2018年03月18日

終わりの見えないデスマッチB(9)

そんなことを続けて6ヶ月が経った。実来の顔はどちらかというとちょっとあどけなさの残る愛嬌のある顔だったのだが、ロードワークのおかげで引き締まって、日焼けで黒くなり、なかなか精悍な顔立ちになった。カラダつきもむしろほっそりしてきて、ボクシング体型になってきた。金髪で金のネックレスをした健が、「ちょっと上がってみるか?」と実来を誘った。その頃にはリングというものがいかに神聖なものであるか、実来にも経験で分かってきていたので、上がるだけでも緊張と感動で、実は泣きそうだった。「打ってみろ。」健が自分の腹を指して言う。「自分がですか?」健は軽くうなずいて、来いと手振りで示す。右脇腹に打ち込んだら、同時に健は実来の左頬を思いっきり殴った。その勢いでカラダがバランスを失って吹っ飛んだくらい強かった。「おい、それで本気か?本気で来ないと殺すぞ。」今まで優しかった顔しか見せなかった健の凄んだ声に正直驚きを隠せなかった。健は唖然として立ち上げれずにいる実来に蹴りを入れ、「来い。」と、さっきと同じく仁王立ちになって言う。殴り掛かるが、やはり蹴られ殴られ、リングに叩き付けられる。腹を蹴られて動けなくなった実来の髪を掴んで、無理矢理立たせ、「いいか、実来。俺たちは誰も助けてくれる奴がいないんだ。分かるか?誰一人として手を差し伸べてくれる奴なんていないんだ。自分の身は自分で守れ。それしか生き抜く道はないんだからな。」と説いた。実来は涙がこらえきれず、ワンワンと声をあげて泣いた。こんなに泣いたのは、朧気に記憶の片隅にある母親と死に別れたとき以来な気がした。

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