2021年11月13日

終わりの見えないデスマッチB(41)

実来はそれ以来、姿を見せることはなかった。風の噂では、マネージャーの逆鱗に触れてどこか知らない国へ売り飛ばされたということになっていた。3年後、その実来がふいにシディークのところに現れた。「実来、実来、生きていたんだ、実来!!!」シディークに両肩をつかまれて前へ後ろへと勢いよく振られ、声も出なかった。生きているも何も、それからというもの、実来は智哉や父の仕事を引き継いでいろいろ忙しく、全世界をそれこそ飛び回っていて、ここに来る余裕がなかったのだ。ただ、顔は変わりないのだが、全身を黒服で包み、そしてなんともいいようのない、隠し切れない「影」が実来を陰鬱な形にして見せていた。ギュッと抱きしめられて・・人目をかまわず、二人は長いキスを交わした。ただ、それっきりだった。実来の左目から、一筋の涙が流れ落ちたが、何事も発することなく、そこから立ち去っていった。越えられない壁が二人を分け隔てているように、近くにいるのに遠い存在のようだった。

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2021年11月10日

終わりの見えないデスマッチB(40)

「ガッ。」目を開けると智哉がうずくまっていた。渾身のボディブローがヒットしたようだ。あんなに鍛えたカラダをしていても、結構大したことがなかった、この男は俺のことを子供だと思って軽く見ていたんだ、余裕ぶってかかってこいとかいうからこんなことになるんだ、と思うと、実来の口元が緩んだ。と、智哉がいきなり起き上がったと思うと、思いっきり拳で顔面中央を殴られ、後ろに吹っ飛んだ。鼻血が出て、痛みで涙がこぼれて鼻血と混じってカラダを濡らしていった。「オマエ、どこでもいいってキンタマはないだろ!!!」と、リングに座り込んで、股間を揉みほぐしている。と、手をたたく音が聞こえて、黒服の男が近づいてきた。「良くやった、良くやったよ。」「良くない!!!」黒服の男は、血だらけになった実来の前に来ると、頭を撫でた。「実来、良く育った。良く・・。」あとは、涙声と片言の日本語でよく聞き取れなかった。智哉が片手で股間を抑えながら近づいてきて、「実来、よく見ろ、お前のお父さんだ。」お父さんと言われても、全く覚えていないのでピンと来なかったが、目の前に差し出されたプリクラの写真、それも実来は1枚きりしか持っていなかったが、手帳に埋め尽くされた無数のツーショットの写真を見せられると、「お父さん」と言われるものが急に現実味を帯びた。

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2021年11月06日

終わりの見えないデスマッチB(39)

リングに上がろうとすると、智哉はロープを握ってカラダをほぐしている。と、誰もいないのにアナウンスが聞こえてきた。レフリーもいない。観客どころか人が全くいない。ただ、個室からさっきの男が眺めているだけなのだろうが、こっちからは見えないので様子を窺い知ることができない。「タイマン、タイマン。ある?タイマン。」全てが異様なので、言葉が全然入ってこなかった。口ももうカラカラに渇いている。と、智哉は腕も足も広げて、「好きなところ殴っていいよ。」えっ、と戸惑ってしばらく立ちすくんでいると、痺れを切らして両腕両足を閉じて、「ハンディだよ、ハンディ。」なおも様子を見ていると、智哉の顔もだんだんと険しくなっていた。「なぁ、分からないかな?俺もいつまでも優しくないぞ。10数えるから、それまでにかかってこい、10、9、8、・・・」とカウントダウンが始まった、しかも心持ち速く。足の震えが止まらないが、行かない選択肢はない、行くしかない。目をつぶったまま、実来は智哉に殴りかかった。

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2021年11月04日

終わりの見えないデスマッチB(38)

