2018年05月06日

ゴーグルマン(3)

ちょっと摩るのはまだ早かったかな、と性急すぎた動きをちょっと後悔したが、数時間後に三上の携帯が鳴り、次週の水曜日の同じ時間に会うことになった。同じ喫茶店で待ち合わせることにした。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
今日は先週と異なり、ちょっと肌寒いせいもあってか、ジーンズに長袖のジャケットを羽織って現れた。
「今日はちょっと撮影をするから。」
「・・自分、でも、そういうのは、何か・・」
撮影OKと言ったのに、ここまで来ておいて何ブーたれてんだ、乙女か、と内心イラついたが、
「撮影といってもね、外で服を着たまま、ちょっと運動してもらったり、インタビューをしたり、まあ、そんな構えなくても大丈夫だから。」
と、ワゴン車に乗り込んだ。5分間、無言で走る。河川敷の脇に車を停めた。
「ちょっとこれに着替えてくれるかな?」
薄手の青いランニングパンツにジャケットを渡す。
「ジャケットの下は着ないで。」
ジャケットは着古されていて、背面には「明治大学ラグビー部」と書いてあった。サイズはちょうどいい感じだったが、ドアを開けるとさすがに寒かった。河川敷の土手を上がると、目の前には江戸川が流れていて、その手前はグラウンドになっていた。
「じゃあ、撮影始めるよ。まず、向こうからダッシュしてきてくれる?」
「次に、腕立て伏せしてみようか。」
「スクワットいい?」
「ストレッチシーンを撮るから、座ってくれる?」
次々に指示をされ、そのとおりにこなした。
「いいよ、いいよ。舌を出して頭をかいてみて。」
「腕を上に上げて、肩のストレッチしようか。」
「ラグビーボール持って、ニコって笑って。」
「いいね、じゃ、親指を立ててグッドって言ってみようか。」
そんなこんなで2時間くらいが経った。
「ちょっとさ、そのジャケットをまくって見せて、そうそう、腹筋をチラッと。」
「このスポーツドリンク飲んでみようか。いいね。もっと、そう、全部飲んで。」
「土手に座って、太陽の方を見てくれる?そうそう、眩しそうにして。」
「この土手駆け上がったりしてみようか。」
「じゃ、土手にまた座ってくれる?ちょっとインタビューシーンを撮るから。」
「全部ゲイビデオなんですか?」
「そうだよ、もちろん。何だと思ったの?」
「いや、なんかおもしろいっすね。」
インタビューと言っても、サークルのことや合宿のこと、彼女のこととかたわいのないことで、それでも20分くらいはしゃべった。
「トイレは大丈夫?」


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toppoi01 at 08:00│Comments(0)ゴーグルマンⅡ 

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