相手は拳同士を腹のあたりで打ち合い、気合を入れているようだ。大胸筋が連動して波打っている。余計エキサイトさせたようだ。窮鼠猫を噛むというが、手負いの熊だったらどれほど危険なのだろうか。普段だったら勝ち急いでいたが、心の余裕というよりはぽっかり空いた空虚さが判断ミスを犯し、相手に休息とチャンスを与えたのだ。会場は野次の嵐だ。試合を観に来たのではなく、皆、賭けをしに来たのだから。しかし、相手はやはり平静さを失っていた。繰り出す技が単調で、雑で正確さを欠いていた。獲物をしとめようとする気持ちが先走って、一発逆転のラッキーを狙っているかのようだったので、俺は足を使ってそれをかわしていった。それに、急所を守ろうとして自然と腰が引けていた。顔にフックが面白いように当たる。次第に動きも鈍くなっていく。目が腫れてきたから、視界が悪くなってきたこともあるだろう。筋肉野郎が自分でよろけて倒れたら、急に手を股間に持っていく。急所攻撃がよっぽど怖いらしい。狙い甲斐がないや、そんな小さいの。俺は薄笑いを浮かべつつ顔をサッカーキックした。意識がなくなったのか、それっきり筋肉野郎はほぼ動かず、10秒が経過して勝利を得た。

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