2019年11月15日

熾天使アブディエル(4)

地獄の門は複数の鍵によって厳重に管理され、上半身は人の姿をしているが、下半身がとぐろを巻いて蛇のような姿をした門番と、その子、サタンの子でもある「死」がそこを管理していた。入口の前には、その門番から生まれた、「死」の弟にあたる悪鬼数匹が飛び回って遊んでいた。そして、その横にある、そう簡単には崩れなそうな、垂直に立つ鉄よりも重い重金属でできた岩にアブディエルはなす術もなく括りつけられているのである。地獄には草木は一本も生えておらず、灼熱か或いは極寒の荒野がただ広がるだけで、身もよだつような生き物が辺りを這いずり回り、そして飛び交って、苛まれたカラダの傷口に卵を産み落とし、腐臭にまみれながらもその傷口を食い千切ってまた新たな餌を探しに這いずり飛び回る。時折漂う腐敗臭と阿鼻叫喚がむっとするような風に乗って聞こえてくる。アブディエルも当初は天国におられる神がそのうち天使の軍団を使わして救い出し、きっと我が身を天国へと導いてくれる日が訪れるに違いない、そう思っていたが、ここ地獄ではそうした希望と言うものは虚しいものだと分かり、そのうち絶望へと変わるのにさほど時間はかからなかった。神は自分に試練を与えているのかもしれないと思うときもあったが、次第に自分は神に見捨てられたのではないかと思うようになった。そもそもサタン配下の天使が天国に来たところで、スパイかもしれないし、いつ寝返るかは分かったものではない。天国に行ったところで、地獄の門の見張り番をさせられるのがオチだ。そしてさらわれて、ここにいるのだろう、結果同じことだ。

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2019年11月13日

熾天使アブディエル(3)

アブディエルがこうなったのも無理はないことであった。サタン、いや、天国にいた頃はルシファーと言う名で呼ばれていたのだが、神の服従を拒み、自ら天使の3分の1を引き連れて神に反逆することを選んだとき、アブディエルはサタンに向かって一人、気炎を吐いたのであった。
「ルシファーよ、お前は神に背くというのか。お前が神から与えられてきた恩恵を忘れたというのか。恩知らずが。神は偉大なり。お前ごときが束になってかかろうとも負けるわけがない。神の前ではお前は虫けらも同然だ。お前は神によって造られた創造物の一つにすぎず、神は全てをお見通しだ。おそらく神にかかってはなす術もなく奈落の底に落ちていくことは必定、そんなお前の独善的発想に到底ついていけない。俺はお前の指図は受けない。俺は俺の道を行くのだ。」
「お前というのは誰に対してものを言っているのか、アブディエルよ。そもそもお前がそのような誤った判断をするとは考えにも及ばなかった。神はこのような欠陥品をも作ったと言うことがこれで明らかとなった。皆の者、よく聞け。神はそのような誤謬を犯す存在なのだと言うことを。神に隷属し、毎日を安穏と惰性で過ごしている輩に、この鍛え抜かれて意気軒昂とした我々が負けると言うことがあるだろうか。勝利は近い。どうだ、皆の者、呪われたアブディエルに賛同する者は名乗り出るがいい。傲慢不遜な神の所業に未来永劫付き従うという者は立ち上がるが良い。」
そのような勇気のある者は誰もいなかった。アブディエルは神の軍隊へ合流するためにこの場を立ち去ろうとしたが、周りには憤怒に燃えた天使が取り囲み、声に出すのも憚る呪文によって拘束された。そして、神に完膚なきまでに叩きのめされて奈落の底に落ちていく際、アブディエルも道連れにされたのであった。

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2019年11月11日

熾天使アブディエル(2)

