2018年09月22日

耐えてみろ!(20)

宿舎生活というのは窮屈なものだ。絶えず人の視線を気にしなければならない。それも先輩との相部屋なので終始気を遣う。ましてや気難しい陽一郎と同じ部屋などというのは誰だって嫌がる。いくら陽一郎に可愛がられている慎吾であっても、それは努力した結果可愛がられているのであって、それなりに神経を擦り減らしているのだった。隣の部屋の恭太も同じだった。恭太は色黒だが細くて小柄で、丸坊主だったので幼く見えた。寮生活は時間が厳しく、さらに上下関係も絶対だったので、食事や風呂もまずは先輩から順々に済ませ、最後の下級生は掃除や片付けも含めて全て急いでしなければならず、その下級生の間でも平等ではなくて、小柄で純朴な恭太の負担は人一倍多かった。例えば、「恭太、悪いけど俺、急いでてさ、悪い、今日の掃除、代わってくんないか?」と言われれば、人のいい恭太は不平不満も言わずするが、かと言って恭太の番になると、代わってやったはずの奴はそんなことをすっかり忘れているかのように知らないふりをする。それを見た他の奴も同じようにするので、恭太は休む間もないのだった。
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toppoi01 at 08:30│Comments(0)耐えてみろ!Ⅶ 

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