2016年08月

2016年08月20日

デリバリー(3)

先に手を出したのは達彦からだった。自然と手が肩に行き、そっと抱き寄せた。耕太郎は抗わず、それに従った。
足と足が触れ合い、お互いの温もりが伝わってきた。一呼吸おいて、達彦は耕太郎の唇に自分の唇をそっと重ねた。耕太郎はそっと目をつぶった。軽い、触れ合うようなキスだった。
いったんは唇を離したが、今度は耕太郎からキスを求めてきた。半ば暴力的に奪われた唇から舌が入り込み、それから先は自然に任せ、互いの舌の先を交差させ、激しく絡ませた。
「うっ・・。」
達彦が湿った服の上から胸にそっと触れると、耕太郎は低くて野太い息を漏らして、カラダをビクつかせた。
服の上から確認できるほどくっきりと盛り上がった胸。見た目とは違って岩のように固く引き締まっている。その固さを確認するかのように、丹念に指先でなぞる。耕太郎の息は荒く、そして徐々に激しくなっていった。


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toppoi01 at 15:47|PermalinkComments(0)デリバリー 

2016年08月18日

デリバリー(2)

インターホンが鳴った。
「先ほど電話した、佐川・・」
無言でロックを解除した。
しばらくして部屋のチャイムがまた鳴る。達彦はすぐにドアを開けると、耕太郎が快活そうな笑顔を浮かべて立っていた。
「入って。」
いささか無愛想な感じで告げ、耕太郎は中に入った。
「何か、飲む?」
500mlの缶ビールを手に取って、聞いた。
「いえ、自分、買ってきました。」
コンビニの袋を掲げた。ノンアルコールビールを自分用に買ってきたようだった。
達彦は、自分のビールをちょっと口に含んだ。耕太郎もそれに合わせて、自分で開けてグビッと飲んだ。そして、達彦を見つめた。
達彦は何を言っていいか分からなくてドギマギした。沈黙を打ち破ったのは耕太郎の方だった。
「俺、どうですか?」
「どうって・・」
「タイプですか?」
「・・・。」
「俺、タイプっす。」
畳みかけるように告白した。そして達彦の答えを待った。達彦は耕太郎の顔をじっと見つめた。
ニキビ跡が複数残り、色黒で、決して男前とは言えないまでも、快活、純朴そうな、好青年という感じだった。

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toppoi01 at 22:58|PermalinkComments(0)デリバリー 

2016年08月09日

優先順位(7)

もういいだろ?いつまで検死しているつもりだ?そろそろ俺も行きたいんだ、和明のところに。来世では、まず最初にお前を探すよ。そして一からやり直そう。それから・・

当初は花を手向ける人、線香を地面に差して手を合わせる人がいたが、こんな事件のことはあっという間に風化し、忘れ去られた。
ただ、いつしか、周囲には不気味な噂が立っていた。夜な夜な、線路に腕だけで歩く、上半身だけの黒い影が現れると。その影は、なくした足を探して彷徨っているんだと。
しかし、本当は、探しているのは足ではない。耳をよく澄ませば、幽かに聴こえることだろう。「和明、和明」とつぶやく声が。

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toppoi01 at 12:55|PermalinkComments(0)優先順位 

2016年08月07日

優先順位(6)

ある日、和明に、明日は来るか聞かれた。来ないと思うけど、何でって答えたよ。明日のことなんて分かんないじゃん?和明は、そうかって悲しげな眼で俺を見た。俺は何だコイツって思って帰った。別に帰ったって会話ゼロ。子どもは寝てるしな。部屋も別々、家庭内別居って奴だよ。
次の日は、何も言わずにいきなり行ってみたんだ。浮気してんのかって思ってね。だって、よくよく考えてみたら予定聞くの変じゃん?入ったら、小さなテーブルの上に缶ビールとケーキが置いてあった。
出会って1周年だって言うんだ。もうそんなになるんだっけ?だから何だって感じだけどね。ケーキは出ていたから、食べて一戦してから帰ったよ。
ある日、帰ろうとしたら、和明が泣いているんだ。変なのって思って、その日は帰った。1週間後に会って、また帰ろうとしたら、また同じように泣いているんだよ。何でか聞いたら、もしもう来なくなったらこれが最後と思うと悲しくてだって。笑っちゃうだろ?杞憂だろ。妻なんて泣くどころかずっと無表情だぜ?
そのうち、和明とばっかり会うようになって、家にも帰らなくなったよ。愛おしくなってさ。離れられなくなったって奴だね。
でも、妻から久しぶりにメールが入って、どうでもいいやって放っておいたら、今度はお袋から電話があってさ。親子で無理心中を図ったって。妻は胃洗浄して睡眠薬を吐き出したから命に別状はなかったけれど、まともな会話ができない。精神がおかしくなったんだ。子供は死んだ。まあ、俺の遺伝子を受け継いだ子供なんて、いない方が良かったかもしれないな。
葬式を済ませて、一段落してから和明のところに行ったよ。俺と一緒にいても不幸になるだけだから、清算しようと思って。でも、遅かったよ。鍵を開けたら、和明がぶら下がっていた。いつからこうしてぶら下がっていたんだろうな。テーブルの上に、メモが残してあった。ただ、「今まで、楽しかった。ありがとう。」って書いてあった。あれで楽しかったんだ、和明にとっては。

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