2017年06月25日

終わりの見えないデスマッチ(41)

正気に徐々に戻っていくと、目の前に智哉の顔があった。とても冷静で乾いた目で俺を見つめていた。「これで最後だ、弘さん、参ったと言えよ。」腫れて一回りも二回りも大きくなった玉を優しく手で包み、揉み解し、まるでさっきの行為が嘘のように、打って変わっていたわっているかのような態度だった。そして、グッと近づいて、真剣な目で諭すように言った。「本当に最後だ、参ったと言え。」そんなに俺に勝ちたいのか。けれど、俺のプライドが許さなかった。「言わねえよ。」すると、智哉は俺をロープから荒々しく外し、そして俺の両足を掴んで、うぉぉぉと雄叫びをあげ、そして全体重をかけてかかとから股間めがけて振り下ろした。スローモーションでも見るかのようにゆっくりと金的へと振り下ろされる瞬間まで一コマ一コマが明確に見えた。それから、いきなりテレビのコンセントを抜いたかのように目の前が一瞬ピカッと強い光で煌めいた。リング上でカラダが、油の中に生きた蝦を投入したかのように、一瞬跳ね上がった。そして目の中で火花が飛び散り落ちた後、プツッと記憶が途切れた。

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2017年06月24日

終わりの見えないデスマッチ(40)

智哉は真剣な眼差しで弘一の顔を見つめ、一呼吸おいてから、「いくぞ。」と念を押すように言い、何かに取り憑かれたかのように顔を紅潮させて目を見開いて歯を食いしばり、万力のように徐々に手に力を込めていった。その力は半端ではなかった。「ギヤァァァァァ!!!」俺は生まれて初めて、腹の奥底から雄叫びのような声を出した。意識的に出しているのではなく、本能から勝手に声が出ていた。智哉からは今までも急所への攻撃を喰らったことはあったが、こんなに長時間にわたり苛まれたことはなかった。「ガアァァァアア!!!」体中の血の気が引いて、全身に悪寒が走った。全身の筋肉という筋肉がその痛みに抗うかのように脈動していた。汗だけが、その痛みの元凶の方向へと伝っていった。全く逃げ場のない俺の玉は、防御力ゼロの状態で、ただ智哉の押しつぶさんばかりの握力に辛抱強く耐えるだけだった。ケツから生きながら鋭い刃で串刺しにされたかのような、猛烈な痛みが全身を稲妻のように襲った。「ヒヤァァァァ!!!」どれくらいの時が経ったか、天井を見て目を見開いて口を開け、ヨダレを垂らしたまま、もう声が出なくなっていた。体中が痙攣をおこし、汗は脂汗のような粘着質なものに変わり、噴出してカラダをコーティングした。大理石のような純白なカラダだったが、全身がうっすら紅潮し、反面先ほど執拗に責められた腹だけが特に、隕石が次から次へとぶつかってクレーターを作ったかのように、まだら模様の青緑色に変色していた。

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2017年06月23日

終わりの見えないデスマッチ(39)

年下なのにぞんざいな口の利き方だ。ただ、声を出そうとしても腹に受けたダメージでなかなか口に出てこない。さすがに鋼のように鍛えた腹筋を以てしても、こんなにも一つ一つが重いパンチを喰らうのは堪えた。「お前、誰に口聞いてんだ?言う訳ないだろ?」息を整えて何とか振り絞るように言うと、「後悔するぞ。」智哉は、そう言い放ち、その後ろにふてぶてしく垂れ下がった2つの玉を無慈悲に握りしめた。「参ったと言え。」これから行われる行為が確実に効果的に行われる準備をするかのように、二つの玉を逃がさないよう、その小さな手の平では持て余し気味のそれの位置を確かめている。この先のことを考え、恐怖で呼吸がまた荒くなってきた。あまりにも救いようがなく絶望的な状況だが、智哉の目を見据えて言った。「いいから、やれよ。」智哉は、弘一の悲壮なる決意を聞くと、軽く微笑んだ。

