2017年08月13日
耐えてみろ!(13)
「おい、誰が田舎侍なんだよ。誰だ。誰が言ったか言え。」
またゲラゲラ笑いが沸き起こった。
「違う違う、田舎マッチョなのに、侍になってる。訳わかんねーじゃん。」
「お前が田舎マッチョとか言い出すからそうなるんだろ?」
「マジ止めろって、腹痛え。」
陽一郎は怒りが押さえ切れなかった。人知れぬところでケリをつけようと思ったが、我慢がならない。振り向きざまにバカ笑いをしている黒メガネの顔を思いっきり殴った。メガネが先に飛び、仰け反るようにしてバランスを崩して倒れた。そして、一心不乱に飲み屋街を走り抜けた。途中、なぜ俺が逃げなくちゃならないんだという疑念が生じ、速度を緩めた。後ろを見たが、追ってくるという感じでもなかった。殴った相手を介抱しているんだろう。それにしても、見ず知らずの相手を殴ったりしちゃいけないよな。酒を飲んだ勢いとはいえ、日頃からスポーツマンシップと言っている俺が、それじゃいけないわ。走ったからか酒が急に回ったようで、ちょっとふらついた。そっか、それより金を払わないと。荷物も置いたままだ。またさっきの道を歩いて戻っていった。
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toppoi01 at 08:00│Comments(0)│耐えてみろ!Ⅴ