全試合が終わり、客が帰っていくのを見ると余計ソワソワしてきたが、智哉は隣の男と密着してしゃべっていた。智哉が男の膝に手を当てたり、手を握ったりと、かなり親しげだった。最初、親子なのかなと思っていたが、男の体にまとわりついたりしているところを見ると、まあ付き合っていると見た方が自然だった。客も全くいなくなって、清掃や後片付けを済ますとスタッフもいなくなった。「じゃ、やるかな。」と、右腕をグルングルン回して、服を脱ぎだした。「ああ、ここで着替えてもいいけど、雰囲気でないか。あっちで着替える?」と言うので、見慣れた更衣室に移動した。智哉はさっさと脱いでいく。サングラスを取ったら、結構愛嬌のある人懐っこい顔をしている。それに・・、腹筋とかパキパキって割れていて、無駄な脂肪なんて全然ない、普段の黒服からは想像もできないようなファイターのカラダ付きをしていたのに驚いた。「先行ってるよ。」と履いていたブランドもののトランクスを投げ捨てると、リングに向かって行った。

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2021年10月05日

ちょっとだけ怖い話(19)

というか、南森町というところに行くんだから、そもそも逆だった。反対側だわ。ボーっとしてたんだ、確かに、ちょうど電車が来たんで乗り込んで、と、後ろから「キャー」っていう、女性の悲鳴が聞こえた。何かなとは思ったけれど、振り返りもせずiPhoneを取り出して、席に座って音楽を聴いていた。でも、全然電車が動く気配もないし、向かいの電車はどうも途中で止まっているっぽいし、車内放送で運転の再開の見込みが立たないって言われたから、並行して走っている私鉄とかJRとか乗り継いで、何とか南森町に。まあちょっと遅れて着いたはいいけれど、相手はまだいなかった。lineで遅れるって連絡があって、10分後くらいに来たんだけど、「堺筋線が人身事故で止まっちゃっててん、めんごめんご。」って。人身事故?・・読んでいる人には悪いんだけど、怖いから、何があったのかは調べていない。でも、俺、危うく死にかけたんだけど。「天下茶屋から乗ったん?あれ、ホテルさ、千日前やったよね?天下茶屋て・・もしかして、来る前に誰かと会っていたとか?」って股間を触られる。え、俺、そうだわ。難波の地下街の英国屋で遅めの朝食を食べて、・・そこからどうして天下茶屋という駅に行ったのかは記憶が全くない。持っていた一日乗車券は、日本橋で乗ったという記録が残っている。反対方向だね、で、なぜか降りたんだ、天下茶屋って駅で。いいわ、・・気持ちを切り替えて、男、男っと。だって、俺、死ぬ日って5月15日って決まっているんだから。死神に「危ない」って止められちゃったのかもね。そうそう、これ、吉兆だね。吉兆も予知できることが分かったわ。

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2021年10月02日

ちょっとだけ怖い話(18)

大阪の堺筋線に天下茶屋って駅があるんだけれど、大阪に住んでいる友達と銭湯に行こうって話になって、いや、ハッテン銭湯ってのがあるっていうから、折角大阪に来たんだし、一度見てみたいなと思って、股間を若干膨らませてホームで電車を待っていたんだ。アナウンスが流れて、電車が入ってきて、ドアが開いて、まあ回送電車みたいに何か薄暗いし、空いているなって感じはしたんだけれど、電車に乗ろうとしたのよ。そしたら「危ない」って何か、声っていうか、頭にガツンって衝撃を受けるような感じの声が聞こえて。ハッと気づくと何もない。そもそも目の前に電車なんてない。右、左と見たけれど、周りに人さえもいない。いや、俺、びっくりして。東京の地下鉄って転落防止用の柵があるんだけど、ここにはなくて、俺、電車に乗ろうとしていたからさ、もう、片方の足に体重をかけていたら、そのままホームに落ちていた。本当に、危うくね。ボーっとしていた?いや、確かに緑色の電車が入ってきていて乗ろうとしていたんだし、いや、でも、ハッテン銭湯に気を取られて、気持ちがさ、ふわふわしてたんだなって思ってね。

