2023年05月

2023年05月17日

だって夏じゃない(11)

「どうした?」
普段あまり感情を表さない木偶の坊が珍しく顔を紅潮させていたので、出っ歯が木偶の坊に聞くと、
「殴られた。でも、俺は殴ってない。」
「なんだ、お前も焼き入れたいのか。そうだよな、殴られたんはお前だもんな。でも、顔はやめとけよ。」
と、木偶の坊は自分が履いていた靴を脱いで右手で持った。
「兄貴、すみませんが、奴の片足、持ち上げてもらってもいいっすか?」
「足、足ってこうか?」
淳平が片足だけ地面についた形になると、そして、一物を左手で握って上に上げると、その奥に垂れ下がっているものを靴の踵部分で叩きつけた。
「がはぁっ」
思いっきり革靴の裏で叩かれて、内臓がギュッと締め付けられる感じがした。肺も胃も収縮して、恰も内臓が口から出るのではないかという感じだった。二つの玉がキュッと上に上がっていった。爛れて傷ついた一物を雑に握られている痛さとは全く別で、何だか体の内部が得体のしれない何かに締め付けられている錯覚に陥った。
「タンマタンマタンマタンマ」
という声で木偶の坊は動きをピタッと止めた。
「ムリムリムリムリ、本当、ムリ。」
半泣きになって首を大げさに横に振って淳平は訴えた。
「バカだなぁ、兄ちゃん。そんなことを言っているうちはまだまだ平気ってもんだよ。なぁ。」
と出っ歯は木偶の坊をチラッと見た。木偶の坊は前に自身がやられた折檻の記憶が甦ったのか、軽く身震いをした。自身もかつて革靴の裏を使って、おそらくは何かされたのだろう。
「もういいんか?この前殴られて鼻血えらく出てたんけども。」
直近の記憶を蘇らせると、またも靴の踵を使って垂れ下がったモノを殴りだした。靴の踵はよく見ると、いざというときに凶器になるようになのかビスを埋め込んであった。
「あがぁぁ、ぐあぁぁ!!」
打たれる場所は違っても、何だかまるでボディブローでも食らっているかのような、臓物へのダメージが蓄積されていくような嫌な痛みが徐々に増していってくる。最早耐え切れず、手錠がなければ体を支えていることなんてできないだろう。
「これくらいにしといたらぁ、けどな、次はこんなんじゃすまさねえかんな。」
と遠くで捨て台詞のようなものが聞こえた。その後で、手錠がようやく外された。遠くで見守っていた光和だったが、手錠を外すとサッとまた戻って行ってしまった。おそらくは、ヤクザに帰れって言われたのに帰っていないことを咎められたら一大事と思ったからだろう。しばらくはその場から動けなかった。痛みもそうだけれど、何分男の象徴を目茶目茶にされてしまったことがひどくショックだった。悔し涙が出てきて、止まらなかった。淳平は、俺と同じ思いを他の奴らにも味合わせてやりたい、そんな憎しみの心を持ち、ヒリヒリズキズキする股間に軽く労わるように手を当てつつ海の家方向へと歩いて行った。辺りは既に暗くなり、雲の切れ間からいくつもの星が見え隠れしていた。

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2023年05月14日

だって夏じゃない(10)