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2017年06月22日

終わりの見えないデスマッチ(38)

しばらくして何とか目の焦点が合い始めてきた。リングの端で俺は寄りかかっていた。介抱されているのかと思ったが、違う、ロープで俺の腕が引っかけられているのだった。そして、目の前には智哉が立っていた。ダウンは取られていなかったようだ。智哉の顔がちょっと笑ったように見えた。途端、急に腹を抉るような痛みがして夢見心地から現実に引き戻された。鍛え抜かれているとはいえ、弛緩した腹への一撃は堪えた。そして、俺をサンドバックのように、智哉は腹に拳を打ち付ける。その一つ一つが俺の腹に楔のようにめり込み、波動状の衝撃が湿っぽく緩慢に、しかも休息する間もなく次々と襲ってくる。足が思うように動かないためにロープから腕を外せない。ロープにもたれかかり、一つ一つが全て力のこもったパンチを腹で受けた。俺も歯を食いしばってこらえるが、そろそろ限界だ。足が痙攣したかのようにガクガク小刻みに震え出した。すると、智哉は俺のその無防備に垂れ下がり揺れ動くバカでかいウインナーのようなモノを握り、乱雑に扱いて、若干大きめの声で言った。「おい、どうだ?弘さん、参ったといえば許すぜ。」

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2017年06月21日

終わりの見えないデスマッチ(37)

試合開始のコングがなると、智哉は軽快なステップでこっちに向かってきて、積極的に回し蹴りやフックを繰り出してくる。もちろん全然届かないが、距離を取るためでもあるし、デモストレーションの意味もあるのだろう。智哉の回し蹴りは初めて見たが、かなり速いし安定している。しかし、俺の間合いに踏み込まなければ当たらないことくらいは分かっているだろう。俺も応えて、蹴りを入れていく。ハイキックは踏み込まれる怖れが高いから、ミドルで様子を見る。ただ、どれも腕でブロックされている。右でフックを入れると避けずに踏み込んできた。やはり腕でガードする。ボクシングの技術のようだ。前蹴りで距離を取り、もう一度左フックを入れても、やはり腕でガード。カラダの軸も安定していて倒れない。智哉がずっと俺の垂れ下がるモノを見ていることが分かっている。金的のチャンスを虎視眈々と狙っているのだ。また意味もなく蹴りを放つ。俺から踏み込んで智哉の顔面を狙ったが、ガードされて、同時に智哉のストレートが俺の腹に当たる。中ぐらいの石が腹にめり込んだような感覚だ。距離を置いて蹴りを放ったが、若干バランスを崩したところを智哉の拳が俺の右脇腹にヒットする。そして、俺が渾身の力で顔を狙っていったところを避けられて、顎の辺りにアッパーを喰らい、天井のまばゆいばかりの灯りを見た後、フラッシュのように瞬いて、視界が揺らいだなと思うと足から崩れ落ちた。目眩でしばらく立てなかったが、その間に腕を抱えられてリングを引きずられていった。

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2017年06月20日

雑記帳(2017/06/20)

「終わりの見えないデスマッチ」も、ようやく終わりが近づきましたね。一応、終わったと言いつつ書き足してます。なんかね、書き急いで雑なところも目立つので。他の話もそうですけどね。説明が多いとまどろっこしいっていうのもあるんですけど、この辺はメリハリをつけているつもりなんですね。背景としての説明は結構前からしておこうと思って。の割に、最初の頃はストーリーの行方が定まっていないから、結局微調整をする羽目になるんですが。あと、登場人物が他の話と被って出てくることについて、別にスピンオフとか勿体ないからとかで出しているわけではないです。ゲイの世界は狭いんだということを暗に言いたいんですけどね。パラレルワールドのようで実は絡み合ったりくっついたりしてつながっているんだと。これ以降は短編小説が続きます。

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toppoi01 at 00:56|PermalinkComments(0)雑記帳 