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2021年09月30日

ちょっとだけ怖い話(17)

予知能力の話、していいですかね?予知なんてできるわけないだろ、そんな能力なんかあるわけないじゃんかって?そう、予知能力はないんで、予知できない。俺も、別にほらを吹こうと思っているわけではない。ただ、ここまでくだらない、実にくだらない話に付き合ってくれた人、今まで読んでいて気づきませんか?予兆がある。吉兆は知らないけれど、凶兆って、虫の知らせという言葉がある通り、予兆がある。何が起こるか教えてくれるわけでもないから、何か嫌なことが起こるなくらいにしかわからないけれど、例えば蒲田に行くはずが桜木町に行っちゃったとか、死神が現れたとか、普段読まない中国語で書かれたネットニュースが検索で引っかかったとか、あるの。ま、俺が悪霊に取り憑かれているせいもあるのかもしれないけれど、・・だったら、つのだじろうの『恐怖新聞』みたいに、分かりやすく解説してくれるといいんだけどね。

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2021年09月25日

ちょっとだけ怖い話(16)

その悪霊とやらの詳細が分かったのは、これもハッテン場。ソウルで、深夜便で来たから、もうホテル取らずにハッテン場で一夜を過ごそうと思って入ったらすごいいっぱいで。大部屋に雑魚寝している人でぎっしり埋まっている。仕方ないから入口附近に座ってウトウトしていたら、奥が開いたんで、そこに移ろうとして、そしたら、急に眼鏡をかけたガリガリのカラダをした奴が喚きだして。で、俺を指さして「こっち来るな、こっち来るな。」って言っている。何、ハッテン場で日本人差別?ってちょっと不愉快な気分になって、そしたらそいつが暴れだしたんで、周囲にいた韓国人たちがそいつを取り押さえた。周りの人に「ごめんね、ごめんね。」となぜか謝られる。だって、俺、別に何かしでかしたわけじゃないからね。そしたら、取り押さえられた奴が、俺も韓国語はあんまり分からないんだけれど「持ち帰っている、持ち帰っているんだ、帰らせろ。」と怒鳴りつけられて。で、続けて、「そいつの後ろに倭寇と、上に生首が4つグルングルン回っているんだ。」と、指をさされて言われた。倭寇・・韓国ドラマ以外では聞いたことがないが、たぶん武士なんだろうね。で、スタッフが来て、喚いていた奴は退店させられた。・・別にオチはない。それだけ。というか、同情されたからか、モテた。ま、生首4つ回っていたら、さすがに良い霊ではなさそうだよね。で、言われてどうしたのか。だからどうもしない。悪霊が憑りついていたところで、たまに人が逃げていくだけで、これといった実害はないし。悪霊が後ろにいるなんて、ちょっとカッコよくない?皆さん、頭上に生首が4つクルクル回っている人がいたら、それ、俺だから、声かけてね。

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2021年09月22日

ちょっとだけ怖い話(15)

悪霊が憑りついているというのは、まあ、知っていた。薬師池公園の前でバスを待っていたら、降りてきたおばあさんがいきなり「あんた、悪霊ついているよ。」って言われて。「そうなんです。」ってさらって答えたら、目をまん丸くしていた。中野の商店街を歩いていたら、うだつの上がらなそうなヨレヨレのポロシャツ着た中年男性が、俺のことを見て、「うわぁぁぁ」って叫んで急いで逃げて行った。佐川急便でバイトしていたら、そこで一緒のコーナーで働いていた中年太りの男が、「君の後ろ、黒い影が見える。」と言い残して、その日は早退して、以後来なくなった。なので、すっごい強力な霊が憑りついているんだなっていうのは分かったんだけれど、なぜ悪霊なのかなっていうのが引っかかっていた。だってさ、悪霊ってパッと見て分かるの?守護霊かもしれないじゃん。オーラからして悪霊っぽいのかな。俺は全く見えないんで、実感はない。

