくなり、すぐ側に新たな穴ができていた。それを足で踏み潰し、「カスが!」と大声を出し、駅に向かって走った。
まっしぐらに家に戻り、自分の部屋にこもった。早速、DVDを鑑賞しようと思ったが、いつも置いてあるはずの棚にそれがない。段ボールごとなくなっている。バディもディルドも、すっかりなくなっている。
隣のおばさんが、克利のオナニーを見た翌日、克利の母親に、それとなく言ったのだった。
聞いたとき、母親はもう赤面して声も出なかった。周囲にはいい大学を出て、将来は会計士になるんだと良いことばかり言っていたので、男の裸映像見ながら全裸で騒いでいたなんて醜態を聞かされて・・
部屋に入って隠してあったDVDや雑誌、グッズを全て運びだし、母屋に運び込んだのだ。DVDにつぎ込んだ額は100万円ではきかない。自分の部屋を一生懸命探し、これはもう両親の仕業に違いないことを確信した。
鬼神のような形相で、髪を振り乱し、母屋に入るなり、
「おい、おい、DVDどうした、おい、おい。」
「知りません。」
洗濯物を畳みながら、母親は答えたが、これは明らかに知っている口ぶりであった。
「おい、知ってるな、知ってるな?おい、いくらしてると思ってるんだ、DVD。どこやった、言え、言え。」
「ちょっと、克利、やめなさい、克利!」
克利は、家の中を引っ掻き回すように一心不乱に探し回った。しかし、全然見つかりはしなかった。
半狂乱になり、ウォーと叫びながら探し回った。
隣のおばさんは、ベランダから一部始終を聞いていた。一言も聞き漏らさぬように、細心の注意を払って聞き耳を立てていた。
獣が殺される間際の断末魔のような、号泣が聞こえてきた。間もなく嗚咽に変わった。隣のおばさんは、探し物だったらそのビニール袋の中じゃないかいって、隣の家との境に捨てられた不審物を眺めつつ、未だ断続的に聞こえてくる嗚咽を聞いていた。


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ハサミムシ(5)

克利の日課は2ちゃんねるチェック。今、夢中なのは照信っていうウリ専を叩くこと。以前絡んだマッサージ師が、登録先のマッサージ店とは別の、個人名で照信という名でホームページを作成しているのを発見。
アイツ、マッサージ専門と口では言いつつ、カッチリウリしてんじゃん。ハゲてるくせに。2ちゃんねるに「照信にぞっこんLOVE vol.1」って板を新規に作って、専ら人格批判を繰り広げる。1回しか会ったことないくせに、想像であること、いやないことばっかりの悪口を書き連ねる。
「照信、成人式のときには既に禿げていた。禿げは遺伝でオヤジもジジイも禿げ。」
「照信が金に汚いことはこの業界では超有名。ストップウォッチで細かく時間を図ってちょっとでも出たら延長料金徴収。」
「マッサージ技術がないから、10分くらいですぐに性感マッサージに移行。希望しなくて移行したくせにカッチリ料金はいただき。守銭奴。」
「照信の家は近所でも評判のゴミ屋敷。猫が12匹で避妊手術もせずに毎日やりまくり。照信も獣姦は当然経験済み。ちなみに猫に対しては両刀使い。」
「照信、照という字の由来は先祖代々受け継がれた禿げ遺伝子から。お天道様からソーラーパワーを得るために禿げた選び抜かれたスーパー禿げ。」
「マッサージするときの液は、もちろん自分の股間から流れ出たカウパー液。カウパー液はとどめなくいつでも流れ出ていて照信のパンツはいつもグチョグチョ。」
「高校では照信は禿げが移ると嫌われて、女子から鼻つまみ者にされていた。皮膚病的禿げだが、遺伝」
「河童の血が入っているという噂。水を頭からぶっかけると喜ぶらしい。」
同じIDで丸一日延々と批判を書き込み、レスを上げることに執念を燃やす。ただ、照信の知名度が当たり前だけれど全然ないので、盛り上がっているのは克利だけだった。
執念深さは筋金入りの克利は、twitterからとってきた照信の写真使ってイケメンゲイランキングに勝手に投稿した。まあ、twitterからなかなかの不細工な写真を持ち込んだからか、コメントに
「イケメンの意味が分かっているのか、不細工!。」
「あの、ふざけないでほしいんですが。こういう人がいると迷惑なんです。」
「日本語読めるのか?ここはイケメンであることが条件なんですよ。わかります?早急に削除をお願いします。」
と、批判が寄せられ、2ちゃんねるにも同じような批判コメントが続々と載せられた。
いつしか2ちゃんねるパワーで上位にランクイン。
とうとう擁護する奴も登場し、輝信板は盛り上がっていた。今日は擁護派のコッテリちゃんとバトル。
「照信さんを誹謗中傷するのはどうかと思います。事実ではないし。個人的な怨恨ですか?」
「出たな、コッテリ。擁護する奴は禿げ。」
「あなたも禿げているじゃないですか。人のこと言えます?」
「バーカ、コッテリふざけんな、禿げてんのはオマエだ、ハーゲ。」
「でも、腹もぽっこり膨れてて、・・おいくつですか?中年体型ですね。」
・・え?実は克利もかなりおでこが広くなってきていて、自分でも気にはしていた。ただ、腹?え?俺のことを知ってる奴?まさか、照信自身・・?
これだけ照信のことを批判しているのだから、もちろん照信の書き込むことは想定していた。ただ、克利自身のことを特定されるとは思っていなかった。
特定されれば、電話番号も知っているし、住所だってもしかしたら覚えているかもしれない。ネットに晒されたら、削除されない限り永遠に残ってしまう。
あれだけ毎日のように罵っていた克利だが、それからピタリと書き込みを止めた。
コッテリは照信自身ではなかった。2ちゃんねるに照信のホームページがあるのだが、早い段階から克利が2ちゃんねるに書き込んでいることを特定していた。
別リンクで2ちゃんねるに書いてある内容が事実無根であること、また書き込んでいる人、克利がマッサージなのに性行為を要求した過程が赤裸々に語られていた。
期限を決めて警告したにもかかわらず、批判がエスカレートして第三者がコメントする等拡大の様相を示してきたので、電話番号とメールアドレスから克利のfacebook、twitter、Lineを芋づる式に調べ上げ、そこから顔と体の写真をコピペしホームページに載せた。
それをみて、コッテリは2ちゃんねるに書いたのである。克利が知らないうちに2ちゃんねるには克利板ができ、イケメンランキングに登場するのにそう時間はかからなかった。

