2017年08月12日

耐えてみろ!(12)

慎吾が帰ってからも、誰に聞かすわけでもなく、ただつぶやくようにして愚痴、そして責任転嫁は続いた。怒られたことに対する反省の言葉は全く出なかった。自己を正当化し、自分は悪くないと言い聞かせることで自分を慰めた。もちろん、本当はそれを慎吾に言ってほしかったのであるが。
後ろの客は逆に楽しく騒いでいた。くだらない話で盛り上がり、しょうもないことで腹を抱えて笑い転げていた。
「ギャハハハ。」
陽一郎の真後ろの客が、笑い転げて不注意で端に置いてあったジョッキを手で払ってしまい、床に落とした。グラスは割れ、炭酸の液体が泡を吹いて周囲に撒き散らされた。それは床に置いてあった陽一郎のバッグを濡らした。
「あーあ、何やってんだよぉ!」
他の二人は、割ったグラスを見て、ゲラゲラと笑い転げた。
「おい、何してんだ、テメー。」
陽一郎は、我慢できずに後ろを振り返って言った。
「すみません、今片付けますから。」
そう言ってきたのは店員であって、割った張本人と他の二人はただ、陽一郎の顔を口を半開きにして見ていた。
「やべえ、田舎臭いマッチョに怒られちった。」
「田舎臭いとか言うなよ、聞こえるだろ、ウケる。」
途端、またゲラゲラと笑い転げる。
「だって坊主はないだろ、坊主って。」
途中からゲラゲラ笑いが止まらなくなって、ずっと笑い転げている。
陽一郎はもうたまらずに、「表へ出ろ!」というと、ガラスの引き戸を開けて店を出た。
「ほらぁ、田舎マッチョがいきり立ったじゃん。」
「マジかよ、表出ろって、熱血漫画見てぇ。」
3人は、笑いながら面白そうに陽一郎を追って外に出て行った。

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toppoi01 at 08:00│Comments(0)耐えてみろ!Ⅴ 

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