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2021年09月20日

ちょっとだけ怖い話(14)

なので、なのでというわけではないんだけど、霊が見えたりするのは宮下一族、お父さん、婿養子なんで宮下といっても母方の系統が霊が見えたり憑りつかれたりするらしい。悪霊の前に死神の話もしておくかな。俺は見たことない。おばあさんがもうかれこれ15年前に死んだんだけど、その2年前から痴呆症が進んでさ、俺のことも分からなくなっちゃって、俺のことを御徒町に住んでいたご近所さんと間違えているらしく、毎日なんか適当に話を合わせていたんだけれど、死ぬ前日、5月14日に、俺の隣を見て、「ああ、死神か。いよいよお迎えにきたんだね。」と、はっきりした声で急に言い出して、何言ってんだ、呆けてしょうがないなと思っていたら、翌日に心不全で急に死んで。俺は死神というのがピンと来なくて、・・見たことないし、死神って「神」なの?っていう違和感もあるし、死ぬ前に初めて会ったとしたら死神だって分からないんだから、見た目が明らかに死神だったのか、死神から何か言われたのか知らないけれど、お迎えが来るってのはこういうことなのかなってね。で、悪霊も死神もそうなんだけど、俺は見てないから知らない。なんで見えないのか。いや、俺に聞かれてもしらない。霊視にも近眼とかあるのかもしれないし。

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2021年09月15日

ちょっとだけ怖い話(13)

ついでだからもう一つ。これは俺自身の話なんだけど、俺は怖くないんだけれど、たぶん見えたら一番怖いかなって話。実は俺、悪霊に憑りつかれてね。何言ってるの?と、もう既についていけていないかもしれないけれど、別に俺自身もついていけてはないから大丈夫。俺の一族の話からまずするよ。俺、誕生日が5月15日なんだけど、俺のおじいさん、おばあさん、いとこ、おばさん、あと市長をやった遠い親戚のおじさん、ああ、おじいさんは再婚だから血のつながりはなくて、おばさんは2人いるんだけれど、5月15日が命日。だから、俺って誕生日、ケーキは予約してあったから食べるけれど、まあ、死んだって連絡が入るし、そもそも「健一」の「健」は生まれる1年前に死んだ市長の一字をもらったという、なんか縁起の悪い名前だし。あと、おばさんのうち一人は首つり自殺、もう一人は風邪をこじらせて肺炎になって死んで、同い年のいとこはサッカー留学に行ったブラジルで交通事故死。でね、怖いのは、うすうす5月15日という日に何かあって、先祖がなんかして、きっと末代までたたられているんじゃないかと推測はつくんだけれど、由来を知らない。なぜその日にやたら死ぬのか、誰の呪いなのか、まったく情報がない。そんな日に生まれて良かったのか分からないけれど、宮下一族はそもそも因縁めいているということが分かってくれたかな?

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2021年09月12日

ちょっとだけ怖い話(12)

それから2週間くらい経って、家でふとそのハッテン場のホームページを探していたら、そのハッテン場のことが書かれた新聞記事が引っかかった。そのハッテン場で、ビニール袋を被って個室で一人自慰行為をしていたところ、誤って窒息死してしまったんだという内容だった。そんな性癖の人いるんだなって思って、高雄で会った彼にURLをLINEした。そしたら、「そっか、実は君には黙っていたんだけれど、実はその部屋で、変な声が聞こえたから、その部屋を出たんだ。」と。変な声?「苦しい、苦しい、死んじゃうよ、誰か助けて、って。君が怖がるといけないから、言わなかった。」あの耳鳴りのような現象がそうだったのだろうか。俺は中国語はそこそこ分かるんだけれど、俺にはざわめきのような音しか聞こえなかった。隣・・使用禁止の部屋だったしな。その新聞記事を見直すと、彼と会う3日前の朝方の出来事だった。というか、そういう性癖だとしても、わざわざハッテン場に来てビニール袋を被って自慰行為の方が不自然で、「助けて」って言っているんだったら殺されたんじゃない?と思うと、・・成仏はできないよね。その後、そのハッテン場のすぐ傍に、新しいハッテン場ができたのだが、いまだそのハッテン場は現役だ。あと、その彼はその後、花蓮で看護師の資格を取って、台北のとある病院で看護師として働いている。もちろん、彼と会うときはホテル、ハッテン場には行かない。