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ハサミムシ(6)

「今日、これからって暇ですか?」
「空いてるよ。やろうぜ。」
「場所ありですか?」
「あるある。来れる?」
「でも、ちょっとうちからじゃ遠いかな?」
「平気平気。意外と思っているほど遠くないって。」
「でも、会う前に顔みたいな。」
「もう、俺のマグナム発射寸前。」
「写メあります?」
「オマエのケツマNに俺の極太マグナムをぶち込んでやるぜ。」
履歴が消えた。ブロックされたのだろう。
「何だよ、コイツ。使えねーな。クソが。」
克利は、気持ちを新たにして、ゲイアプリで次の相手を探し出した。
「165/58/28 ダンサー。今、ジムのトレーナーになるために一生懸命頑張ってます。俺のことを大切に思ってくれる人だけを探しています。」
顔入りの全体写真、後ろ姿の裸写真、ビーチでピースをする写真の3枚が載せてあった。
まあ、そこそこだな。克利はそうつぶやくと、早速メールを出した。
「175/57/28 スジ筋タチ。デカいとよく言われる。かわいいね。会わねー?」
すぐに返信が来た。
「タイプです。カッコいい。どこですか?」
克利はカラダ写真しか掲載していない。腹筋が薄く6パックに割れた画像を2枚載せている。もちろん本人とは似ても似つかない画像で、どこからか拝借したものだ。
身長は175㎝ない。3㎝サバを読んだ。体重も6キロ、年齢も4歳サバを読んでいるが、本人はどこ吹く風だ。それくらいは許容範囲というか、詐称したところで誤魔化せるレベルだと思っている節がある。
それに、詐欺画像だろうが何だろうが、部屋に連れ込んでしまえばこっちのものだ。画像はそれまでの手段に過ぎない。
最寄駅を伝えた。
「今日、会えますか、そこなら30分かからないくらいで行けます。」
「いいぜいいぜ、俺のキャノン砲をぶちかましてやろうか?」
「最寄駅はどこですか?」
「志木駅、東口に出たら連絡寄こせよ。」
なんだ、超淫乱野郎でやがる。やりたくてやりたくてたまんねーんだな。まてよ、ガバマNかもしんねーな。
薄手の桃色のセーターの上からお気に入りの黒くて薄手のジャンバーを羽織り、赤いマフラーをまとって、自転車で駅に向かう。
途中、マツキヨに寄ってテスターのフレグランスを体中に振りまく。お気に入りだからかかなりセーターも着疲れしていて、手首のところは若干脱色気味に変色している。ジャンバーもほつれがかなり目立つようになってきた。長年洗ってもいないので、フレグランスと相俟って得も言われぬ臭いを放つ。
着いたと言うメールが入る。東口を睨むように見ていると、髪を茶色く染め、ジーンズに無地の青いセーターを着た、見た目は22くらいのやんちゃそうなのが立っていた。
写真では色白で髪も耳が隠れるくらい長くて、どっちかというと物静かな感じだったんだが、服装はメールで指示のあったとおりだった。

