2019年10月

2019年10月31日

よくあるファミレスでのできごと(2)

「そっか、俺も行ったことがあるよ、その美術館。超センスいいよね。」
ここは新宿三丁目にあるファミレスだけあって、ゲイ率がかなり高い。会話も聞かれたって全然平気なくらいあからさま。っていうかさ、絶対行ったことないだろ。相手はあんまり乗り気じゃなさそう。
「ニューヨークって感じ?俺さ、実はニューヨーカーに憧れているんだよね。良くなくない?響きが。ラジカセ片手にさっ。」
ってポーチを肩の後ろに持って行っている。自分はラウンド髭だと思っているのだろうけれど、坊主の丸顔でどう見てもカールおじさん。脂ぎってテカテカした田舎者丸出しの顔してニューヨーカーもないだろ。入浴ならまだしも。俺としたことがオヤジギャグ的な発想だな。相手はやっぱりさっきのネクラと同じくらい顔が白くて小さくて、どこかのお坊ちゃんというか、学習院でも行ってそうな感じ。身なりも清潔だしさ。カールおじさんの方はラガーシャツ?これはこれでよくお似合いでございます。しっかしアンバランスだな。ここで初めて出会ったのかな?それにしてもカールおじさんの趣味だよな、ファミレスデートなんて。
「DJもやってみたいんだよね、こんなの。」
と、カールおじさん、レコード世代?言うことが古すぎ。ジェネレーションギャップ半端ないじゃん。相手も全然乗ってきてないし。会話が弾まずにカールおじさんの空回りが痛々しくて虚しい感じ。ああ、笑っている、愛想笑いかな。ひきつってるじゃん。地獄の時間。
「そろそろ、いいかな?どう?」
ムチャクチャなタイミングで相手の手を握っている。何だこれ。目がマジ。え、頷いているよ。マジで?エッチ目的なのか。手を引いて足早に連れていかれている。うわ、汚れ専?これこそ金の臭いがするな。

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2019年10月29日

よくあるファミレスでのできごと(1)

夜も20時くらいになると、客が急に増えてきた。このファミレスはオーダーがある場合はテーブルにあるボタンを押すシステムなのだが、ひっきりなしに押され、さばくので精一杯。
そんな中で、悠太が彼氏を連れてきた。
っていうか、彼氏何だかどうだか怪しいが。どうせどこかで引っ掛けてきた男だろ?
「セーナ君、元気?」
悠太は手を上げて星那を呼び止めた。向かい側には色白と言うより青白い、黒縁メガネをかけてどちらかというとネクラそうな、少年?年上?ボリュームのある髪が年を分からなくさせている。その彼は声を発することがないんじゃないかと思うくらい縮こまって俯いていた。
「ご注文は?」
「男。活きのいいのにしてね、俺、マグロだから。」
「ドリンクバーはおつけしますか?」
「カルピス濃い目で。」
何か、他の人に注文とってもらった方がいいわ。忙しいし。
「セーナ君、この彼どう?」
どうって、マジでさっきから一言もしゃべんないし、顔も上げないし。挨拶くらいできないものなんかね?何?
「彼、実はウリ専なんだよ。」
は、はい?こんなネクラが?もしかして、悠太、こんなの買ったの?どこがいいの、こんなの?いくら払ったの?何時間?どこで?決め手は?どこが良かったの?俺にはいいところが見つからないんだけれど、良さを教えてよ。いろいろな疑問が爆発的に湧いてきちゃって、言葉が出ないよ。
「・・違うよ。」
「は?違わないだろ。」
「僕はウリ専じゃない。」
「だって会うのに金がいるんだろ?ウリじゃねーか。」
何何、え、買ったの?
「何言ってるんだ、早とちりだな。これから交渉するんじゃねーの。だって処女だっつーからさ。」
ゲイに処女も何も自己申告じゃんね。
「違います。僕が払うんです。僕が買うんです。」
ん?二人とも目を大きく開けて、でお互い見合わせた。っていうか、でしょうね。経験ないのにいきなり売るわけないっしょ。早とちりはどっちなんだよ、頭悪いわ。
「俺、無料だよ。フリー。」
え、やるの?
「なんで?処女だろ?」
は?
「でさ、物は相談なんだけど、セーナ君、バイトでしょ?部屋貸してくんない?」
絶対嫌だけど。
「ケチ。ケチケチドケチ。じゃ、そういうことだから、セーナ君、バーイ。」
ネクラ君の肩をガシって組んで、店を出て行った。状況がつかめない、っつーかついていけない。

