2017年12月07日

スプラッシュ(8)

またデブ女が率先して言い出した。おそるおそる手を出して、二つの深紅の爪でつまむ。「キャーキャー。」我慢しきれず、浩輔は足でその巨漢の女の肩当たりを蹴った。しゃがんでいた女は重心を崩して後ろにすっ転んだ。ぬかるんだ水たまりに尻をついて、無様に転がり、泥だらけになった。一瞬の出来事で警戒が緩んだので、浩輔はその隙に羽交い締めを解いて走り出そうとしたが、半分脱げたスウェットに足を取られて、前のめりに転んでしまった。「やだー、どうしよ。落ちないよ、これ。こんなんじゃ帰れない。最悪。」とさっきの威勢の良さは消えて半べそをかいている。またさっきのように羽交い締めにされるが、その間に口髭の男がそのデブをなぐさめている。「エミっち、転んだって言えばいいじゃん。」「やだ、今日たっ君が行くって言うからキメてきたのに、こんなんじゃ無理。」「平気だよ、かわいいよ。」「無理だもん、もう無理なんだもん。」どうやらこの二人は付き合っているらしく、メソメソ嘘泣きしているデブ女に慰めの言葉を一通りかけると、一心不乱に浩輔の方に向かってきた。ずっと浩輔を睨んだまま、もう顔がほぼくっつくのではないかと言うくらいまで近づくと同時に、股間に突き刺さるようなビリッとした刺激が走り、思わず「ぐわっ」と声を出した。口髭の膝蹴りが、モロに浩輔の股間に食い込んだ。「痛えか、痛えだろ。テメエ、こんなんじゃ済まさねえぞ。」と、早口で言い立てると連続して股間に蹴りを食らい、その度にズキッとする痺れるような痛みが脳天まで突き抜けていく感じだった。
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toppoi01 at 08:00│Comments(0)スプラッシュ 

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