2018年05月16日

ゴーグルマン(6)

「どうだった、男の味は?」
三上はこんなやり取りをもう何百回となく繰り返しているから、社交辞令のようなものだった。けれど、亘行には魂を抜かれたかのようにボーっとなるほど新鮮で、かつてない快楽であった。
「良かったです。またヤリたい。」
口からそんな言葉が自然と出た。
三上は、撮った画像を編集する前に、仲間と一緒に酒を飲みながら見た。大体、撮ってきたものをワイワイ批評し合って、その中で意見をもらいながら、編集や売り方、次の作品を考えている。前に、これは自信があるからって自分で編集した後に見せたことがあったんだけれど、このアングルじゃ興奮しないとか、設定が不自然だとか、誰目線で作っているのかと酷評で、結局メインでいけなかったという前例があるんで、それ以後は必ずこの回を設けている。仲間内で何が分かるんだと素人は言うかもしれないが、売れる売れないはこの業界の人が一番よく知っている。ある意味公平な視点を持っているともいえる。自分よがりな作品を作っても仕方がない。ビジネスで考えないと。
「いいね、この子。どこから見つけてきたの?」
一応出だしは好評価だ。
「ノンケか。でも、潜在的な力がまだまだあるね。伸びるよ。」
「カメラ固定か。一人で撮ったの?ハンディと併用してもいいんじゃない?」
「カラダがエロいね。腹筋の不均衡さがアスリートって感じ。ビー部?どこ大?」
「ジムもやってんじゃない?じゃないとあんな大胸筋にならないよ。」
「この子、タマが腫れてない?不自然だよ。」
さすがにプロには分かるらしい。タトゥやピアスはもとより、健康でないもの、例えば吹き出物とか擦り傷程度ならいいが、内出血とかイボ、湿疹なんかは疵物扱いになる。見ている方が萎えてしまうからだ。
「何、撮影なしで玉責めしちゃったの?最初はノーマルからいって、もっと引っ張った方が良くない?」
グイグイ訊いてくるので、こちらも答えざるを得ない。
「なるほどね。じゃ、エロレスもできるし、SMもイケそうだから、結構いけるんじゃないかしら?」
結局、次回はもう一人カメラマンを入れて撮ることに決まった。

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toppoi01 at 08:30|PermalinkComments(0)ゴーグルマンⅡ 

2018年05月13日

ゴーグルマン(5)

小さなビキニにくっきりと自分のモノが浮き上がっているのが分かった。それをずっと形を確かめるかのようになぞっている。そして、ハッと気づいたことがあった。三上は大きなサングラスをしている。俺はゴーグルをこんなのがあると見たっきりでかけていない。そんな心配を余所に、ビキニは少しずらされて、モノが露わになった。それを三上はしゃぶり始める。溜まっていたからか、また三上のそのテクニックが優れているからか、こんなことは味わったことがないくらい気持ちがいいものだった。快楽が全身を駆け巡った。少なくとも女の比ではない。しゃぶられるという行為が単にセックスの前の儀式程度に思っていたので、すぐに絶頂を迎えそうになった。
「ダメです、やばい。」
三上はしゃぶるのを止めて、その大きく盛り上がった胸の先端にある乳首をベロベロと音を立てて舐め始めた。さっきの快楽の再来だ。乳首がこんなにも感じるとは自分でも思ってもみなかったし、モノもそれに引きずられてビクビクと跳ねるように波打っている。それを弄ぶように、三上は手で掴んでは腹へと打ち付けている。濡れているからかバチン、バチンと腹へと打ちつける音がする。そしてキスをする。男同士のキスなんて、体育会の罰ゲーム以来だ。若干ウィスキーの臭いがして、あまりいい気分ではなかったが、三上は構わず下唇を噛み、舌を入れてくる。男でもキスってするんだなっていうのと、やっぱそこは男は男なんだなって思った。そして、指で急にケツの穴に入れようとしてきたので、驚いてさすがに止めた。指を突っ込むなんて、さすがにそこまではいくらなんでも無理だった。
すると、手でモノをガシガシとしごき始めた。手がガサガサしていて、何とも雑な感じだったけれど、人からやられるのって新鮮で、刺激的だった。「やばい、やばいです。」亘行は手で抑えようとしたが、却ってスピードが速くなり、自分でもびっくりするくらいな勢いで噴射してしまった。普段、自分のカラダの上に飛ばしたりしないから、こんな首とか胸の辺りを汚すとか思ってもいなかった。

