2022年07月

2022年07月23日

青陵大学応援団(9)

立ち上がると、今度は「手、どけろ。」という声が聞こえてきた。大地はしわしわのトランクスを脱いだ時点で、両手で股間を押さえるように隠していた。臍から比較的濃いめに、渦を巻くように生えていて、男らしさ、雄っぽさが出ているだけに、両手で股間を隠す行為は傍目から見て違和感があった。言われた通り手を退けたが、想像通り、というか想像以上に、恐怖でビビっている様子が股間からも伝わってきた。カラダの大きさに反比例したこのビビりよう、これが自分たちの応援団長かと思うと、見ている方も見るに堪えない恥ずかしさをひしひしと感じた。すると、目の前にいた団員が、前触れもなく大地の股間を蹴り上げた。硬い革靴で蹴られ、思わず両手で押さえて腰を引いた。そして、男はそんなことを気にも留めずに輪の中に入ってコールを始め、次の団員が前に立ち、「手。」と言うのだった。手を退けると、何のためらいもなくまたも股間に蹴りが入る。「いやぁぁあ!!!」とあまりの痛さに悲鳴を上げてしまった。そして、輪に戻って第三の団員が前に立ち、「手をどけてください。」後輩だ。しかし、冷たい目をしている。これが序列が一番下という意味か。男の一番大切な部分を晒して、一人一人に蹴られる、それも顔ではなく、一番の急所を・・応援団長なのにこんなにも屈辱を受けるとは。涙目になって三人目の団員を見つめると、そいつは拳で股間を正拳突きした。「ひぃぃぃぃ!!!」その拳の勢いと痛さで、大地は仰向けに倒れこんだ。周りと取り囲んでいる団員は、ずっとお題目のようにコールを繰り返していた。四人目は、やはり冷たい目をして、頭の後ろに手をやるよう、ポーズで指示した。

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2022年07月20日

青陵大学応援団(8)

周りの応援団たちが、手拍子をして、コールを始めた。「おー、青陵、青陵、青陵、青陵大学日本一、ハイハイ青陵NO.1、ハイハイ青陵ハイハイ青陵、やっぱり青陵No.1、青陵素敵、青陵素敵、われらが青陵No.1、おー、青陵、青陵、青陵・・」これを聞くのは2度目、団長就任以来だ。逆三角形のカラダに堂々とした大胸筋、そしてうっすらと見える腹筋の上に渦巻く腹毛、185センチの長身で威風堂々としていて、傍目から見た限りでは男の中の男だったが、今ここに立っている青陵大学応援団長、沢登大地は両足は情けないことに、臆病風を吹かせてガクガク震えていて、青ざめて俯いた顔からは冷や汗が止まらずに床にぽたぽたと落ちていて、とても見ていられなかった。「足。」足を開けと言われている。とてもこの状況に耐えられない。と、急にハッと思い出した。掟だ、俺は掟に触れたのか。信用失墜行為に対する掟、掟に触れたものは、皆が受け入れるまで謝罪をし続ける、蹴られても殴られても、ひたすら謝り続ける、見たことはないがそれだ。土下座をして、「申し訳ございませんでした。」とコールに負けないくらいの大声で詫びを入れたが、コールは止まないし、見上げると、「立て、早く。」と冷たく見下ろしたままで小さく怒気のこもった声が耳に入ってきた。

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2022年07月10日

青陵大学応援団(7)

応援団の伝統儀式はいろいろある。団長になるとき、もらった盃(といってもグラスに入った生ビールだが)を必ず飲み干さなければならないというような儀式はあったが、序列を上げ下げする儀式は聞いたことがなかった。周りの団員は、両手を後ろに組んで、不気味に何も言わずに立っていた。「脱げよ。」応援団は、大学にいる間だけではなく、通学もこの青陵大学応援団の刺繍の入った長ランを着ていたので、大学で応援団に入ってから、この制服を脱ぐといったことは、真夏の太陽の下でもなかった。戸惑っていたが、周囲は誰も口を利くものはなく、自発的に脱ぐのを待っていた。目を合わせるでもなく、何も行われてないかのように皆の視線は上方を向いていたが、温かみはなかった。脱ぎ、下着だけになったが、それでも皆動かないし、言葉は何も発しなかった。全部、決まっているだろ、皆のあさってを向いた視線がそう言っているように感じた。俺は団長だ、伝統ある青陵大学の応援団長だ、俺を見れば皆が道を開ける、皆が恐れ戦く応援団長なのに、今、そんな誇りを全く失って、下着を脱いでいる。いや、尊敬も信頼も、昨日の時点で失った。一瞬の隙で全てを失ってしまった。そして、隠すという選択肢もあったのに、動画を映して全団員に失態を晒した。その時点で序列も何も・・脱いだ、全部脱いだ。

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2022年07月08日

青陵大学応援団(6)

翌日、大地が普通に部室に入ると、いつもの半分くらいしか人がいなかった。他の団員はどうしたのか聞いても、誰も答えない。と、部室に置いてあったモニタに動画が映っていた。はっきりは見えないが、蹴られて蹲り、そして、土下座して「申し訳ありませんでした。」と何回も繰り返し、大きな声で謝る自らの姿、そして・・そこからは応援団員が相手の携帯を奪って壊し、追い回す姿、そして土下座して頭を地につけたままの大地の頭を踏みつけて「もっと大きな声で。」と執拗に謝らせ、さらにもう一人がズボンのチャックを開けて大地の頭に向かって放尿する、我が応援団員の姿が映し出されていた。記憶が急に蘇ってきて、大地の瞳孔は開き、足の震えは止まらなかった。「団長さんよ。」一人が振り返った。「ちょっと話があるんだけど、顔貸してくんない?」そして、グラウンド整備用の備品が入れてある倉庫に入った。ここには壊れて使われなくなったようなものしか最早入っていなくて、要は気合を入れるための部屋として今は使われていた。入り、内カギをかけると、窓の曇りガラスから差し込んでくる灯りだけで、周りの古びた備品は暗くて見えない。「あのさ、簡単に言うわ。応援団長は引き続きお前やれよ。」今まで、団長と呼ばれていたのに、「お前」という表現に変わっていた。「けど、序列は一番下だから。」ショックは受けなかった。映像で、小便をかけられているのを見た方がショックだった。「今から、序列が一番下になったという儀式をするから。」

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2022年07月05日

青陵大学応援団(5)

知らないうちに輪ができていて、大地とあばた面のリーゼントが向かい合った。大地の方がカラダが二回りくらい大きく、相手を圧倒していた。学ランを着たもう一人は、携帯電話でこの様子を撮っているようだった。それを見た応援団員のうち一人も、携帯電話を取り出して動画撮影を始めた。あばた面も、明らかに携帯を意識している様子で、声がはっきり聞こえるように、「じゃあ、そろそろおっぱじめますか。」と、言って、わざわざ外灯のある方へと移動した。殴りあえばお互いに傷が残ってしまうので、とりあえず掴んで力業で投げ飛ばして地面に叩きつければ、相手も動けないし降参するだろう。相手は距離を微妙にとっている。と、相手が右斜め上のほうを向いて何か見ている。釣られて見ると、・・やられた。激痛で片膝をついた。その後はよく覚えていない。気が付いたときには河原の芝生に横臥していた。
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