アブディエルは切り立った岩壁に張り付けられ、サタンによる邪悪な呪文によって幾十にも目には見えない鎖で手首と首を縛り付けられていた。空を飛ぶための大きな翼が人間で言う肩甲骨あたりにつき、それを白くて大きな羽が幾層にも重なって覆っている。胸板はこれでもかというくらい厚く、そして鋼鉄のように硬く厚い筋肉で覆われて、その表面をうっすらと黄金の毛が覆っている。神の子であるアブディエルは、言われなければ神かと見紛うくらい美しく、そして気品がある出で立ちをしている。無駄な贅肉など一切ないその腹は、8つのそれぞれのブロックに分かれ、それぞれがそれぞれとその硬さを競い合うかのようだった。カラダの中央を通る胸の割れ目から臍を通じて下に伸びた黄金の毛が、その下の神々しく揺れるモノへと誘った。そのモノと言えば、高貴な出で立ちにふさわしく、輝くばかりにその大きさをこれでもかというくらい主張して、引力に逆らうことなく垂れ下がっていた。また、その奥に、隠そうとしても隠しきれるものではない大きさの、収穫間近のたわわに実った果実を彷彿させるような堂々とした玉が二つ、きっと赤ん坊だったらすぐに眠りに着くのではないかと思われるくらいにいかにも柔らかそうな袋に入れられて、心持ちユラユラと揺れていた。強靱な腿といい、そして足のつま先まで何の欠点もなく作られた偉大で唯一絶対である神の創造物は、こうして今、地獄の門から程ないところで責め苦を受けているのであった。

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2019年11月09日

熾天使アブディエル(1)

アブディエルは天空にいた頃のことを思い出していた。背についた純白の翼を自在に操り自由に空を飛び回り、毎日が雲一つない晴天で眩いばかりの光を遮る物質は全くない。木々は花が咲き乱れ果実もたわわに実っているが、食べる者がいないので、甘く香しい匂いが辺りを漂っている。名をまだ与えられていない鳥の囀りに囲まれながら時折吹いてくる心地よい風に当たる。まだ宇宙というものが渾沌に支配されていた頃、ガスが渦を巻いて一つの輝きがまた生まれようとしている頃のことだ。太陽もまだできていないが、その光よりも遙かに強い光でこの世界は満ち溢れている。鳥の声が聞こえる木の下で一休みしようか。しかし先客がいるようだ。あそこにいるのはガブリエルか?輝いて眩しすぎて姿が見えない、気品溢れるガブリエル・・古き良き友よ・・
「ぎゃぁぁぁ!!!」
この世のものとは思えない悲鳴が辺り一面を揺るがせた。悪鬼がアブディエルの股間をまさぐっていた。そして大声に怯んでいったんは手を放したが、また垂れ下がった二つの玉を探り当てると、先ほどと同じように力任せに握ったのであった。
「あぁぁぁ、止めてくれ、止めてくれ、お前はなぜそのようなことをする?」
悪鬼にはアブディエルの草木がそよぐような声が耳に入らなかった。悪鬼はそもそも言語が理解できないのだった。仕事の一部として組み込まれているかのように、悪鬼はまたもアブディエルの玉を、その茨のような棘が生えた黒い手で潰しにかかった。
「あぁぁぁぁ!!!」
耳をつんざくような声がまたも辺り一面に響いたが、誰も応ずるものはなかった。

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2019年11月07日

よくあるファミレスでのできごと(5)

「おい、まだかよ、頼んだの、まだ来ないんだけど。」
いるんだよね、普段おとなしいくせにこういうときだけ大声上げてクレームつけてくる奴。仕事の時はきっと米つきバッタのようにペコペコしているような小心者なんだよな。
「お待たせしました。」
「遅ーよ。遅い。オ、ソ、イ。何やってんだよ。こんなのすぐにできんだろうがよ。」
額が大きく禿げ上がった黒縁メガネが、唾を飛ばしながらクレームを言う。その向かいにはそこそこ若くて色白で端正な顔立ちだけれども、さらに不機嫌に眉を歪めた男が。そんなに遅いってこともないと思うのだけれども、すみませんでしたと言って、さっさと立ち去る。
「あの、もう時間も過ぎているので帰ってもいいですか?」
「いや、ここ、俺のおごりだから、大丈夫。」
「3時間なので、延長なら店を通してもらいたいんですけど。」
「違う違う、これはほら、ここは俺が出すから、もうフリータイム。」
「ちょっと店と相談します。」
といって、席についたままで電話した。
「あの、お客様が延長を希望しているようですが、どうしたらいいですか?」
どうやらウリ専っぽいわ。でしょうね、釣り合わないし。何だ、あのハゲ、若い子の前だからって、粋がり過ぎ。
「はい、はい。もうお金は3時間分でいただいてます。はい。」
ハゲ、何か苛立っているわ。そうよね、金なら出すって言いたいんだろうけどさ。電話が終わったようだ。
「すみません。僕は次の予約が入っているんで、これで失礼します。」
「おい、そらねーだろ、こっちとらホテル取ってんだ、どうなってるんだ?」
「いえ、いただいているのは3時間のご料金で、既に3時間が経過していますので。」
「ふざけんなよ、3時間払ったんだからあとはフリーだろうがよ。」
何だろ、フリーって。あのハゲ、もしかして3時間で口説いて自分の物にした気でいるのかね?すごい自信。
「では、ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。」
「おい、おい。」
「お待たせしました、ナポリタンです。」
「いいよ、もう。会計。」
ファミレスで口説く自体でそもそもアウトなのに、鈍感だな。

