2017年06月18日

終わりの見えないデスマッチ(35)

憂鬱な気分でまた試合を迎えた。ただ、チラシを見て、そんな気分は吹き飛んだ。智哉、俺の相手が智哉だ。髪型がオールバックになっていて精悍な顔立ちになったが・・あれから5か月、久しぶりに見る智哉に全身に電気が走ったかのような刺激が走った。どこにいるのだろうか、控室を見てもその附近にも姿は見えない。しかし、リングの方を見ると、その前列でサングラスをかけた男と談笑している黒いTシャツを着た男が、まさしく智哉だった。相手は黒いスーツを着ていて、リクライニングされた椅子席、VIP席と呼ばれているエリアに座っている。試合が始まったが、智哉と黒スーツの男が何をしゃべっているのかが気になって、全然試合を見ていなかった。オッズは7.1対1で俺が勝つ予想になっている。デビュー戦だし、俺の方が実績があるし、当然といえば当然だ。タバコを吸うが、緊張でタバコを階下に落としてしまった。手が知らずして震えていた。対戦慣れしている相手であるし、場数を踏んでいるのに、これほど緊張するのはデビュー戦以来かもしれない、そう思うとお互いがデビュー戦のようなものか、しかし、智哉は終始何か話しかけていて、試合がこれからあるなんていう様子を感じさせなかった。気を落ち着かせようと外に出た。やはり港から見る海は今日も変わらず黒く、そして月明かりに照らされた波の尖端部だけが白く輝き揺らめいていた。

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