2017年05月27日

終わりの見えないデスマッチ(15)

眉がほとんどなくて顎がしゃくれた男は、またさっきと同じことを言うと、同時にかがんで思いっきりその毛むくじゃらな股間へと正拳突きした。「グッ。」そして次に控えていたシンナーのせいで前歯が数本欠けた奴が、すぐにエナメルの白い靴を振り上げて股間を蹴り上げる。「あっつー。」定岡は甲高い声で痛みをこらえる。「止めて、ここだけは止めてくれ。お願いだ。」涙声でそう喚く。「何だよ、お前それでも男かよ。」「根性見せろや。」3発目もやはり股間を狙って蹴り上げられた。とっさに腰をクッと引いたが、逆にモロに入ったようだ。「あー、汚ねえ!!!」羽交い絞めをしていたリーゼントが定岡を振り解く。定岡は小便をジャバジャバと放出し出し、そして頭を地面につけて土下座して「ごめんなさい、ごめんなさい、許してください。」そう、泣きながら叫ぶように言った。さすがに見ていて、情けない思いがした。いくらなんでもこんなすぐに根を上げるのか。この程度の奴にいろいろ指導されていたのかと思うと、何やらこっちも悔しかった。「何だよ、コイツつまんねーわ。相手すんのがだせーよ。もう、行こうぜ。」ケツを出したまま、自分の撒いた小便の水溜りの上で、頭を濡らして土下座する定岡に愛想が尽きたのか、4人は揃って築山の向こうへと消えていった。見えなくなっても、なお定岡は泣き喚いて土下座を続けていた。
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