2017年06月19日

終わりの見えないデスマッチ(36)

携帯でそろそろということを知らされ、ロッカールームで服を脱いだ。鏡を見ると、この前のマッチョ男と試合で受けた左腕の上腕二頭筋から肩にかけた箇所が青く内出血のように痣になっていた。そんな痛みも今まで感じなかったのに。そういえば、左腕を上に持ち上げる動作に最近力が入らない。肩から上に上げようとすると違和感がある。カラダのパーツが知らず知らずに悲鳴を上げている。考えてみれば、いろいろ負担をかけるようなことをしてきた。いろいろガタが来ているのかもしれない。智哉は一向に現れないと思っていたら、リング上に既にいた。VIP席から上がったようだ。吸い寄せられるように俺もそこへ向かった。コングが鳴る。こうしてギャラリーがいる前で広いリングで対戦するのはもちろん初めてだが、智哉の成長をずっと見守ってきたのは俺だ、俺が智哉の弱点を一番よく知っている。実践は俺の方がよっぽど積んでいる。ただ、俺は今までリング上で金的を喰らったことは殆どない。長いリーチと懐の深さを活かしていることと、俺のモノは撒餌のようなもので、金的狙いに来た奴はだいたい膝蹴りか右フックを喰らうことになる。自分の急所くらい守れないようではファイターとは言えない。ただ、智哉はそれをすり抜けて狙ってくる。俺に勝つには金的しかないだろうから、そこだけは注意していなければならない。
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2017年06月18日

終わりの見えないデスマッチ(35)

憂鬱な気分でまた試合を迎えた。ただ、チラシを見て、そんな気分は吹き飛んだ。智哉、俺の相手が智哉だ。髪型がオールバックになっていて精悍な顔立ちになったが・・あれから5か月、久しぶりに見る智哉に全身に電気が走ったかのような刺激が走った。どこにいるのだろうか、控室を見てもその附近にも姿は見えない。しかし、リングの方を見ると、その前列でサングラスをかけた男と談笑している黒いTシャツを着た男が、まさしく智哉だった。相手は黒いスーツを着ていて、リクライニングされた椅子席、VIP席と呼ばれているエリアに座っている。試合が始まったが、智哉と黒スーツの男が何をしゃべっているのかが気になって、全然試合を見ていなかった。オッズは7.1対1で俺が勝つ予想になっている。デビュー戦だし、俺の方が実績があるし、当然といえば当然だ。タバコを吸うが、緊張でタバコを階下に落としてしまった。手が知らずして震えていた。対戦慣れしている相手であるし、場数を踏んでいるのに、これほど緊張するのはデビュー戦以来かもしれない、そう思うとお互いがデビュー戦のようなものか、しかし、智哉は終始何か話しかけていて、試合がこれからあるなんていう様子を感じさせなかった。気を落ち着かせようと外に出た。やはり港から見る海は今日も変わらず黒く、そして月明かりに照らされた波の尖端部だけが白く輝き揺らめいていた。

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2017年06月17日

終わりの見えないデスマッチ(34)

智哉とは最近ご無沙汰だ。声をかけるけれど、高校を辞めてからバイトをしているが、そっちが忙しいんだとか。ジムのサンドバック相手に蹴りを打ち込む。ズバッと重い音が響き、脛にその振動が伝わるが、めり込み方がやはり人とは違うし、その蹴ったリアクションも分からない。無機質な相手に、規則的に打ち込んでいく。人がサンドバックのようにいつも同じところにいるわけではないし、ずっと不死身で倒れないなんてこともない。何をしても、ずっとそこに何もなかったかのように存在するだけだ。智哉は俺に飽きたのか、と思うと、不意に涙が頬を伝った。それを紛らすかのように、ほぼ垂直まで傾かせた腹筋台にぶら下がる。シャツがめくれて研ぎ澄まされたシックスパックが露わになった。周囲の目が弘一に注がれるが、何事もないかのように、また黙々とメニューをこなす。ただ、何か遣り甲斐のようなものを急に失った、喪失感に襲われていた。脳裏では、黒々として水平線のかなたまでずっと広がった底知れない海の情景を思い浮かべていた。果てしなく拡がり、とらえどころのなく光さえも届かないような深い闇のような海を。

