2018年04月27日

終わりの見えないデスマッチB(16)

しかし、こうしてマジマジとシディークを見ていると、どう見ても腕も首も細いし胸も薄く、腹も引き締まってはいるが腹筋だってうっすら割れているだけで、強そうには見えない。むしろ弱そうだ。色黒の顔だからニッて笑うと白い歯が際立って見える。駅近くでインドカレーのチラシを配っているインド系の好青年くらいにしか見えない。俺が不覚にもダウンを奪われたのは冷静さを欠いていたからで、こんな奴にいくらなんでもやられるわけがない、そういう観念が確信に変わると、もう一度練習相手になってくれと頼んだ。そう言いつつ、実来は俺の圧倒的強さを見せつけてやろうという野心で燃え上がっていた。「いいけど、一つ約束してもらっていい?」と、シディークが真剣な面持ちで言う。「僕が1分以内に勝ったら、健のスパーリング相手を続けてくれる?」「え、それはなぜ?」すると、衝撃的な答えが返ってきた。「健が、君を特訓して欲しいって言ってきたんだ。けれど、僕は健が君を甘やかしていると思うんだよね。」「もっとできるのかと思っていたけど、健が手加減していたのかな。」と、堰を切ったかのように挑発的なことを言ってきた。「何言ってんの?マジで。」シディークが立ち上がったので、俺も相手の目を見ながら立ち上がった。「次は殺すぞ。」と、後ろを振り返りもせずにリングに上がったが、1分ももたなかった。顎にきれいに入って軽い脳震盪を起こし、リングに崩れ落ちた。大の字で倒れる俺を見つめるシディーク。ちょっと笑っていたので飛びかかっていきたいが、カラダが思うように動かない。シディークはコーナーで悠然とカラダを預けて俺を見ている。意識がはっきり戻ったところでもう一度シディークに殴りかかる。しかしすんでの所でシディークの前蹴りが俺の鳩尾にヒットした。たまらず俺はその場にしゃがみ込んだ。シディークはロープに両腕を預けたまま動かなかった。避けさえもしなかったのに。「ま、まだ・・。」声を絞り出すのがやっとで、何とか立ち上がった。
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