2019年05月02日

デリバリーB(1)

インターホンを押しドアが開くと、寝癖のついた無精ひげの男が。苫米地篤はamazonの品を毎日のように受け取っているので、もう顔なじみだ。こっちは打ち解けているつもりだけれど、淳平はまるで初めて会ったかのような塩対応。軽いけれど大きな荷物を3つ渡して、次の配達先に向かおうとすると、背後から痺れるような痛みを受け、その場に前のめりに倒れた。
気がつくと、周囲は漆黒の闇に包まれていた。腕の辺りと顔の右側がヒリヒリしていた。原因が思い出せないが、ハッとした。そういや、配達の途中だ。しまった、寝入ってしまったと思って起き上がろうにも手首が何かにくくりつけられていた。すると、向こうから火のついた太い蝋燭を持ってやってきた。状況が掴めた。拉致されたのか。向こうが何か言いかけたが、淳平の方が速かった。
「何時ですか、今。」
えっ、この状況で?
むしろ篤の方が戸惑った。
「配達の途中なんで。15階の苫米地さんですよね?名前も知っていますし、トラックがずっとマンションの前に置いてありますし、それに営業所に報告する時間なんで、しないと営業所から安否確認の連絡が逆にかかってくるんです。それでも大丈夫ですか?」
淳平は口から出任せを言っただけだが、篤は言い返す言葉が見つからなかった。
「明かりつけてもらっていいですか?あと、これも外してください。」
いろいろ考えて完璧だと思われる計画を立てた上で拉致をしたが、そう言い返されるとぐうの音も出なかった。女ならいざ知らず、男を拉致したところで警察に言ったりしないだろうという身勝手な思い込みが無残に打ち砕かれた。
「あの、警察には・・。」
「もちろん、言いませんが。」
淳平の言うとおりに手錠を外した。冷や汗が止め処なく流れてきた。
「1時間後に来ますから。」
「はい?」
またあっけに取られる。
「こっちは住所から何もかも分かっているってことをお忘れなく。じゃ、1時間後に。」
そう言い残して、足早に出て行った。

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toppoi01 at 08:30│Comments(0)デリバリーB 

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