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2019年11月04日

よくあるファミレスでのできごと(4)

訳アリな感じの薄幸そうな男二人組が入ってきた。険悪な感じで終始無言。飲み物だけ頼んで、あとはずっと何をするわけでもなく、一方は一方をずっと睨み、睨まれた方は下を向いている。
キョロキョロして入って来たサラリーマン風の男。冴えない感じだわ。その、向かい合って座っているところの脇にちょっと間を開けて座る。
「ねえ、いつから?」
クスリでもやってそうな感じの不健康そうな金髪が口を開いた。不穏な雰囲気だ。浮気?
「いつからって何が?」
「とぼけないでよ!」
目にクマを作った感じの丸顔が、コップをガンってテーブルに置く。でた、とぼけないでよ。久しぶりに聞くそのワード。っていうか、どっちもオネエ?
「何、何したの?」
「アタシが帰ってきたら、コイツがいたの。何、コイツ?」
「はぁ?アンタが何なんですけど。嗤える。」
「バッカじゃないの?この腐れマ××。」
「自分の顔見てからいいなさいよ、このブス。」
あの、何でファミレスで痴話喧嘩をするかね?家で遭遇したら家でやったら?
「どっちが本命なの?アタシよね?」
「どこまでおめでたいの?チー君はアタシにぞっこんなんだから。」
「オバチャン、そんなわけないでしょって。厚かましい身の程知らず。」
「ブスはでしゃばらないでくれます?」
化粧してないからよく分からなかったけど、どっちもそういやニチョのゲイバーの売り子だわ。スッピンだとどっちも冴えない男なんだな。若いと思ってたけど、よく見ると皴やシミがすごいや。
「うっせーんだよ、あばずれ。誰だってまた開くくせによー、マ××洗ってんの?マ×臭すごいんだけど。」
「アンタ、お黙んなさいよ。口臭いわよ。何食ったらそうなんの?ウ××?」
エキサイトしてきたから、冴えないサラリーマンはブス二人連れて二丁目に消えていった。つかみ合いとかするのかな?ブスの取っ組み合いっておもしろそう。仕事がなければ見に行くんだけれど。

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2019年11月02日

よくあるファミレスでのできごと(3)

「いやー、セーナ君、お疲れお疲れ。」
悠太が戻って来た。2時間経ってないけど、あのネクラ君どうしたの?
「参ったよ、泣かれちゃって。こんなつもりじゃなかったとか言い出されて。」
ん?経験したいって話だったよね?
「それがさ、よく分かんねーんだよ。経験ない人とヤリたいんだって。」
は?言っている意味がよく分かんないけど?
「だから、俺みたいな経験豊富な感じなのは嫌なんだとさ。俺のことをノンケだと思っていたみたい。」
え、処女希望ってまさか、あのネクラ君が処女ってことじゃなかったっけ?
「俺みたいにすぐケツ突き出したりするのは嫌なんだとさ、言わすなよ。」
悠太は忌々しそうにタバコを吸っている。整理すると、ネクラ君はノンケの処女を犯したかったんだけれど、悠太は見た目がノンケっぽいだけで、すぐに股を開くなんてバリバリゲイじゃないかってことだ。それにしてもそれで泣く?
「それは、俺がちょっとね、なじっちゃったからかな。」
煙を宙に向かって吹く。あの、トラウマにならないかね?
「っていうか、セーナ君、いつバイト終わるの?俺のケツ、使っていいからさ。」
俺も遠慮しておくっす。だって、ネクラ君より順位が低いんだもん。どういうこと!?