「おう、それ、取ってくれ、それそれ、その袋、それじゃ。」
木偶の坊が、市指定のゴミ袋と、それを掴むトングを持ってきた。淳平は、ジンジンする自分の一物を労わることもできずに、体全体で大きく息をしていた。小麦色に日焼けした体と、競パンに沿って現れた本来の真っ白な素肌、そしておどろおどろしい様相で憮然と垂れてヒクつく一物が、先ほどの責め苦の激しさを物語っていた。
「さっきの兄ちゃん、海辺のゴミを集めたはいいけんど、ここに捨てちゃあかんがな。」
と、トングで何か取り出した。
「おい、これ、何だかわかるか?」
「溶けたビニール袋ですか?」
「お前は世間知らずじゃなぁ。これは電気クラゲっちゅうて、クラゲなんじゃ。」
「ふーん、そうっすか。」
「そうってお前、まあいいか、見ててみぃ。」
と、トングでつまんだカツオノエボシ、通称電気クラゲの死骸をそっと持って行った。で、テロンと垂れ下がった一物に手をかけた。
「止めろ、バカ、止めろ止めろ。」
出っ歯は一物の先を持って引っ張ると、その上にきれいなマリンブルー色の死骸を乗せた。
「危ない、止めろって、それ、毒クラゲ、チンポなん・・、きゃぁぁぁぁ!!!」
言い終わらないうちに、防砂林をつんざくような甲高い悲鳴が上がった。体を広く揺り動かしたので、クラゲの死骸は落ちてしまったが、その部分は点々と赤くなっていた。大事なところにキリのような太めの棘が刺さった、それも深くまで、そんな信じられないような痛さだった。
「電気、死んでもあるんですか、兄貴?」
「電気じゃねえよ、オメエ。クラゲってのは足んとこに毒針仕込んであんだぁ。刺激すりゃ、毒針がシャッと相手に突き刺さんだわ。」
「おっかねえクラゲっすね。」
「そうでもしなきゃ、オメエ、海にプッカプカ浮かんでんだけで、何も餌取れんじゃろが。」
そんな話をしているうちに、立派な一物をぐるっと取り巻くように赤くなった筋がミミズ腫れになってぷくっと膨らんできた。
「おお、ポコチンがいい色になってきたな。こりゃ、当分は遊べないわな、カカカカ。」
淳平は出っ歯を睨みつけた。
「なんだぁ、文句あるんかぁ?」
と、砂を持った手で長い一物を雑に扱き出した。
「かぁぁぁぁぁ!!!止め止め止めて、あぁぁぁぁぁぁ!!!」
風が吹いただけでもヒリヒリするのに、砂を擦り込まれたのでこの世のこととは思えない痛さが襲った。遊べないどころではない、本当に使い物にならなくなってしまう。これからの長い人生、男の象徴が使い物にならないなんて、とてもじゃないが想像を絶する。が、木偶の坊は木偶の坊で淳平のことを睨みつけていた。

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2023年05月11日

だって夏じゃない(9)

「さて、どうしようかの?」
「もう、用が済んだろ、この手錠を取れって。」
「手錠の鍵の、ここの枝に架けておくってからに。」
「いやいや、さっきの兄ちゃんがいっじゃろがい。」
「外してくれって、アイツ、俺を置いて尻尾を巻いて逃げてったんだから。」
「いや、あの兄ちゃん、あんな性格だから戻ってくるはずや。それよか、こっちもおっ始めるか?」
と、もう一方の腕をとると、反対側に伸びた枝にやはり手錠をかけた。
「おい、解放するって約束だったぞ、おかしいだろうがよっ!!」
「おいおい、解放するとは一言も言っちゃいねえぞ。落とし前をつけるって言ったじゃねえか。」
「だったら、さっきアイツのは何だったんだ、おかしいだろ。」
「それはアイツの落とし前だろ、兄ちゃんよ、俺ら、お前が目的なんだぜ?さっきいたガタイのいい兄ちゃんにはちょっとビビらせただけよ。」
と、淳平の顎を手で掴むと、
「まあ、今日はコイツと遊んでみるかな。」
と言って、淳平の競パンをずり下した。今まで不格好に束縛されていたモノが、ボロンと重力に従順に垂れ下がった。淳平は細身の体ながら天性の立派なモノを持っていた。自由になったそのものは、ブランブランと振り子のように揺れ動いていた。そしてその後ろには、このデカくて長いモノでさえも隠し切れない二つの玉が、ゆったりとした袋の中でやはり慣性の法則でゆらゆらと規則正しく揺れていた。
「この前はコイツで楽しむ前に邪魔が入ったからな、今日はジックリ楽しませてもらおうかな。」
「汚い手で触るな、チンピラ、金なら金って言え。金が欲しいからそんなことを言ってんだろ?」
「急に威勢が良くなったな?あれだろ、大声出せばまたさっきの兄ちゃんが飛んでくると思ってるんだろ?金を用意してくるとでも思っているんじゃないか?」
出っ歯はそういうと、チラッと向こうの遠くに見える海の家の方を見た。そこには、股間をしっかり押さえ、もう一方の手で双眼鏡を握ってこっちの様子を覗っている光和の姿が小さく見えた。光和は、先ほどの金的に懲り懲りして、ヤクザから見えないところで見守っていたのだ。
「まあ、助けに来てくれればいいさな。まずはウォーミングアップといくか。」
と、長い一物の先の、男の敏感な部分を撫でだした。
「痛え、痛え、マジで止めろって!!」
出っ歯は、落ちていた砂や堆積物を手に取って、それを塗り込むように亀頭を揉んだのだった。
「止めろ、止めろって!!」
ものすごく体をよがらせて苦悶の表情を浮かべている。パキパキに割れた腹筋がひっきりなしにモコモコとまるで一つ一つが生きているかのように躍動している。淳平もまだ大学生、エネルギーに満ち溢れているけれども発散する機会がなかなかなく、悶々と過ごしている。普段は包皮に守られているので、こんな荒々しい刺激は生まれて初めて、というか金輪際最初で最後にしたいくらいの激しい刺激であった。