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2021年09月10日

ちょっとだけ怖い話(11)

彼、タフで、3回もイッたのに、全然疲れ知らず。俺のカラダに絡まってくる。埔里って行ったことないけれど、ハッテン場あるかしら?タイヤル族オンリーのハッテン場に行きたい。エアコンガンガンに効いているのに、汗がとめどなく出てくる。ただでさえ寒いのに、汗が止まらないからカラダが冷えてきた。と、上に取り付けてある天吊り型のエアコンが、急に「ガンガン、ガンガン」と、なんていうか、ガタガタいうならわかるけれど、叩きつけるような音が鳴って、今度は白い水蒸気状のものがバーッと出てきた。見るからに古そうなエアコンだからね。というか、爆発しない?故障の一歩寸前って感じ。と、ワーッて、耳の中からざわざわ声がするような感じになった。ウワヮヮン、ウワヮヮヮワン、って耳鳴りというか、耳の中でこだましているような感じで、結構すごい。と、俺に手足を絡ませていた彼が、動きを止めて、「休憩しよう。」と。出ると、隣の個室はドアは空いているのだけれど、透明なビニールシートで覆われていて、「使用禁止」と書いてあった。赤い印が押されていたから、保健所か何かが来たのだろう。シャワーを浴びて、休憩室で生ぬるいコーラを飲んでいたら、彼が来て、「これからバスで台中に帰るんだ。」と。急だね。朝4時だけど。「これ、僕のLINE。今度、僕の故郷、埔里を案内するよ。」と言い残して、彼は帰っていった。

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2021年09月07日

ちょっとだけ怖い話(10)

4階に上がると、普通の洋画が流れていて、リクライニングのソファが置いてあって、そこかしこでオヤジどもの高鼾が聞こえる。皆、一様に太っていて・・屁をする奴まで。最悪だわ。ホテルに帰りたい。と、脇で寄りかかっている、なんかシルエットからしてカッコよさそうな男が視界に入る。近寄ってよく見ようと思ったら、サッと向こうに行ってしまった。・・柱の陰から頭を出してこっちを見ている。逃げたというよりは誘っている?というか、顔つきがワイルドで中華系っぽくはない。気になってそっちに行くと、来たのを確かめてから個室の前に立っている。スラっとして、顔が小さくて・・俺が見ていると、個室に入ってベッドに座って、ボロボロになったマットをバンバン叩いてニコニコしている。言っておくが、彼が実はこの世のものではなかったという話ではない。言うから隣に座ると俺の手を取って、そのまま頬擦りした。え、何、近くで見たら本当に、なんか坂口憲二風のイケメンなんだけど。日本人?と日本語で聞いたら日本語はわからないらしい。聞くと、台湾中部の埔里(プーリー)から来た台湾人なんだけど、中華系ではなくてタイヤル族という原住民なんだそうだ。原住民・・俺の抱いているイメージと違う。色黒で・・座っていても腹筋バキバキに割れているのがわかる。何、ジム?って聞いたら、柔道をやっているんだって。柔道体型というよりは、サーフィンか水泳でもやっているかのような、色黒のムキムキな筋肉質体型。と、ふいにキスをしてきて、「僕のこと、嫌い?」あら?さっきまでゾンビとビヤ樽みたいのしかいなかったのに、何、この嘘みたいな光景。嫌いになる要素が一個もない。

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2021年09月05日

ちょっとだけ怖い話(9)

