2019年06月30日

堕ちるところまで堕ちて(20)

今日は浩輔が先にこのゲイバーに現れた。訳知り顔のママが寄って来た。
「あら、今日太一っちゃん来る日じゃないわよ?待ち合わせ時間確認した方がいいんじゃない?」
口紅のついたタバコを、どこで売っているのか知らないが筋肉質の男がしかめっ面をして腹筋をしている形をした灰皿に、これでもかというくらいに捻付けている。
「いや、違うんです。ちょっと聞きたいことがあって。」
「え、アタシに?」
何だか顔が青ざめて、今にも吐くんじゃないかという顔をしている浩輔を見て、次に何を言い出すのかと不安げに見つめている。
「ママ、カラダ売ったことってありますか?」
思わず、タバコの煙を吐くつもりが真逆に思いっきり吸い込んでしまい、むせた。
「あのさ、これでもアタシ、操は大事に守っているのよ。」
「俺、どうしよう。どうしたらいいんっすかね?」
「はい?」
また、吸い過ぎて短くなったタバコを何とか吸っている。
「え、何が?」
思わず地の男が出てしまい、店内の客がギョッとした目で見ていた。あら嫌だ、という顔をしてから、
「あのさ、男は売れるうちが花。売れなくなって叩き売りするほど惨めなものはないわよ。」
「・・そうですよね。そうか。分かりました。」
糸が吹っ切れたように明るい顔になったが、糸を切ってしまった役のママは、これで良かったのかしらとずっと難しい顔をして、ほぼ吸う部分のなくなったタバコを吸っていた。

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