2017年08月14日
耐えてみろ!(14)
店で会計を済ませた。飲みかけの生ビール以外は全て片されていて、店員も立ってこちらを見つめていたんで、伝票を持って、そして荷物を持って出ようとしたが見当たらなかった。レジに行くと、ドアのところで俺のバッグを持っている男がこちらを見ていた。ああ、さっきの奴らか。まあいいや。外ではもう1人がこっちを見てニヤニヤして立っていた。勝手に歩き出したので、俺も付いて行った。それにしても、さっきいざこざを起こしたのに後ろ向きで歩くなんて無用心だ。バッグだって引ったくってまた走り去ることだってできるんだが、まあ何を怒っていたかすら朧気で、早く済ませたかったので言うとおりにした。
公園の時計があるポールのところに、男が睨んでいた。一見分からなかったが、壊れたメガネを持っていたので殴った相手だと分かった。
「これ、見ろ!」
フレームが曲がってレンズはなくなっている。踏まれたのか?
「おい、これ、どうする?」
弁償の話か。金で解決した方が楽だ。
「3万円払え!!」
冷静に考えれば、手持ちもあったし、メガネを新しく買ったことと殴ったことの侘び代として、3万円は妥当な線だったと思うが、3万円が唐突だったことと、殴って3万円だったら殴られたっていいよなと、貧乏根性が働いてしまった。
「3万円はなくないか?」
「何だと?」「おい、ふざけんなよ。」「ちょづきやがって。」
すると、俺のバッグがなぜか俺に投げられた。それを受け取ると、その殴った相手の持っている赤いガラケーに目がいった。俺のだ、って思った途端、そいつがそれを真っ二つに圧し折って、それも投げ返した。
あまりの衝撃にあっけに取られていると、急にそいつが駆け寄ってきて、俺の股間目掛けて正面から蹴りを喰らわせた。
「うぐっ。」
両腕でバッグや携帯を持っていたおかげでうまく防御できず、モロに喰らってうずくまった。
「バーカ。」「マッチョ頭悪いぞ。」
笑い声が遠ざかっていく中、股間のジワっと陰湿に襲ってくる痛みと、買って数週間しかたっていない携帯を破壊された喪失感で、ただ公園の一角で、しばらく呆然としていた。
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toppoi01 at 08:00│Comments(0)│耐えてみろ!Ⅴ