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2019年10月31日

よくあるファミレスでのできごと(2)

「そっか、俺も行ったことがあるよ、その美術館。超センスいいよね。」
ここは新宿三丁目にあるファミレスだけあって、ゲイ率がかなり高い。会話も聞かれたって全然平気なくらいあからさま。っていうかさ、絶対行ったことないだろ。相手はあんまり乗り気じゃなさそう。
「ニューヨークって感じ?俺さ、実はニューヨーカーに憧れているんだよね。良くなくない?響きが。ラジカセ片手にさっ。」
ってポーチを肩の後ろに持って行っている。自分はラウンド髭だと思っているのだろうけれど、坊主の丸顔でどう見てもカールおじさん。脂ぎってテカテカした田舎者丸出しの顔してニューヨーカーもないだろ。入浴ならまだしも。俺としたことがオヤジギャグ的な発想だな。相手はやっぱりさっきのネクラと同じくらい顔が白くて小さくて、どこかのお坊ちゃんというか、学習院でも行ってそうな感じ。身なりも清潔だしさ。カールおじさんの方はラガーシャツ?これはこれでよくお似合いでございます。しっかしアンバランスだな。ここで初めて出会ったのかな?それにしてもカールおじさんの趣味だよな、ファミレスデートなんて。
「DJもやってみたいんだよね、こんなの。」
と、カールおじさん、レコード世代?言うことが古すぎ。ジェネレーションギャップ半端ないじゃん。相手も全然乗ってきてないし。会話が弾まずにカールおじさんの空回りが痛々しくて虚しい感じ。ああ、笑っている、愛想笑いかな。ひきつってるじゃん。地獄の時間。
「そろそろ、いいかな?どう?」
ムチャクチャなタイミングで相手の手を握っている。何だこれ。目がマジ。え、頷いているよ。マジで?エッチ目的なのか。手を引いて足早に連れていかれている。うわ、汚れ専?これこそ金の臭いがするな。

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2019年10月29日

よくあるファミレスでのできごと(1)

夜も20時くらいになると、客が急に増えてきた。このファミレスはオーダーがある場合はテーブルにあるボタンを押すシステムなのだが、ひっきりなしに押され、さばくので精一杯。
そんな中で、悠太が彼氏を連れてきた。
っていうか、彼氏何だかどうだか怪しいが。どうせどこかで引っ掛けてきた男だろ?
「セーナ君、元気?」
悠太は手を上げて星那を呼び止めた。向かい側には色白と言うより青白い、黒縁メガネをかけてどちらかというとネクラそうな、少年?年上?ボリュームのある髪が年を分からなくさせている。その彼は声を発することがないんじゃないかと思うくらい縮こまって俯いていた。
「ご注文は?」
「男。活きのいいのにしてね、俺、マグロだから。」
「ドリンクバーはおつけしますか?」
「カルピス濃い目で。」
何か、他の人に注文とってもらった方がいいわ。忙しいし。
「セーナ君、この彼どう?」
どうって、マジでさっきから一言もしゃべんないし、顔も上げないし。挨拶くらいできないものなんかね?何?
「彼、実はウリ専なんだよ。」
は、はい?こんなネクラが?もしかして、悠太、こんなの買ったの?どこがいいの、こんなの?いくら払ったの?何時間?どこで?決め手は?どこが良かったの?俺にはいいところが見つからないんだけれど、良さを教えてよ。いろいろな疑問が爆発的に湧いてきちゃって、言葉が出ないよ。
「・・違うよ。」
「は?違わないだろ。」
「僕はウリ専じゃない。」
「だって会うのに金がいるんだろ?ウリじゃねーか。」
何何、え、買ったの?
「何言ってるんだ、早とちりだな。これから交渉するんじゃねーの。だって処女だっつーからさ。」
ゲイに処女も何も自己申告じゃんね。
「違います。僕が払うんです。僕が買うんです。」
ん?二人とも目を大きく開けて、でお互い見合わせた。っていうか、でしょうね。経験ないのにいきなり売るわけないっしょ。早とちりはどっちなんだよ、頭悪いわ。
「俺、無料だよ。フリー。」
え、やるの?
「なんで?処女だろ?」
は?
「でさ、物は相談なんだけど、セーナ君、バイトでしょ?部屋貸してくんない?」
絶対嫌だけど。
「ケチ。ケチケチドケチ。じゃ、そういうことだから、セーナ君、バーイ。」
ネクラ君の肩をガシって組んで、店を出て行った。状況がつかめない、っつーかついていけない。

