2015年09月

2015年09月17日

デリバリー(1)

仕事が終わり、帰りがけに買った缶ビールを開けようかと思った矢先にインターホンが鳴った。
「佐川急便です。お届け物に伺いました。」
ああ、再配達頼んでおいたやつか。すっかり忘れていた。
達彦は頭を掻きつつ、不在通知書を手に取った。何だ、21時までにって言ったのに、15分くらい過ぎてる。
まあ、いいや、お互い様だからなと、缶ビールを手に取った。窓からは飛行機が羽田空港へと着陸する様子、その向こうにはレインボーブリッジが見える。
新調仕立ての白いソファに座って、缶ビールを口に付けた。
部屋のチャイムが鳴る。
「お届け物のクール便です。」
ああ、通販で日本酒注文したんだったな。30そこそこの配達員、笑顔が爽やかだ。目が合った。
「今日はここが最後ですか?」
「はい、ここで終わりです。」
いかにも嬉しそうに、白い歯を出して笑う。思わず、
「よかったら、少しどうです?ビールくらい。」
つい、笑顔に惹かれて、口走ってしまった。自分でも言った後で、何言ってんだ、俺と思ったくらい。
「すみません。これから事務所帰らなくてはいけないんで、気持ちだけいただきます。」
うん、まあ、そうだよな。達彦はうつむきながら、自分に言い聞かせた。すると、
「これ、自分の連絡先です。後で良かったら連絡ください。失礼します。」
名刺を渡され、唖然とする達彦を背にして、彼は出て行った。

耕太郎は、車内で一人、若干顔を紅潮させて運転していた。
達彦の家に行くのはこれで4回目だった。また、耕太郎は達彦がゲイであることは知っていた。
9monで近いことが分かり、耕太郎は達彦にメッセージを送ったことがあった。
ただ、耕太郎が風景写真しか載せいていないのを訝ったのか、メッセージが返ってこないばかりかブロックされてしまった。
そこには、達彦のネクタイ姿の顔写真と、均整のとれた、彫刻のような肉体美が2枚掲載されていた。
鼓動の高鳴りが自分でも分かった。ハンドルをしっかり握りしめ、幾分加速して走った。

達彦はというと、この意味をまだ計りかねていた。おそらく相手は俺がゲイだということを知っている!?
ただ、なぜ分かったのだろうか?会った覚えもないし、と、この部屋を見回したが、特段ゲイっぽい要素も感じさせない、無機質な部屋だ。
解せないが、電話番号・・見ると、営業用の携帯番号ではないらしい番号が、名刺の裏に手書きで記載してあった。
恐る恐るかけてみた。缶ビールもすっかり泡がなくなって、当初の冷たさはなくなっていた。
「はい。」
「あの、先ほど酒を配達してもらった、・・。」
「ああ、電話ありがとうございます。」
部屋に入ってきた時の、あの営業の声と同じ、威勢のいい声が返ってきた。
「で、あの・・。」
「自分、もう営業所に帰りまして、これから時間、大丈夫です。」
「あ、あの・・。」
「これからじゃ迷惑ですか?」
畳み掛けるように耕太郎は言った。向こうからかかってきた電話、このチャンスをモノにしなければという焦りがそうさせた。
「これから、じゃ、これからで。」
達彦はただそれだけいうのが精一杯だった。
「じゃ、あと10分くらいで行けると思いますから。」
10分・・か。部屋をざっと見まわしてから、ベランダに出て、タバコを吸った。落ち着こうと思ったが、動悸は全く収まりそうもなかった。


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toppoi01 at 17:36|PermalinkComments(0)デリバリー 

