18時、まだ外は明るい。店のドアの前にセミが死んでいた。 「もう、セミ、嫌いなんだよな。」 蹴ると、セミが余力を振り絞って鈍い声を出しながらUターンしてきた。明はセミが入らないように気をつけながら、店に入った。 明がここ、東上野のゲイバーに勤め出したのは10日前のことだ。ゲイバーでは「明美」という名で働いていたが、別にニューハーフでも女装しているわけでもなんでもない。 よく、友達とかには風間俊介に似ていると言われてきたが、ここ上野ではV6の三宅健に似ていると、客の何人かから言われた。そろそろ小じわが出てきたからかな、と自己分析している。 明は既に31歳、店のママ、幸子(本当の名前は智幸)より5つも上だ。 元々は明はこのゲイバー、「幸」の常連客だった。上野という土地柄、客層は若くても40代で、もうヨボヨボのおじいちゃんのような客まで来るのだが、その中でも明は目立って若かった。31とはいえ、見た目は20代、どちらかというと、ママよりも年下にさえ見えた。
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