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2019年10月27日

家庭教師(6)

結局、B大には行かなかった。東京のK大に受かっちゃったからさ。2年生のときに成績がグンと伸びて、志望校を変更したんだ。でも、家庭教師はずっと変えず。ご褒美を小出しに小出しに出してきて、俺の意欲をくすぐり続けたからこうなったんで、家庭教師を変えたら一気に下降線を辿っただろう。だったらB大行けばいいじゃん、先生がいるんだからって思うだろうけれど、先生、俺と同じネコちゃんで。あんなエロいカラダしてネコちゃんだったなんてね。それに、先生は俺の合格と同時に卒業して、就職したんだ。で、猫ちゃん同士、同じ屋根の下に住んでいる。最後のご褒美は、一緒に住むことだったし、両親にもカムアウトしたんだけれど、むしろM銀行のエリートと一緒ならって喜んでいたよ。でも、実は今はこっちが褒美をあげる方。先生の教育のおかげで、俺はネコちゃん以外にもできるようになっちゃったからさ。そうだ、俺、大学生なんだから、バイト、家庭教師やろうかな・・。

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2019年10月26日

雑記帳(2019/10/26)

前作「栗の香りに囲まれて」に引き続き、「家庭教師」もホンワカした感じの小説です。次の「よくあるファミレスでのできごと」もそんな感じ。「デリバリーC」と「終わりの見えないデスマッチ」が根強い人気だったりするんですよね。「終わりの見えないデスマッチ」なんてBの方も終わりが見えていないのにCを書き始めてしまいましたんでね・・。デリバリーも続編書いた方がいいかなと思うんですが、今のところ、軍人系2つを書いているんで、なかなかそこまで手が行き届かず。読んでいる皆さん、何が好きで読んでいるの?(笑)

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2019年10月25日

家庭教師(5)

「決めた?」「・・B大。」「そう。じゃ、当初と同じだ。」「先生と一緒の大学に行きたいから。」言っちゃったよ。「ふーん、じゃ、頑張って。」「先生は俺のこと好き?」「そこそこ。」「付き合って。」「無理。」勢いでイケるかなと思ったけれど、ふーんって言われている辺りから望みは薄かった。そうだよな、そうだよ。勉強する気がなくなったわ。「先生と生徒の関係だから無理。」「じゃあ、キスは?」「成績が上がったらな。」俺は顔がすごく赤くなっていただろう。全身が火照って火照って仕方がなかった。無論、あっちの方だって収まりがつかなくって・・。こんなに勉強をしたくなったことがあるだろうかと思うくらい、急にモチベーションが上がってきたよ。ヤル気が出てきた。今思えば、キスくらいでさって感じなんだけれど。

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2019年10月22日

家庭教師(4)

