2017年08月11日
耐えてみろ!(11)
「生、もう一杯。」
ツレの後輩が店を出て30分、陽一郎はまだカウンターにいた。
「伊藤さん、明日朝一で練習がありますから、ほどほどに。」
「何だ、お前、俺に説教か?偉そうだな。」
「いえ、ただ、・・」
その後輩の代役に、陽一郎に急に呼び出され、延々陽一郎の愚痴を聞かされて、正直帰りたかったのが本音だった。
愚痴ならいいが、酒が進むにつれ、説教じみてきた。
ただ、慎吾に言わせてみれば、それは陽一郎がコーチに言われたセリフをそのままオウム返しに言っているだけだったから、陽一郎には全く響かない言葉だった。
その発した言葉はそのままブーメランのように曲線を描いて自分に突き刺さる。自己嫌悪に陥り、愚痴り、責任転嫁をして、それが輪唱のように重なり合って繰り返されて、終わる見通しが立たなかった。・・慎吾は、電話で呼び出されたのを機に、店を出た。もちろん、丁重に、穏便に済まそうと言葉を選んで。
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toppoi01 at 08:00│Comments(0)│耐えてみろ!Ⅴ