2階に風呂と休憩室があって、ホテルでもカラダを洗ったんだけれど歩くだけで汗が出てくるような気温なんで、またシャワーを浴びて、バスタオルを腰に巻いて休憩室に。ここって中国語で書かれた漫画があったり、フリードリンクとバナナとかちょっとした食べ物が置いてあって、デスクトップ型のパソコンも設置されている。テレビでは深夜の台湾のバラエティが流れていて、トークバラエティらしき番組を50代くらいのてっぺんの禿げたオヤジがピーナッツをボリボリ食べながらつまらなそうに見ているし、パソコンの前には干からびたカラダをしたおじさんがカチカチとマウスで何やら見ている。生暖かいコーラをクッと飲んで、上に上がる。3階、何かゾンビのように皆がゆっくり歩いている。どいつもこいつも、うつろな目をして覇気のないオヤジばっかり。既に怖い。武器が欲しいくらいだ。映画が終わったのか、スクリーンはずっと青いままで止まっている。そう、もう深夜0時を回ったところ。台湾人は夜更かしなんてしないどころか、ハッテン場には夕食前に行くというお国柄。寝られずムラムラした奴しかこんなところには来ない。眠い。ホテルでアプリでも弄った方が効率良かったな、こりゃ。

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2021年09月03日

ちょっとだけ怖い話(8)

こんな話もあった。この話も何だろうなって引っかかってはいたんだけれど、後日新聞にも載ったし、俺がはっきり見たわけではないんだけれど、聞くとまあ霊的現象だったんだなって。いや、でもね、こういう事故物件みたいなのって、いうべきじゃない?って思ったんだけど。これは、台湾の南部にある第二の都市、高雄で起こった話。またハッテン場なんだけどね。台鉄高雄駅の前って、第二の都市の玄関口にしては汚い。台湾なんで、飲み屋街とかラブホテル街ってのはなくて、安ホテルが建ち並び、東南アジア系の外国人の経営するいろいろな店が建ち並ぶ、薄暗くて夜歩くにはちょっと怖いようなところにハッテン場がある。そこもまあボロボロで汚くてね、入ったところで廃病院とか廃ホテルのような、暗くて肝試しでもできそうな、そもそもそんな、霊がいてもいなくてもちょっと怖いハッテン場。日本人は台北にあるようなキレイで人気のあるハッテン場しか行かないからね。こういうディープなスポットもあるんだよ。
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2021年08月28日

ちょっとだけ怖い話(7)

ロッカーから赤いぼろぼろのタオルを取ってシャワーを浴びようとすると、彼が俺の手首を掴んできた。血相を変えて「見つかった?」と。いや、急いで飛び出した君より後で見たから、もちろん誰もいなかったよと。ひがんだ奴の悪質ないたずらだとすごい怒っているが、何より、未使用のコンドームを手にして、まだ俺とやろうとしている。さすがに2回もこんなことあったから帰るよ。彼はまだ他の人とヤルつもりらしい。閉店まであと2時間もないし、人いないけど・・よく彼は全然平気だよね、と彼を見ると、彼の脇腹と背中に、野球ボールくらいの丸くて浅黒い痣が見えた。痛くないんだ、その痣・・・。仮に水の玉が当たったとしても、そんなに跡が残る・・?俺は新倉イワオでも宜保愛子でもないから、霊の仕業かどうかとか、彼がその後どうなったとか、そういうのは知らない。その後もそのハッテン場には行くけれど、その霊はおそらくいないようだ。その彼ともそれっきりだ。ただ、その個室だけはトラウマになっていて今でも使わない。

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2021年08月26日

ちょっとだけ怖い話(6)