「先生、腕相撲しようぜ?」「ん?後で。」「先生、俺、美大行こうと思ってんだけど。」「じゃ、勉強して。」素っ気ない。全然素っ気ない。僕のことを生徒にしか見ていない。そりゃそうなんだけどさ、僕だって高2じゃない?そんな青春時代をさ、そんな勉強だけで過ごしたら勿体ないと思わないかね?勉強以外にだっていろいろ教わってみたいじゃん?遊び盛りじゃん、好奇心旺盛な高校生が目の前にいるじゃん、何とも思わないんかね?そうだよな、そりゃそうだわ、全然。先生、別にゲイなんかじゃないもんな。興味があるわけないもんな。「先生、やっぱ体育大行こうかな?」「どうして?」「勉強ばっかできるだけより、カラダもいい方がなお良くない?」「じゃ、カラダだけの大学より運動もやりつつ勉強もできるB大の方が良くないか?」真面目だわ。「体育大なんて男ばっかでむさいだけだぞ?」「全然平気っす。」言ってしまった。でも、抑えが効かない。「俺、その方がいいんだ。」「俺も。」ん!?先生が俺のことを見つめる。俺も?「何やりたいかはご両親とよく相談してさ、それによって受験科目が変わるんだし、そもそも授業料を払うのはご両親なんだから。」「・・・、じゃ、今日は生物だっけ?どれ?」いや、あの、・・全然動じない。そうだよね。家庭教師だもんね。

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2019年10月19日

家庭教師(3)

先生の声はボソボソと小声で言うからうまく聞き取れない。だから、教えてもらうときは結構密着して聞く。髪はボサボサの天然パーマだけどちょっといい香りがする。縁が黒みがかった青い眼鏡をかけていて、眉は結構濃くて、顎髭を生やしている。鼻筋はすっとしていて高くて、息がちょっと甘い香りがするんだよね、いつも。全然勉強が手につかなくなってきた。母親はさ、僕のことを考えてむさくるしい男の家庭教師を頼んだんだろうけれど、逆効果なんだよね、実は。ちょっと暖房効き過ぎているからか、先生が上着を脱いだ。腕が太い。俺も空手しているからそこそこ腕が太いんだけど、俺より二回り位太い。胸もちょっと見えるけど、胸毛うっすらと生えてない?胸、見てみたい。見たいって言ったら見せてくれるかな?男同士だけど、何か変だよな。唐突すぎる。部屋をもっともっと暑くして脱がすとか?俺が率先して脱いでみる?難しい。簡単なようで難しい。この英語の訳よりよっぽど難しい。

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2019年10月17日

家庭教師(2)

教える内容は、もちろん大学受験を意識しているけれども、俺は内申があまり芳しくなく、どちらかというとバリバリ死ぬ思いをして受験勉強をするよりは、推薦で楽にサッサと決めてしまいたい方。親も、浪人とか金がかかるし、そもそも一人っ子な割にそんな頭の方に期待をかけられているわけでもない。ま、親の遺伝なんだから、そりゃ限界を知っているんだろうけれど、せめてB大くらいにはってことなんだろう、こんなクソ真面目な家庭教師を選んできやがって、なんて、よくよく見るとね、暗そうだけれどイケないこともないんじゃない?って気もしてきた今日この頃。俺の勉強机、既に物心がついたときからここにあったんだけれど、今どきこんな勉強机で勉強している奴なんていねーやと思ったが、先生が横について見てくれるってのはちょっとドキドキするよな。でも、顔見たいけど、横だと見えないんだよな。鏡でも置こうかな。

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2019年10月15日

家庭教師(1)

僕の家に新しい家庭教師が来た。国立B大学の2年生。基本的に母親が選んで、そして母親がこの科目を中心に教えてほしいとかいろいろ言ったんで、僕は全然関与していない。そもそも、B大は父親の出身校だからと指定しただけで、家から大学まで1時間以上かかるようなところにあるからなかなか成り手が見つからなかったらしい。条件も全然折り合わずに3か月、ようやく決まったのがこの、髪もボサボサで若干天パーで黒縁の結構度のきつい眼鏡をかけ、また苦学生なのかどうか知らないけれど、毎日毎日同じ服を着てくる。サイバー研究会とか入っていそうな、のそっとしていて鈍臭い、イケていない大学生。俺はゲイに最近目覚めた高校2年生。そんな俺の好奇心を満たしてくれそうもない、ごくごく真面目な家庭教師。
「よろしくお願いします。」
って声もボソッてしていて、コイツ大丈夫かよって感じがする。

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2019年10月13日

雑記帳(2019/10/13)