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toppoi01 at 08:00|PermalinkComments(0)ゴーグルマンⅡ 

2018年05月12日

ゴーグルマン(4)

「川辺に行こうか。遠目で後ろから放尿シーンを撮るから。」
橋の下あたりに移り、久方ぶりに立ちションをした。
「OK。撮れたよ。見てみる?」
見せてもらったが、後ろ姿だったこともあって特段平気な感じだった。
「じゃ、車に戻ろうか。」
戻ると、後部座席がフラットになっていた。
「ちょっと上がってもらっていい?またちょっとインタビューに入るから。」
「ああ、上は脱いでもらっても大丈夫?」
「いいね、ちょっと腹筋から胸にかけて舐めるように撮るから、うん、腹筋に力入れて。そうそう。」
「ちょっと写真も撮るからそのままそのまま。」
「胸の筋肉もちょっと動かせる?すごいね。両方イケる?」
乳首の辺りをちょっと触る。そして、大胸筋を撮りながら手で撫でるように触り、そして軽く揉んだ。
「じゃ、ちょっと横向きに寝てくれる?そうそう。」
「じゃ、またさっきの体勢に戻って、ズボンも脱ごうか。」
トランクス一丁になった。
「うーん、ちょっとこれに履き替えてもらえる?」
暗い赤色のビキニを渡された。ストライプのトランクスを脱ぎ、それに履き替えようとしたが、どうも状態が違う。ケツの辺りがひも状になっている。
「大きいね。言われない?」
「言われます。」
正直どちらかというと小さい方だということは自分でも承知していたが、行きがかり上そう答えた。履くと、レザーシートが直にケツに当たるので、ちょっと嫌な感じがした。それに、ビキニから陰毛がはみ出してしまって、早くも見られているという感じになった。
「ちょっとさ、チンチン揉んでみて。うん、そうそう。」
といって、機械的に自分のモノを揉んだ。しかし、別に何という感情も起きなかった。すると、三上はカメラを前の座席に固定させて、後ろ座席に乗り込んできた。そして、乳首をやや大仰に舐めだして、股間をどちらかというとやや粗雑に揉んできた。あまり胸を舐められたりしたことがなかったので、手の先足の先まで痺れるような感覚を覚え、つい吐息が漏れてしまった。男に、それも中年の男に乳首を舐められている。目をつぶった。自分が自分でなくなるような不思議な感覚。いつしか両方の胸を責められている。俺ってこんなに敏感なんだっていうくらい、受け身的な気持ちよさがカラダを包んだ。それは、揉み解されている股間部に顕著に表れた。
「固くなってきたね。」

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toppoi01 at 08:00|PermalinkComments(0)ゴーグルマンⅡ 

2018年05月09日

雑記帳(2018/05/09)

「ゴーグルマン」をアップし始めています。でも、アクセス数を見ると、「デリバリー」は相変わらずですけれど、「耐えてみろ!」もなかなかアクセスがあるみたいで。唯一の腹打ち小説なんでね。腹打ち小説ってなかなか難しいんだよね。金的と違って、狙う理由ってあんまりない・・(苦笑)。あと、「スプラッシュ」も唯一の強制オナニー小説(なんてジャンルを勝手に作ったけれど)だけど、これもアクセス数が多い。ま、俺が書きたいものとニーズがずれている感じが・・。
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toppoi01 at 08:53|PermalinkComments(0)雑記帳 

2018年05月06日

ゴーグルマン(3)

