2019年08月16日

灰色の空間(7)

そこからの記憶は断片的にしか思い出せない。ずっと拷問を受けていたのかいなかったのか、ただ「自白」、もちろん言わされた「自白」をしたことは確かだ。録画も録音もしっかりされているに違いない。ただ、そこから何日が経って、気が付いてみると俺はソウル郊外の橋の袂でずっと蹲っていた。何時間もそんな感じでボーっとしていたのかもしれない。通りすがりに気にかかった何人かが俺に声をかけたが、俺はまともに答える気力が残っていなかった。時折、自分でもよく分からないが大声を上げて、自分が生きているんだな、ということを自分に実感させた。それからはまた、格子のある建物へと連れていかれた。暴れて抵抗したが、注射のようなもので寝かされた。それからというもの、起きているか起きていないか分からないような生活だ。食事とは言えないようなものが格子の中に入れられて、奇声を不規則に発する者たちに囲まれて、こうして日々を送っている。たまに受ける電気ショックが心地いい。これくらいが俺にはちょうどいいんだ。あれに比べたら、あれ、あれと、ぎゃぁぁぁ!!!
「もう大丈夫、大丈夫よ。ね、ちょっと寝ましょうか、ね。」
「チョン代議士はどうなった?なあ、教えてくれよ。」
「そのうち逢えますよ、さ、寝ましょうね。」
また俺は夢の中へと戻って行った。いや、これが現実なのかもしれないが。

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toppoi01 at 08:30│Comments(0)灰色の空間 

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