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2019年10月27日

家庭教師(6)

結局、B大には行かなかった。東京のK大に受かっちゃったからさ。2年生のときに成績がグンと伸びて、志望校を変更したんだ。でも、家庭教師はずっと変えず。ご褒美を小出しに小出しに出してきて、俺の意欲をくすぐり続けたからこうなったんで、家庭教師を変えたら一気に下降線を辿っただろう。だったらB大行けばいいじゃん、先生がいるんだからって思うだろうけれど、先生、俺と同じネコちゃんで。あんなエロいカラダしてネコちゃんだったなんてね。それに、先生は俺の合格と同時に卒業して、就職したんだ。で、猫ちゃん同士、同じ屋根の下に住んでいる。最後のご褒美は、一緒に住むことだったし、両親にもカムアウトしたんだけれど、むしろM銀行のエリートと一緒ならって喜んでいたよ。でも、実は今はこっちが褒美をあげる方。先生の教育のおかげで、俺はネコちゃん以外にもできるようになっちゃったからさ。そうだ、俺、大学生なんだから、バイト、家庭教師やろうかな・・。

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toppoi01 at 08:30|PermalinkComments(0)家庭教師 

2019年10月26日

雑記帳(2019/10/26)

前作「栗の香りに囲まれて」に引き続き、「家庭教師」もホンワカした感じの小説です。次の「よくあるファミレスでのできごと」もそんな感じ。「デリバリーC」と「終わりの見えないデスマッチ」が根強い人気だったりするんですよね。「終わりの見えないデスマッチ」なんてBの方も終わりが見えていないのにCを書き始めてしまいましたんでね・・。デリバリーも続編書いた方がいいかなと思うんですが、今のところ、軍人系2つを書いているんで、なかなかそこまで手が行き届かず。読んでいる皆さん、何が好きで読んでいるの?(笑)

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toppoi01 at 16:52|PermalinkComments(0)雑記帳 

2019年10月25日

家庭教師(5)

「決めた?」「・・B大。」「そう。じゃ、当初と同じだ。」「先生と一緒の大学に行きたいから。」言っちゃったよ。「ふーん、じゃ、頑張って。」「先生は俺のこと好き?」「そこそこ。」「付き合って。」「無理。」勢いでイケるかなと思ったけれど、ふーんって言われている辺りから望みは薄かった。そうだよな、そうだよ。勉強する気がなくなったわ。「先生と生徒の関係だから無理。」「じゃあ、キスは?」「成績が上がったらな。」俺は顔がすごく赤くなっていただろう。全身が火照って火照って仕方がなかった。無論、あっちの方だって収まりがつかなくって・・。こんなに勉強をしたくなったことがあるだろうかと思うくらい、急にモチベーションが上がってきたよ。ヤル気が出てきた。今思えば、キスくらいでさって感じなんだけれど。

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toppoi01 at 08:30|PermalinkComments(0)家庭教師 

2019年10月22日

家庭教師(4)

「先生、腕相撲しようぜ?」「ん?後で。」「先生、俺、美大行こうと思ってんだけど。」「じゃ、勉強して。」素っ気ない。全然素っ気ない。僕のことを生徒にしか見ていない。そりゃそうなんだけどさ、僕だって高2じゃない?そんな青春時代をさ、そんな勉強だけで過ごしたら勿体ないと思わないかね?勉強以外にだっていろいろ教わってみたいじゃん?遊び盛りじゃん、好奇心旺盛な高校生が目の前にいるじゃん、何とも思わないんかね?そうだよな、そりゃそうだわ、全然。先生、別にゲイなんかじゃないもんな。興味があるわけないもんな。「先生、やっぱ体育大行こうかな?」「どうして?」「勉強ばっかできるだけより、カラダもいい方がなお良くない?」「じゃ、カラダだけの大学より運動もやりつつ勉強もできるB大の方が良くないか?」真面目だわ。「体育大なんて男ばっかでむさいだけだぞ?」「全然平気っす。」言ってしまった。でも、抑えが効かない。「俺、その方がいいんだ。」「俺も。」ん!?先生が俺のことを見つめる。俺も?「何やりたいかはご両親とよく相談してさ、それによって受験科目が変わるんだし、そもそも授業料を払うのはご両親なんだから。」「・・・、じゃ、今日は生物だっけ?どれ?」いや、あの、・・全然動じない。そうだよね。家庭教師だもんね。

