きっかけはよくある痴話喧嘩だよ。実に些細なね。だってさ、セクフレのうちの一人、和明と昵懇の仲になっちゃってさ。カラダだけじゃなくて心もつながりたいって奴で。でも、それは仕方ないことじゃないか?俺の心はぽっかり空洞が空いているんだぜ?ダイソンの扇風機みたいな感じで。穴が空いていたら埋めようとするだろ?それがたまたま和明だっただけのことさ。
けど、俺も年甲斐もなくのめり込んじゃってさ、アパートを家の近くに、和明のために借りたんだ。違うか、俺のためにだな。最初は、和明は俺が会いたいときに会えるようにって、だから俺の名義で借りたんだよ。身勝手な男と俺を責めるのは早計だぜ?俺には家族があるんだから、やっぱり家庭を守る義務があるだろ。家長なんだぜ?そりゃそうだろ。
和明は、ずっと俺を待っているんだ。メールは俺が一方的に入れるだけ。「これから行く。」ってメール打つと、必ず和明はいるんだよ。ビールとちょっとしたつまみも用意してあってさ。それも手造りの。うちの妻なんて、俺の好みなんて聞きもしないで、ただ決まった時間に料理本に載っている料理をこしらえるだけさ。よくできた妻だろ?俺が愛情ないって分かってて、それでも料理を作るんだからさ。子どもを産んでおいて良かったよ。
和明は俺の分身みたいなんだ。分身という表現は変だな。凸と凹というか、うまくかみ合うんだよ。お互いがお互いを必要としているというかな。キスだけでもそれが分かる。風にさらわれるような、抗えないキス。けれど、病み付きになるキス。女ではとてもそんなことはできないよ。体温を確認しあうような、相手の鼓動を共有しあうような、そんなキス。キスだけでは終わらないけれど、キスだけでも俺のカラダはクラゲのようにグニャグニャしちゃうんだ。異次元空間に陥ったように、平衡感覚が取れなくなって、重力っていうものの存在を忘れてしまうんだよ。

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