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2017年06月16日

終わりの見えないデスマッチ(33)

相手は拳同士を腹のあたりで打ち合い、気合を入れているようだ。大胸筋が連動して波打っている。余計エキサイトさせたようだ。窮鼠猫を噛むというが、手負いの熊だったらどれほど危険なのだろうか。普段だったら勝ち急いでいたが、心の余裕というよりはぽっかり空いた空虚さが判断ミスを犯し、相手に休息とチャンスを与えたのだ。会場は野次の嵐だ。試合を観に来たのではなく、皆、賭けをしに来たのだから。しかし、相手はやはり平静さを失っていた。繰り出す技が単調で、雑で正確さを欠いていた。獲物をしとめようとする気持ちが先走って、一発逆転のラッキーを狙っているかのようだったので、俺は足を使ってそれをかわしていった。それに、急所を守ろうとして自然と腰が引けていた。顔にフックが面白いように当たる。次第に動きも鈍くなっていく。目が腫れてきたから、視界が悪くなってきたこともあるだろう。筋肉野郎が自分でよろけて倒れたら、急に手を股間に持っていく。急所攻撃がよっぽど怖いらしい。狙い甲斐がないや、そんな小さいの。俺は薄笑いを浮かべつつ顔をサッカーキックした。意識がなくなったのか、それっきり筋肉野郎はほぼ動かず、10秒が経過して勝利を得た。

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2017年06月15日

終わりの見えないデスマッチ(32)

「うぐぅぅぅっ。」筋肉で身を固めたようなタイプの男は前にも対戦したことがあるが、大体が見事な筋肉に反比例してお粗末様なモノを、ぶら下げていると言うよりも付けているとでも言った方が適切かもしれない。筋肉をまとっている男は頭が悪いというのは俗説かもしれないが、モノが小さいと言うのは栄養摂取が筋肉基準で考えられているからあながち間違いのではないのかもしれない。ただ、大きかろうが小さかろうが関係なく、効果は絶大のようだ。勢い余って仰向けに倒れていったところを、その流れで膝に全体重をかけてそのまま落とし、更にその小さな股間を打ちのめした。「きゃぁぁぁ。」と、女の金切り声のようなみっともなく甲高い悲鳴を上げた。血まみれの口を大きく開けて、目は上方を剥いて泡でも噴くのかというような感じで、酸欠のフナのように口をパクパクさせている。だから何のための筋肉なんだよって呆れてちょっと藁けてきた。面白いので、コーナーに戻って回復を待ってみることにした。奴はカラダを起こして、肩を激しく上下させて呼吸を整えていた。鼻に指を当てて、鼻血の塊を出す。その辺りがどうも場慣れしている印象を受けた。

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2017年06月14日

終わりの見えないデスマッチ(31)

相手は来いと手招きをしている。手馴れた感じだ。相手をしてやるぞといわんばかりの挑発。蹴りで腿あたりを蹴り、様子を窺う。全く効いていない。でも、長期戦は不利だろうな。向こうが右のパンチを繰り出してきたのと同時に、コンビネーションで蹴りを放った。リーチの長い俺の方が一瞬速かった。腕で防いだけれど、腕の筋肉が押しつぶされる衝撃を受けた。こんな化け物のような腕をしたパンチなど喰らったら、顎の骨が砕けてしまうかと思ったが、こういう場で試合したことがなかったのだろう、俺の蹴りは急所に的確に入っていた。こんなこれ以上筋肉が発達しようもないくらい鍛え上げたマッチョマンでも、金的を喰らえば猫のように大人しくなるのだから面白いもんだ。両手で急所を押さえたまま屈み込んでしまい、吐き気を催しているようで口をつぼめていた。一瞬で繊維を喪失した相手のハードジェルで固めた髪を掴み、膝で顔を何回も何回も蹴っていく。歯に当たって膝が痛むが、それに耐えつつ打ち込んだ。低めの鼻から出血し出し、弘一の膝を汚した。鼻血を抑えようとして手が鼻へといったところで、またも股間に蹴りを食らわす。