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ハサミムシ(7)

「お待んたせ。」
悠然と克利はその相手に近づいて行った。
「来いよ、サクッとやろうぜ?」
顎をクイッとしゃくって自転車の置いてある方に行きかける。
「あ、いや、ちょっとしゃべりませんか?そこにドトールあるんで。」
なんだよ、コイツ。ノリ悪いな。そう思いつつも、コーヒー飲んでからヤルのには変わらないわけだからな、と付いていくことにした。
その相手はアイスコーヒーを頼んだので、克利も同じものを頼んだ。15時の店内は結構な人。階段下のちょっと薄暗いスペースが空いていたので、そこに向かい合って腰を下ろした。
克利は席について早々、アイスコーヒーにストローを差して、一気に飲み干した。しかし、相手は気にも留めず、ガムシロップを入れている。
「あの、写真のことなんですけど。」
「はい?」
「あれ、本物ですか?」
明らかにセーターの上から下っ腹が出ているが分かるのに腹筋画像を使っているから、誰だって訝しく思うのは当たり前だが、本人はそんなことを全く意に介していない。
「当たり前だろ?そんなの。脱げば分かるって。」
「そうなんですか?」
相手は無表情で聞き返す。
「なんだ、欲情してんのか?すげえスケベ。俺のテク・・」
コーヒーが無情にも克利の顔面にびっしゃりかかり、驚いた勢いで後ろに椅子ごと倒れた。
それを相手はパシャパシャと写メを撮っている。
何が起こったのか分からず、呆然としている克利に、
「それ、俺の画像だ、バーカ。次やったら殺すぞ。」
顔を足で思いっきり踏まれ、相手は足早に出て行った。あまりの出来事に、あたりはシーンと静まり返った。
その日のうちに、ゲイアプリで不細工な画像つきの、詐欺画像注意投稿があり、ツイッターで拡散されたのだが、克利は知らないままだ。
というのも、投稿してすぐ、克利はブロックされているのだから。

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ハサミムシ(8)

克利の趣味というか、最近熱を入れているのがアイコラ。膨大な量の写真の中からいろいろ組み合わせて、イケメンの全裸画像やセックス画像を作り出す。
職人技というか、ここまで来ると全身のモンタージュ写真とかできるのではないかというくらい、まあきれいに作り上げる。もちろん、大好物である競パン画像はストックも豊富だ。アイドル、モデルも克利にかかればすぐに丸裸。売って小遣い稼ぎにしたり、交換してさらにストックを増やしてと、アイコラ作りはまだまだ終わりが見えない。
画像はそもそもはインターネットから拾ってきたもの。そうはいっても誰でもいいわけでもないし、最近はアイコラ趣味が高じて写真撮影も熱心に取り組んでいる。もちろん、風景写真なんて全く興味がないし、鉄道や飛行機、犬や猫と言った定番ともいえる素材にも全く惹かれない。撮影対象はイケメンの若い男だ。
歩道橋にずらっと並んだ撮り鉄に混じって、全く別方向を向いて陣取っている克利。風貌は他の撮り鉄たちと遜色はないが、歩道橋から乗り出して、右斜め向こうの、線路がカーブしているあたりに電車が来るのをひたすら待つ撮り鉄を余所に、通学時間帯だから次々に来る高校生や大学生を、歩道橋から乗り出して連写する。しかし、上からのショットでは角度的になかなか使えないと言うことに気づく。それに、望遠で撮っても動いているものだから遠くて焦点が合いにくい。歩道橋を降り、バス停のベンチに陣取ってまたパシャパシャ撮っている。今度はさすがによく目立つからか、被写体の表情もカメラ目線になり、険しい顔つきに変わる。克利は人目は気にしないのだが、カメラ目線だったり睨んだ表情になっては使えないので、今度は公園と道路の境の低木の脇にしゃがんで撮り出した。そう気づかれるわけでもないだろうと思っていると、「もしもし?」と呼ぶ声が。もちろん無視をして撮り続ける。
「鈴木さん、でしたね?」
はっと振り向くと、前、夜中に職務質問をされた見覚えのある警官だった。
「何されてますか?」
「見りゃ分かるだろ、写真撮ってんだ。何だ、国家権力の犬のくせに。あいつらのとこへ行けよ、ほら、交通妨害しているだろ、歩道橋でよ。」
「苦情が交番に来ているんですが。」
「何の苦情だよ、犬は犬小屋で大人しくしてろよ。」
「カメラ、ちょっと見せてもらってもいいですか?」
「うっせーな、触るんじゃねーよ。汚い手で、あ、触るなっつってるだろうが、弁償しろよ、おい。弁償だからな。」
30分後、交番で、正面から、横から、安っぽいデジタルカメラで写真を撮られている克利がいた。

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