ちょっと摩るのはまだ早かったかな、と性急すぎた動きをちょっと後悔したが、数時間後に三上の携帯が鳴り、次週の水曜日の同じ時間に会うことになった。同じ喫茶店で待ち合わせることにした。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
今日は先週と異なり、ちょっと肌寒いせいもあってか、ジーンズに長袖のジャケットを羽織って現れた。
「今日はちょっと撮影をするから。」
「・・自分、でも、そういうのは、何か・・」
撮影OKと言ったのに、ここまで来ておいて何ブーたれてんだ、乙女か、と内心イラついたが、
「撮影といってもね、外で服を着たまま、ちょっと運動してもらったり、インタビューをしたり、まあ、そんな構えなくても大丈夫だから。」
と、ワゴン車に乗り込んだ。5分間、無言で走る。河川敷の脇に車を停めた。
「ちょっとこれに着替えてくれるかな?」
薄手の青いランニングパンツにジャケットを渡す。
「ジャケットの下は着ないで。」
ジャケットは着古されていて、背面には「明治大学ラグビー部」と書いてあった。サイズはちょうどいい感じだったが、ドアを開けるとさすがに寒かった。河川敷の土手を上がると、目の前には江戸川が流れていて、その手前はグラウンドになっていた。
「じゃあ、撮影始めるよ。まず、向こうからダッシュしてきてくれる?」
「次に、腕立て伏せしてみようか。」
「スクワットいい?」
「ストレッチシーンを撮るから、座ってくれる?」
次々に指示をされ、そのとおりにこなした。
「いいよ、いいよ。舌を出して頭をかいてみて。」
「腕を上に上げて、肩のストレッチしようか。」
「ラグビーボール持って、ニコって笑って。」
「いいね、じゃ、親指を立ててグッドって言ってみようか。」
そんなこんなで2時間くらいが経った。
「ちょっとさ、そのジャケットをまくって見せて、そうそう、腹筋をチラッと。」
「このスポーツドリンク飲んでみようか。いいね。もっと、そう、全部飲んで。」
「土手に座って、太陽の方を見てくれる?そうそう、眩しそうにして。」
「この土手駆け上がったりしてみようか。」
「じゃ、土手にまた座ってくれる?ちょっとインタビューシーンを撮るから。」
「全部ゲイビデオなんですか?」
「そうだよ、もちろん。何だと思ったの?」
「いや、なんかおもしろいっすね。」
インタビューと言っても、サークルのことや合宿のこと、彼女のこととかたわいのないことで、それでも20分くらいはしゃべった。
「トイレは大丈夫?」


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toppoi01 at 08:00|PermalinkComments(0)ゴーグルマンⅡ 

2018年05月04日

ゴーグルマン(2)

アイスコーヒーが二つ運ばれてきたが、三上はあっという間に飲み干した。その肉体の持主である亘行は、とある格闘会場でスカウトした。こんな賭けで行われるような試合に出る輩は、中には格闘マニアもいるが、だいたいが何かしら金銭関係で悩みを抱えているケースが殆どだ。三上が声をかけて連絡先を渡すと、金に困っているのかすぐに電話がかかってきた。
「ちょっと触ってみていい?」
ふくらはぎと言い内腿と言い、どうしたらこんなに筋肉がつくのかっていうくらい筋肉の塊がついている。テーブルの下から内腿をなぞってハーフパンツの中身の方へ手を這わす。
「自分の中では、どの部分が一番自慢できるところ?」
「肩から背中にかけてです。」
確かに逆三角形のカラダで肩が盛り上がって見える。
「普段は女の子と?」
「はい。」
当然と言えば当然か。
「すごいって言われない?」
「言われます。」
若干笑みがこぼれた。会話は緊張をほぐすことが目的で、ましてや男と関係を持ったことがないノンケはそもそも警戒心が強く、ふとしたことでこの話はなかったことにとなりかねない。徐々に徐々に慣らしていくことが大切だ。
「男同士で、扱きあったりはしないの?」
「比べあったりはしたことあります。」
「どう?こういうの。」
内腿をそっと撫でるように触る。
「・・・。」
俯いた。どうもこうもないか。でも、前の試合で、相手に金的を責められたときの様子が目に浮かぶ。耳をつんざくような悲鳴をあげて、リングをのたうち回っていた。モノ自体は小さかったけれど、これは絵になる、とそのとき直感した。
「ま、知り合いにバレることを心配しているんだったら、問題ないよ。」
と、水泳のゴーグルと大き目のサングラスを取り出した。
「こんな感じで目隠しをして撮るし、そんなに緊張しなくていいんだ。何部だったっけ?サークルは?」
「ワンダーフォーゲルです。」
期待していた体育会系サークル名ではなかった。
「え、それでそんな太い足に?」
「ジムで鍛えてます。」
(できれば学生っていう体で出したいから、ラグビー部あたりにしておくか。)
三上は摩りながら今後の戦略を考えていた。
「自分のカラダで自信のあるところはどこ?」
「腕です。」
と、恥ずかしげに消えるような声で上腕二頭筋の辺りをさすっている。
「来週の昼で空いている時間ある?」
数秒間が空いて、やはり消え入るような声で答えた。
「・・。後で電話してもいいですか?」

