2017年06月17日

終わりの見えないデスマッチ(34)

智哉とは最近ご無沙汰だ。声をかけるけれど、高校を辞めてからバイトをしているが、そっちが忙しいんだとか。ジムのサンドバック相手に蹴りを打ち込む。ズバッと重い音が響き、脛にその振動が伝わるが、めり込み方がやはり人とは違うし、その蹴ったリアクションも分からない。無機質な相手に、規則的に打ち込んでいく。人がサンドバックのようにいつも同じところにいるわけではないし、ずっと不死身で倒れないなんてこともない。何をしても、ずっとそこに何もなかったかのように存在するだけだ。智哉は俺に飽きたのか、と思うと、不意に涙が頬を伝った。それを紛らすかのように、ほぼ垂直まで傾かせた腹筋台にぶら下がる。シャツがめくれて研ぎ澄まされたシックスパックが露わになった。周囲の目が弘一に注がれるが、何事もないかのように、また黙々とメニューをこなす。ただ、何か遣り甲斐のようなものを急に失った、喪失感に襲われていた。脳裏では、黒々として水平線のかなたまでずっと広がった底知れない海の情景を思い浮かべていた。果てしなく拡がり、とらえどころのなく光さえも届かないような深い闇のような海を。

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