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2023年05月08日

だって夏じゃない(8)

「ギャン!!!」
思いっきり急所を蹴られ、犬が哭いたのかと思うような声を上げた。じわじわと染み渡ってくる痛みに耐えようとしているのか、それとも逃れようのない痛みにあえて逃れようとしているのか、頻りに体をくねらせて捻って、内股を引いて、それこそマッチョらしからぬ格好をしている。
「いいぞ、サンドバッグ。手を離すなよ。」
「あぅぅ、勘弁して・・」
「おいおい、サンドバッグはしゃべらんじゃろ。ほら、腰が引けちょる。腰、前に出さんか、おい。」
歯を食いしばって痛みに耐えている。正直なところ、光和は顔は男っぽいのだけれど温和な性格で、喧嘩どころか揉め事とは無縁な性格だった。それに、こんな体つきをしていれば、手を出そうとは思わない。しかし、少なくとも光和は、正義感からヤクザに囚われた淳平を放っておくことができず、ヤクザの言いなりになって許しを乞うしかなかった。もちろん、淳平はむしろ光和が代わりに折檻されているのを見て、心がすく思いがしているどころか、ざまあねえなと思っていた。
「ギャン!!」
小さく縮こまった一点目掛けて、ボクサー崩れの的確な一撃が見舞った。
「ぐぉぉぉぉ!!!」
小さいからと言って痛みもまた小さいと考えるのは早計というものだ。神経は誰だって同じく通っていて、痛点も同じ数だけある。つまりは、神経が一か所にコンパクトにまとまっている訳だ。そもそも、金的なんていうものは男がそう簡単に食らってはならないからこそ、攻撃されるとこんなに痛む。少年時代のお遊びで電気あんま程度しか食らったことのない光和には、それこそ人生初めての金的、しかもモロに食らっているわけだからたまらない。たった2発で既に目が回るくらいの衝撃を受けている。
「ふっ、キンタマやられたくらいで騒いでダセエ奴。」
淳平はボソッと呟いた。大げさな演技だと思っているのだろうし、こんな恵まれた体をしているのにワーワー喚いている姿が癇に障ったのだろう。
光和は、何よりも急所を潰されて、男性としての機能を喪失してしまうのではないかという恐怖があった。なんせ、柔道ばっかりしている大学生で、正直まだ経験すらなかった。光和は奥手で、本当に好きになった人と関係を持ちたいと思っていた。それほど大切にしてきたものをここで失ってしまうのかという恐怖が頭を支配した。
「あの、すみません、お願いです、お願いですから、許してください。」
「はっ?」
「オマエ、何言ってるんだよ、殴ってくださいだろうよ。」
淳平は聞いていて苛立たしくなって言った。
「もう金輪際いたしませんから、許してください。」
「いいぜ、別に。」
皆が驚いて振り向いた。
「だが、条件がある。すぐにここから帰れ。すぐだぞ、いいな。」
「バカ、オマエ、根性なし、意気地なしのヘタレ、軟弱者、何してんだ、さっさと元に戻れ!!」
「ごめん、けど、本当に、ごめん。」
と言い残して、光和は股間を押さえて防風林を全速力で走っていった。