キスを交わす。俺の舌を強烈に吸う。え、あの、続けるの?マットも君もビショビショよ?原因不明のさ。キスをしながら、俺はマットをティッシュで拭く。かなりの水の量なんだけど。俺の冷え切ったカラダに比べて、彼のカラダは微熱でもあるのかっていうくらい熱い。カラダに比してそんなに大きいわけでもない彼のチンコは、まあ鉄の棒?ってくらいに固くなってさらに熱い。さっきまでフニャフニャだったのにな。というか、ロッカーのところで見た時の方がフニャフニャだったのに大きかったような。逆に、俺はさっきの音にビビっちゃって、チンコの勃ちが良くない。そんなことに構わず、俺を仰向けに寝せて、すごい乳首をなめてくる。俺の手を頭の上で抑え付けて、乳首を弄ってまたキスを交わし、ケツにローションを塗って・・ウケなのに俺に入れようとしてるよね?されるがままになっているけれど、言うまでもなく、俺、タチなんだけど。実は彼、タチもいけるのか?と、俺は天井を向いていたから見えたのだけれど、何か白く光ったものが斜め下方向に飛んできて、すぐに「バン!!!」って音がして水・・俺も自分の足とか触ってみたら、水で濡れていた。濡れ方が、なんか足に水の膜ができているような、満遍なく濡れている感じなんだよね。それでいてサラってしていて。彼がすごい勢いでドアを開けて出て行った。犯人捜し?俺も続いて出て見たけれど、もちろん誰もいない。通路にも、空いている個室にも、というか、他にヤッている人さえいない。誰もいない。

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2021年08月22日

ちょっとだけ怖い話(5)

彼も「スゲエ寒い。」と言って抱きついてくる。その割にはカラダがメッチャ熱い。抱きつく口実かな?キスを交わして、デカいね、こんなの俺、入るかなとか、胸が厚いね、どこで鍛えているのとか、定番のことを言いながら、決まり切った前戯をする。彼、ウケなんだけどすごい責めてくる。「タチなのに、すごいいい声出すね。」なんて年下から辱めを受けて、カチカチになったチンコを握られる。「しゃぶっていい?」といって奥までしゃぶってくる。で、しゃぶりながら自分のケツにローションを入れてリズミカルに指でほぐしている。卑猥だね。なんだ、いいのを捕まえたなって思っていたら、「バン!!!」となんだかすごい音が。壁に何かがぶつかったような音。彼の腰辺りに何かが当たったらしく、さすっている。何の音?と思ったが、・・マットが異様に濡れている。水?大量の水だ。彼のカラダもビッショリ濡れている。彼曰く、「水が降ってきた。」と。そして和やかに笑って俺のチンコを触って揺らす。「萎えちゃった?」

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2021年08月20日

ちょっとだけ怖い話(4)

そのイケメン、そこにずっといて、俺の方をチラチラ見ている。ウケか。あんまり背の高いのって得意じゃないんだけど、そのイケメンがこっちに来て触ってくるから断るわけにもいかない。だって、断ったところで他にやれる当てもないし、いたとしてもこのイケメンよりいいって保証は全くない。どうせヤッている最中に消えて、水だけ残っていて、ヤッていたのは霊だったってオチなんだろって思っているかもしれないが、そもそも霊を見る前に、ロッカースペースでそのキラキラした目をした、マスクを取った時の三浦翔平風の顔も、腹筋がボコボコしていてヨダレが出そうなおいしそうなカラダも、手で隠していないWow!な大きさのものも、明るいところで何から何までチェックしているし。ロッカーを開けるとき、古いロッカーだからギギギギと音が出るんで、このイケメンが来てすぐに携帯チェックするふりしてロッカースペースに戻ったんでね。もうすこし胸が厚くて背が10センチ低かったら申し分ないんだけどね、って思って。贅沢言ってはいけないわ。まあ、仮に取り憑かれてそのイケメンが俺のところに来たとしたら、それは取り憑かれた方にとっては悪霊かもしれないけれど、俺にとっては良い霊であって、全く問題がない。ま、すぐ側の個室に入る。いつもはここの個室は明るいんだけれど、今日は暗くて異様にエアコンが効いていて寒い。

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