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2017年06月13日

終わりの見えないデスマッチ(30)

今日の試合はまさしく人間と言うよりはゴリラでも相手をしているかのような、ひどい組み合わせだった。プロとは言わないが、レスラーのように筋肉で覆い尽くされたカラダで、体重にすれば俺の1.5倍はあるのではないかと思われる男だった。オッズもさすがに今までにないくらいな開きになった。俺はどこか頭が朧気というか、何かガラスの破片が脳の深くに刺さったような、妙な感覚だった。試合に勝ちたいといった欲がなかった。むしろ他の人が試合をしているのを遠くで見ているかのような、客観的というか他人事のような感じで試合に臨んだ。試合が始まったが、相手には余裕がありありと感じられた。どんな衝撃も吸収してしまうだろう胸の厚み、俺の脚よりも太いと思われる胸、腹も筋肉でプロテクトされているようにどの部分も隙間なく囲われている感じだった。首から肩にかけても、こんなところまで鍛えられるのかと言うくらい筋肉が付いていて、足も棍棒なのかと言うくらいの膨れぶりだ。一撃を喰らえば致命傷なのだろうし、明らかに俺の攻撃を待っていた。掴まれても終わりだ。
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2017年06月12日

終わりの見えないデスマッチ(29)

また、智哉とスパーリングだ。日に日に智哉は、目の奥に獣が潜んでいると言うか、凄みを帯びてきた。カラダもあのスポーツをやっていて自然とついた筋肉から、脂肪を削ぎ落として筋量がそこから染み上がってきたかのような、俺のカラダと同じくらいの体脂肪量でありながら、胸の谷間の部分から腹にかけて深く刻まれる溝が顕著で、俺と似ていて否なるものを見にまとってきた。最初の頃は、かかってくる智哉を横に転がしたり、跳ね飛ばしたり、力の差が歴然として子供を相手にしているような感じだったのが、今では力は互角かもしれないがスピードはついていけなくなった。そして、寸止めをするようになったし、勢い余って当たってしまったら「ごめんなさい。」と逆に言うようになった。手加減をされているようにも思えたが、智哉はそれを否定した。以前のような、やったらやり返すと言ったような刺々しさはなくなり、互いが計算めいた、いや、智哉の目の奥にはもっとつかみどころのない何か得体の知れない怪物が隠されているかのようだった。

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2017年06月11日

終わりの見えないデスマッチ(28)

「そろそろです。」事務的な電話だった。智哉には結局このことは言わなかった。試合前には会わないようにしているが、きっとどこかで見ているのだろう。ロッカーで着替え、リングに向かうと、既に相手はリングにいた。二人とも俺と同じくらいの長身だ。奥目の方の右目は義眼のようだし、南米人の顔立ちの男も前歯が3本くらい欠損していた。コングが鳴った。義眼の奴は早くも後ろに回りこんでいる。もう一方は隙っ歯を覗かせてニヤリと醜悪な笑みを浮かべると、何かペットボトルのキャップのようなものを咥えたようだった。こっちから仕掛けた。その隙っ歯に蹴りを入れようとしたが、これはかわされた。しかし、フェイントで回し蹴りを行った。後ろは見えていなかったが、ふくらはぎの辺りがヒットしたようで、倒れる音がした。そして向かい合う。仰け反って蹴りを放ったのが良かった。相手の顔面を掠ったが、その際に霧状のものを噴き出して、その青い器具が口から跳び出した。若干目が染みたところから、目潰しのための噴霧剤だったのかもしれない。予想外のことに戸惑い、額に深い皺を浮かべてこちらを見るが、既にもう一度、今度はしっかりと重心を保った蹴りを放っていて、防ぐ間もなく後頭部を直撃し、前から倒れていった。ダウンだ。よし、と思ったが、その間に義眼はカラダを起こしていて、すぐに俺を羽交い絞めにした。しかし、俺の腕が長いというのが計算外だったようだ。義眼の下にぶら下がるモノを探り当てるのは容易だった。握り緊めていくと義眼は両手で俺の手首を掴んだ。顎の辺りを目掛けて殴ると、そのまままた倒れた。そして、隙っ歯の方は幸いなことにダウンしたまま起き上がってこなかった。ダウンを取る時間が長く感じたが、10秒が経過し、懸念とは裏腹に勝利を得たのであった。