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2023年05月02日

だって夏じゃない(7)

「別に、謝って済むんだったらヤクザは用無しだわな。まあ、こっちとすりゃ、落とし前はどっちにつけてもらったっていいんだが、どうするよ?」
と、ナイフを淳平に突きつけつつ出っ歯が言うと、言い終わるか言い終わらないかのうちに、
「おい、元はといえば、こっちが頼んでもいないのにヤクザを突き飛ばしたオマエが悪いだろ。悪いと思っているならすぐ跪け!!」
と、淳平はまたも喚き散らした。光和は先日、淳平が羽交い絞めされて殴られている様子を見ていた。突き飛ばしたのだから、その仕返しに来たのだと悟ったし、少なくともナイフで刺すのだったらとっくに刺しているだろうし、ここは様子を見た方がいいのだろうと思い、大人しく膝をついた。
「何が望みなんだ?」
「おい、その態度はなんだ、言われた通り何でもしますだろ。」
と叱りつけたのは淳平だった。
「まあ、俺も体が最近なまっちまってなぁ、年だなぁ、俺も。おい。」
と、ナイフを木偶の坊に渡した。で、ナイフを淳平に突きつける役を木偶の坊と代わり、
「サンドバッグ欲しいとこさなぁ、なあ、兄ちゃんよ、サンドバッグやるっけぇ?」
「やります、やらせてください、是非!!」
と淳平が代わりに答えた。
「なんだ、オメエ志願すんのけぇ?」
「違います、アイツです、アイツ。アイツがサンドバックなんです。」
と光和を当然のように指名した。さすがに出っ歯もその厚かましさにムッと来たし、用があるのはむしろ淳平の方であったが、一方で全く歯が立ちそうもないこの筋肉隆々の若者をひいひい泣かせてやりたいという思いもあったので、わざわざ呼び出したのだった。
「そっか、兄ちゃんがサンドバックになるか。じゃあ、その枝あんだろ、そこを両手で掴めや。」
出っ歯が指した向かいの木の枝を両手で掴むと、ちょうどサンドバッグのように見えてきた。出っ歯が殴る構えをとったが、すぐに止めると、
「兄ちゃん、サンドバッグは服なんて着てないやなぁ。」
「いや、それは、ちょっと勘弁して。」
「バカ、オマエは、脱げよ、サンドバッグなんだから、ほら、脱げ、脱げって。」
渋々脱いだが、恥ずかしいから、股間を片手で押さえている。
「兄ちゃん、サンドバッグはそんなことはしないやな?」
出っ歯もさすがに失笑した。周りは男だけ、それに男っぽい顔立ちのマッチョが股間を見られるのを恥ずかしがるというのも滑稽だった。恥ずかしそうに手を除けて、両手で枝を掴んだ。まあ、出っ歯も、そしてその他の者も、恥ずかしがる理由は何となく分かった。そんな立派なものを持ち合わせてはいなかったのだ。特に淳平は蔑んだような笑みを浮かべていた。それにしても、少なくとも海水浴場では見かけないような、全身筋肉で覆われたものすごい体をしている。海水浴場でこんなマッチョがいたら二度見してしまうだろう。男も惚れ惚れするような精悍な顔つきをしていて、普通の男の腿くらいはあろうこの太い腕、どうしたらこんな胸になるのかというくらい厚い胸、それでいて超合金並みの硬さだと推測できる腹、腕が腿であれば、足に至ってはもう木の幹のようである。筋肉で覆われたサンドバッグ、当たり前だが狙いはもう一点に限られるだろう。

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