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2019年10月19日

家庭教師(3)

先生の声はボソボソと小声で言うからうまく聞き取れない。だから、教えてもらうときは結構密着して聞く。髪はボサボサの天然パーマだけどちょっといい香りがする。縁が黒みがかった青い眼鏡をかけていて、眉は結構濃くて、顎髭を生やしている。鼻筋はすっとしていて高くて、息がちょっと甘い香りがするんだよね、いつも。全然勉強が手につかなくなってきた。母親はさ、僕のことを考えてむさくるしい男の家庭教師を頼んだんだろうけれど、逆効果なんだよね、実は。ちょっと暖房効き過ぎているからか、先生が上着を脱いだ。腕が太い。俺も空手しているからそこそこ腕が太いんだけど、俺より二回り位太い。胸もちょっと見えるけど、胸毛うっすらと生えてない?胸、見てみたい。見たいって言ったら見せてくれるかな?男同士だけど、何か変だよな。唐突すぎる。部屋をもっともっと暑くして脱がすとか?俺が率先して脱いでみる?難しい。簡単なようで難しい。この英語の訳よりよっぽど難しい。

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2019年10月17日

家庭教師(2)

教える内容は、もちろん大学受験を意識しているけれども、俺は内申があまり芳しくなく、どちらかというとバリバリ死ぬ思いをして受験勉強をするよりは、推薦で楽にサッサと決めてしまいたい方。親も、浪人とか金がかかるし、そもそも一人っ子な割にそんな頭の方に期待をかけられているわけでもない。ま、親の遺伝なんだから、そりゃ限界を知っているんだろうけれど、せめてB大くらいにはってことなんだろう、こんなクソ真面目な家庭教師を選んできやがって、なんて、よくよく見るとね、暗そうだけれどイケないこともないんじゃない?って気もしてきた今日この頃。俺の勉強机、既に物心がついたときからここにあったんだけれど、今どきこんな勉強机で勉強している奴なんていねーやと思ったが、先生が横について見てくれるってのはちょっとドキドキするよな。でも、顔見たいけど、横だと見えないんだよな。鏡でも置こうかな。

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toppoi01 at 09:00|PermalinkComments(0)家庭教師 

2019年10月15日

家庭教師(1)

僕の家に新しい家庭教師が来た。国立B大学の2年生。基本的に母親が選んで、そして母親がこの科目を中心に教えてほしいとかいろいろ言ったんで、僕は全然関与していない。そもそも、B大は父親の出身校だからと指定しただけで、家から大学まで1時間以上かかるようなところにあるからなかなか成り手が見つからなかったらしい。条件も全然折り合わずに3か月、ようやく決まったのがこの、髪もボサボサで若干天パーで黒縁の結構度のきつい眼鏡をかけ、また苦学生なのかどうか知らないけれど、毎日毎日同じ服を着てくる。サイバー研究会とか入っていそうな、のそっとしていて鈍臭い、イケていない大学生。俺はゲイに最近目覚めた高校2年生。そんな俺の好奇心を満たしてくれそうもない、ごくごく真面目な家庭教師。
「よろしくお願いします。」
って声もボソッてしていて、コイツ大丈夫かよって感じがする。

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toppoi01 at 08:00|PermalinkComments(0)家庭教師 

2019年10月13日

雑記帳(2019/10/13)

「よくあるファミレスでのできごと」「イスラエル王ダヴィデ」も書き上げましたので、順次上げていきたいと思います。ちなみに、史実に基づいている訳ではないです。いろいろくっつけていますし、だいたい、アブディエルがサタンに捉えられた話なんて聞いたことないですし、ファミレスに俺はここ10年以上行ったことがないんで、空想もいいところです。そうそう、「ブルーボーイ三島」を書き始めました。モチーフは三島由紀夫ですけど、まるっきりの嘘なので、予め言っておきますし、検索に引っかかってこちらにたまたな来た三島ファンの皆さん、ごめんなさい。

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