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2017年06月10日

終わりの見えないデスマッチ(27)

「そろそろです。」事務的な電話だった。智哉には結局このことは言わなかった。試合前には会わないようにしているが、きっとどこかで見ているのだろう。ロッカーで着替え、リングに向かうと、既に相手はリングにいた。二人とも俺と同じくらいの長身だ。奥目の方の右目は義眼のようだし、南米人の顔立ちの男も前歯が3本くらい欠損していた。コングが鳴った。義眼の奴は早くも後ろに回りこんでいる。もう一方は隙っ歯を覗かせてニヤリと醜悪な笑みを浮かべると、何かペットボトルのキャップのようなものを咥えたようだった。こっちから仕掛けた。その隙っ歯に蹴りを入れようとしたが、これはかわされた。しかし、フェイントで回し蹴りを行った。後ろは見えていなかったが、ふくらはぎの辺りがヒットしたようで、倒れる音がした。そして向かい合う。仰け反って蹴りを放ったのが良かった。相手の顔面を掠ったが、その際に霧状のものを噴き出して、その青い器具が口から跳び出した。若干目が染みたところから、目潰しのための噴霧剤だったのかもしれない。予想外のことに戸惑い、額に深い皺を浮かべてこちらを見るが、既にもう一度、今度はしっかりと重心を保った蹴りを放っていて、防ぐ間もなく後頭部を直撃し、前から倒れていった。ダウンだ。よし、と思ったが、その間に義眼はカラダを起こしていて、すぐに俺を羽交い絞めにした。しかし、俺の腕が長いというのが計算外だったようだ。義眼の下にぶら下がるモノを探り当てるのは容易だった。握り緊めていくと義眼は両手で俺の手首を掴んだ。顎の辺りを目掛けて殴ると、そのまままた倒れた。そして、隙っ歯の方は幸いなことにダウンしたまま起き上がってこなかった。ダウンを取る時間が長く感じたが、10秒が経過し、懸念とは裏腹に勝利を得たのであった。
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2017年06月09日

終わりの見えないデスマッチ(26)

というのも、実は弘一に身に覚えがあったからである。この前、来て早々に見知らぬ男が寄ってきた。40前後でサングラスを取らずに、そのよく日焼けした男は、「次の試合、いつもの倍払うから、負けてくれないか?」と言われたのだ。「俺、そういうのやってないんで。」と早々に断った。別に八百長が不健全だとかいうつもりは毛頭ない。金が目当てで転んだと思われたくないとかいうわけでもない。そんな妙なプライドだったらとっくに捨てている。単に、うまく負ける自信がないからだった。俺には八百長を悟られずに試合を進める自信がない。単にそれだけだ。男と話したのはそれっきりで、試合自身は素っ気無く終わった。距離を取るための前蹴りがダメージになり、自分からリングを降りて上がってこなかったのだった。それで2人と戦えと言う提示・・公開処刑だと思えば、あの3ヶ月前のことがつながる。あの男は、あれ以来試合で見ることはなかった。あれが来週の俺の姿か。ボロ雑巾のように誰にも顧みられない俺を見たら、智哉はどう思うだろうか。あんな惨めに負けたとしたら、俺に欲情しなくなるか。でも、そんなときこそ激しくして欲しい、そう思うと、弘一はがむしゃらに智哉のそれを頬張った。口の中で、若さの迸りから急速な膨張と硬直を見せ、そして急加速的怒張は最早口外に出ようと言う力が強くなり、智哉のまだ生え揃ったばかりの臍毛に接触するくらいに反り立ち、それでもなお力が余っているかのように振動していた。そして、いささか乱暴に弘一のその部分へと突き刺した。弘一がまさに求めていた、熱い猛々しいモノで突かれると、その陰惨な気分が快楽へと転換し、上方は深く濃厚なキスで同じくつながっていた。