2015年09月15日

短かった夏

ある夏の日
「ねえ、翔太。」
布団に入って宙を見つめている翔太に話しかけた。翔太は聞いているようでもあり、無関心なようでもあった。
「去年の沖縄に行ったときのこと、覚えてる?」
俊夫は右手を布団の上に乗せた。おそらく翔太のヘソの上の辺りに。いつも寝るときはこうして腕を翔太のヘソのあたりを触れていた。ただ、いつもと違って掛布団の上から乗せた。
「翔太はさ、全然沖縄行こうとしなくてさ。日に焼けるからって。そんなの、どこに行ったって日に焼けるじゃん。俺が沖縄、沖縄しつこく言うもんだから、渋々行くことにしたんだよね。」
「俺は沖縄が昔から好きだったから、翔太と絶対に行きたくてさ。旅行会社かよって言うくらい、沖縄の良さを説明したよ。でも、もう飛行機に乗る前からすっごく日焼けクリーム塗りたくってさ、俺、びっくりしたよ。空港を出たら日差しが強いからって、羽田空港から塗らなくったっていいじゃんね。飛行機の中も臭くて。」
翔太は相変わらず真上を向いていた。
「あと、そうだ。ハブクラゲ。沖縄のクラゲ。あれがすごい痛いらしいってビビっていて。酢を持って行くかどうかで揉めたよな?酢なんか現地で買えばよかろうもん。」
「でもさ、現地に行ったらネットが張ってあるんだよ。クラゲがビーチに入って来ないようにさ。だったらあの夜中の喧嘩なんだったんだろって大笑いしちゃって。」
遮光カーテンで窓も閉めきっていたが、南向きのマンションであったため、かすかではあるが陽が室内に差してきた。
「日焼けもさ、俺の世代だとガンガンに日焼けして、みんなロン毛でさ。工藤静香だって真っ黒だったんだぜ?あ、工藤静香とか知らないか。キムタクの嫁だよ。」
「だってさ、高田みづえ知らないんでしょ?みづえちゃん。若島津でさえ知らないもんね。いやー、高田みづえ知らないんだーって思ったときはさすがにジェネレーションギャップを感じたよ。」
翔太の口は、ずっと半開きのままだった。左の八重歯がちょっと顔を出していた。
「ギャップって言ったら、やっぱり歌だよな。ほら、沖縄でレンタカー借りたじゃん?ほいで、俺のiPodをかけたらさ、翔太全然知らないんだもん。俺が前の日に「夏」セレクションを作ったのにさ、知らない知らないって。名曲ばかりよ?」
「そうそう、カラオケもさ。歌じゃなくてドリンク。翔太が酒苦手って言うからカルアミルク薦めたら、知らないって言うじゃん。おいしいおいしいって飲んで、飲み過ぎて店出たらすぐに吐いていたけれど。アルコールどれだけ入っているかなんて分からないからな、甘ったるくて。」
俊夫は翔太の手を握り締めた。ひんやりとしていたが、まだ柔らかくて、まるでまだ生きているみたいだった。
翔太の眼は開いていたけれど、瞳孔はすっかり開いてしまって、まるでもう死んでいるみたいだった。
「もっとさ、いろいろ翔太と行きたかったよ。」
敏夫は涙声になって、さらに翔太に語り掛けた。
「もっとさ、いろいろ思い出を作りたかったんだよ。一緒にさ、楽しく暮らしたかったんだよ。」
段ボールが数個置いてあった。翔太が新しく借りたアパートの住所が書いてあった。
「出て行かないでくれ、出て行くなんて言わないでくれよっ!!!」
敏夫は号泣した。その頃、ドアをノックするとともに、チャイムが押された。
「ちょっとここ、開けてもらえますか?すみません、警察ですけれども。」
敏夫はすっと立ち上がった。涙もすっと引いて、何かに押されるかのように歩き出した。
「俺もそろそろ行かなきゃ。長居したよ。」
窓を開け、敏夫は14階のベランダから軽く上を見た。空は巻層雲で薄く覆われていたが、それが却って夏の強烈な日差しを遮っていた。セミの声と共に強い閃光のようなものを感じたが、それも一瞬のことで、すぐに静寂に覆われた。地面は生温かく、蟻が俺を避けるかのように通り過ぎて行った。
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toppoi01 at 00:34|PermalinkComments(0)短かった夏 

2015年09月03日

愛しているって言って(6)

ベッドで茂人は悟の寝顔を見ていた。悟は寝息をスースーたてて熟睡している。悟はどちらかというとよく動く。俺がいなければ、ダブルベッドの端から端まで寝返りを打つ。
金髪で一重の色白で・・寝ている顔はかわいいんだけどね、って思ったが、それすらやばいと思ったので目をそらした。おそるおそる見て、熟睡していることを再確認。寝てる、寝てるな。
いつからそうなったのだろうか。付き合い始めた頃は、どちらかというと悟の方が茂人にベタ惚れで、ずっと一緒でずっと腕を組まれ、ずっと見られていた。風呂も一緒、トイレだって、俺が嫌がらなければきっと一緒だっただろう。
やっぱりエッチのときかな。俺らは付き合い始めてからも、エッチはなかなかしなかった。キスで、互いに何か気恥ずかしくなって終わり。いや、童貞じゃなかったよ、もちろん。けれど、純愛に慣れていなかっただけで。だって男同士の「愛」ってどう表現していいか分からないから、手探り。自分たちで、紙粘土でテーマを与えられない何かを作っていくが如く、全てが一からだったから。逆なんだよね。皆、セックスから始まるのが当たり前だったからさ。新鮮で、どれもこれも新しく見えて。視界が急に晴れ渡った、そんな感じがしたよ、あの頃は。
付き合ってから3か月経ったくらいかな。悟とベッドで横になっていたら、俺にしがみついてきたんだ。
「僕とどうしてエッチしないの?」
上目づかいで聞いてきた。
「悟との関係を大切にしたいからさ。」
「それって、エッチすると壊れるの?」
こんなかわいい声してたっけって思ったね。まあ、そんな声も今では懐かしく感じるけれど。
「俺とする?」
悟は、小さくうなずいて、
「シャワーを浴びてくる。」
と、ベッドから一旦出ていった。俺はタバコを吸って、戻ってくるのを待ったよ。悟は腰にバスタオルを巻いた姿で現れた。顔と同じで、大理石のように白く輝いて見えた。
俺、もう我慢できなくて、っていうか、やっぱり壊しちゃいけないからって我慢していたんだ。
もう、一つになったよ。というか、すぐに終わった。俺、早漏だから。。
やっぱり。そういう目で見るよね。悟って、こんな冷たい目をしてたっけ?って目で俺を見つめるんだ。というか、目で俺を責めるんだよ。
だから、エッチすると壊れるって言ったじゃないか。。
悟が、不意に俺のモノの先っちょを狙って、デコピンを思いっきりした。で、不意だったからさ、俺って「痛っ!」って反応じゃなくて、「あん。」って結構高めの声で喘いじゃったんだよね。。
ますます悟の冷たい視線が突き刺さる。顔真っ赤っかだし、モノはギンギンになってるし。
立場が逆転した瞬間だよ。そのときはどうしたか?ずっとデコピンでモノをいたぶられたよ。ずっとね。
悟はネコでも、凶暴で残忍な方のネコだよ。寝てるよな。聞かれたら、きっとどんな目にあわされるか分からないよ。。
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