「よくあるファミレスでのできごと」「イスラエル王ダヴィデ」も書き上げましたので、順次上げていきたいと思います。ちなみに、史実に基づいている訳ではないです。いろいろくっつけていますし、だいたい、アブディエルがサタンに捉えられた話なんて聞いたことないですし、ファミレスに俺はここ10年以上行ったことがないんで、空想もいいところです。そうそう、「ブルーボーイ三島」を書き始めました。モチーフは三島由紀夫ですけど、まるっきりの嘘なので、予め言っておきますし、検索に引っかかってこちらにたまたな来た三島ファンの皆さん、ごめんなさい。

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2019年10月12日

栗の香りに囲まれて(9)

まだ一つだけ個室が埋まっている。でも、話し声が聞こえているからもうコトはとっくに済ませたのかな。もうそろそろ営業終了時間ですと声をかけると、しばらくして出てきた。手なんか繋いじゃってラブラブ。見ているこっちが恥ずかしくなる。え、これにオヤジ、手を出しちゃうの?すげえ勇気。でも、一方が抱きしめて守ってるし。シャワー浴びるときもキスしてから。で、一人になったところをオヤジ襲うの?外道だわ。あ、蹴り入れてる。意気消沈してオヤジ、あっけなく帰り支度。これで丸く収まって、こっちも帰れるってものだわ。はぁぁ、今日も疲れちゃった。まだ個室の掃除が残ってるし、明日はゴミの日だから、ティッシュの山を出さないと。ごみ収集の人も驚くだろうね、栗の花臭ものすごいし。最後の締めは、俺の栗の花を咲かせないと。誰もいないハッテン場で一人、通路に寝っ転がってシコシコしてるなんて、誰も思わないだろうね。俺だけのヒ・ミ・ツ。

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2019年10月09日

栗の香りに囲まれて(8)

そろそろ営業終了時間。もうお客も入って来ないだろうってところになぜか来る人いる。こんな時間に来て何しよってのかね?でも、こういう客ってヤルことヤッたらすぐ帰るって言う、もう自分は早漏ですって言っているようなもんだけど、こっちは早漏大歓迎。早く帰って欲しいし、この時間っていわば在庫一掃セール中だから、ドンドンやっちゃって咥えちゃってはめちゃってくれればいいんだわ。自販機の脇のゴミを片付けながら、着替えているところを見るけれど、うーん、でもさすがにこの顔でこんなカラダじゃ無理があるかな?おう、このオヤジったら、着替えて帰ろうとしているところをドンドン手を出してる。明らかに嫌がってんじゃん。すみません、迷惑行為はお止めくださいますか?と言ったら、迷惑に感じるかどうかは相手次第だろって捨て台詞を吐いて、中に逃げ込む。中に誰かいるのかな?って思ったら、二人ほど外に出てきた。すごいね、よっぽど嫌がられてんじゃん。その二人も帰り支度。じゃ、そろそろ点検に入るかな。

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2019年10月06日

栗の香りに囲まれて(7)

何ていうのもほんのひと時、コアタイムを過ぎると凪が来る。個室が満室になったから、あんだけワシャワシャと蠢いていたのに、ぴたって止まる。で、タバコを吸う奴、携帯を弄る奴とワラワラと出てくる。乾燥終わった頃だわ。乾燥機を開けてタオルを取り出して、中でたたむ。タバコ臭いわ。喫煙スペースはロッカーの奥の一角にしているんだけど、その煙が巡り巡ってここに降りてきている感じ。服がタバコ臭くなっちゃう。換気扇つけて欲しい。カウンターに人が。さっき出て行った白豚メガネじゃん。何、忘れ物?は?食事で出ただけだからまた入れろ?そんなシステムないんだけど。というか、入店お断りなんでって言ったら、さっき入れたのにおかしいだろと。迷惑行為をした客は入室禁止ってルールなんで、あんたはもうダメなの。それに、ロッカーの中に何もなかったんだけど、忘れ物は何?と言うと、しどろもどろに。はっはーん、やっぱ戻ろうとしてんじゃん。戻ったってあんたみたいな白豚は無駄無駄。豚小屋にでも戻んなさい。

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