2019年11月24日

熾天使アブディエル(8)

ドオーン、ドオーンと、遠くから衝撃波のような音にならない音が近づいてきた。普段は顔を出さない門番と「死」が出てくると、朧気ながら黒い影がユラユラと蜃気楼のように現れ始めた。サタンか。まだ姿を見せないうちからこちらに近づいているのが気配で分かる。
「ハハハ、アブディエルよ、様になっているじゃないか。」
サタンはカラダもすっかり黒くなり、漆黒の闇によりも暗いのではないかと思われるほどだ。あんなに美しく羽毛に囲まれた翼は薄くマントのようになってしまっている。天国にいた頃は輝きを発していて眩いばかりであったのに、今では暗闇を引き込んで姿がまるで影を引き連れているかのように、少なくとも常人には見えなくなっている。しかしそれでいてそこからオーラのような妖しい揺らめきをもつ炎がカラダを取り巻いていて輝いても見える。それでいて、目は地獄の業火のように、メラメラと燃え滾って爛々とこちらを見つめている。
「堕ちたものだな、サタンよ。昔のお前とはえらい違いだ。」
「お前は変わらないな、アブディエルよ。」
と、重戦車のような固くて厚い筋肉に覆われた胸を揉みつつ、サタンは蛇のように細く赤く尖り、先が二つに割れた舌で、その厚い胸の下方にある敏感な部分をチロチロっと舐めた。すると、普段は重力に逆らうことなく垂れ下がった太くて長いモノが、徐々にその活力を漲らせ、そして自らがかつて過ごした天空を指し示した。
「くくく、アブディエルよ、お前もあの堕落した人間と同じく、恥と言うものを知ったようだな。」
アブディエルが恥ずかしさのあまり、大理石のように純白なカラダが、まるで乙女のように熟したリンゴのような赤みを帯びていく様子をまざまざと観察していた。天使は元々恥じらいだけでなく、恨みや妬みなどといったものを知らない。これを「知っている」のは堕天使の証であることを、サタンに指摘されたのだから、アブディエルは歯ぎしりをしてその屈辱的な言葉を聞いた。
「お前だ、サタン、この私にそのような忌まわしいことを吹き込んだのは。サタンがあのような騒ぎを起こさずにいれば、私もこのような運命を辿ることはなかったのだ。」
「フフフ、よくしゃべるな、アブディエルよ。お前の恥じらいの部分をよく見よ、たかだかあれだけの刺激であんなに液が滴っているではないか。」

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