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2017年06月08日

終わりの見えないデスマッチ(25)

大振りでガンガン顔に右、左、右、左と連打していく。唇からか出血して胸と床は真っ赤な血の色が徐々についていき、顔も元の顔がどうだったか思い出せないほど、原形をとどめずどんどん赤黒く腫れていく。時間制限もないし、セコンドがいないからタオルも投げられない。倒れていないからタップもできないし、ダウンもできない。二人相手はこのシステム、想定外なのではないか?何か因縁でもあったとしか思えないこの光景、相当打ち疲れて動きも緩慢になってきた。相手も目が腫れて開かないのではないだろうか?顔は鬱血し、鼻よりも目や唇の方が突き出ている。これで最後と言わんばかりに金的に痛恨の蹴りを喰らわせた。もう化け物のように血まみれで腫れあがったその男は、とどめの金的で膝から崩れ落ち、床に跪いて、ゆっくりと頭から倒れこんだ。タップする気力もないのか、ダウンの10秒を以てその凄惨で一方的な試合は終わりを告げた。

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2017年06月07日

終わりの見えないデスマッチ(24)

始まった。両者が中央に向かう。一人で二人相手にするのは無理だから、一人をまず倒してからだろうな。やっぱほっそりした方からいくのかなと思ったが、向かい合っているのはこげ茶色の肌をした方だ。もう一人は90度離れて様子を窺っている、というより役に立つのかなっていう印象だ。仕掛けたのはこげ茶肌の方、顔を殴りに行って当たったのはいいけれど、長い髪を掴まれた。ボコボコにされるかなと思っていると、ガリガリに痩せた方が後ろに回り、羽交い絞めにした。振り解こうとしているが、痩せていて身長があり、首のところで手を組み合わせて外れないようにしているから難しいらしい。髪は掴んだままだったが、度重なる頭突きを喰らって意気消沈したのか、程なく手を離してしまった。

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2017年06月06日

終わりの見えないデスマッチ(23)

1対2という試合はそのとき初めて見た。2人のうちの一人は見覚えがあった。背丈は普通で全体的にほっそりしていて、肩までかかる髪、細い眉に日焼けサロンで焼いたような不自然な肌の黒さ。ホストなんだろう。借金苦か金か女のトラブルか知らないが、ホストっぽい風情の参加者もそこそこいる。俺とも対戦したことがあったが、牽制のための回し蹴りが顔に当たってしまい、それっきりダウンだった。しかし、それからも何回か見ているが、その試合に興味がないからか、買ったか負けたかということまで覚えていない。2人を相手する方は、160cmそこそこ、髪も短くて田舎臭い容貌、ただカラダつきはゴツい。肩が盛り上がって見えるのも筋肉なのだろう。胸にも一面に薄い体毛が生えている、オス力が強そうな印象。まあ、2人のうちもう1人もホストなんだろう。やはり髪が長くてアバラ骨が遠目でも認識できるくらい細い。顔も凡庸で、喧嘩もできなければ勉強もできない、取り得がなさそうな薄幸そうな顔立ちである。まあ、こんなんだったら1人でも2人でもあまり大差ない印象を受けた。

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