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toppoi01 at 08:00|PermalinkComments(0)ゴーグルマンⅠ 

2018年05月01日

ゴーグルマン(1)

昼2時半、駅から数分離れたところにある、あまり人気のない喫茶店で待ち合わせた。
「こんにちは。はじめまして。」
「こんにちは。」
三上が先に着き、ソファで待っていた。
亘行は、青いハーフパンツに横にストライプの入ったポロシャツを着て現れた。シャツの前ボタンを開け、胸の筋肉の谷間がくっきり見え、そして厚い胸を浮き彫りにしている。腕の辺りははち切れそうだ。
「・・エロいね。モテるでしょ?」
「いえ、トレばっかしてるんで。」
なかなかの好青年だ。芋系ではあるけれど、笑顔がかわいい。
「体脂肪率何%?」
「今は8%くらいです。」
「腕の筋肉、すごいね。」
Tシャツから張り詰めた腕を上げ、上腕二頭筋を見せつける。腋からうっすら汗が滲み出て、Tシャツの色を変えている。
「足もすごいよね。ちょっと見せて?」
ハーフパンツから異様に膨れ上がった内腿を見せる。思わず生唾を飲み込んだ。

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toppoi01 at 08:00|PermalinkComments(0)ゴーグルマンⅠ 

2018年04月29日

終わりの見えないデスマッチB(17)

「無理じゃない?」「まだ、まだできる!!!」心配そうな顔をして見るシディークが腹立たしかった。そんな顔ができなくなるくらい徹底的に殴りつけてやりたかったが、全く当てることもできず、即座にリングに這いつくばった。シディークはリングの中央に移動して、「じゃあ、気の済むまでかかってくるといいよ。ただ、約束は忘れないでね。」と、またも立ち上げってくるのを根気よく待っていた。どうもはっきりと分からないが、こっちの動きが読まれているような感じがした。また、無防備だと踏み込んで入ると瞬間に、そして的確に狙われている。直前までよく見極めて冷静に判断を下している。じゃなければ防御をしないなんてことができない。それと、これはどうしてなのか分からないが、シディークの持っている力の源がよく分からない。当たっても大したことがないだろう、またスピードはこっちの方が上だろうと思ってかかっていくが、相手の方が速いし、かなり手痛いダメージを受ける。まず捕まえようとタックルを仕掛けても逃げられ、顔に渾身の力を込めて打ちかかっても、逆にカウンターで顔を殴られて吹っ飛ばされる。どこにこんな力があるんだと顔に手を当てていると、シディークが鳩尾目がけて蹴りを食らわせた。「ぐぉぉぉぉ!」さすがに二度も鳩尾にまともに食らっては、とてもじゃないが立ち上がれる状態ではなかった。エビのようにカラダを丸めて縮こまり、断続的に襲ってくる吐き気と戦っていた。
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2018年04月27日

終わりの見えないデスマッチB(16)

しかし、こうしてマジマジとシディークを見ていると、どう見ても腕も首も細いし胸も薄く、腹も引き締まってはいるが腹筋だってうっすら割れているだけで、強そうには見えない。むしろ弱そうだ。色黒の顔だからニッて笑うと白い歯が際立って見える。駅近くでインドカレーのチラシを配っているインド系の好青年くらいにしか見えない。俺が不覚にもダウンを奪われたのは冷静さを欠いていたからで、こんな奴にいくらなんでもやられるわけがない、そういう観念が確信に変わると、もう一度練習相手になってくれと頼んだ。そう言いつつ、実来は俺の圧倒的強さを見せつけてやろうという野心で燃え上がっていた。「いいけど、一つ約束してもらっていい?」と、シディークが真剣な面持ちで言う。「僕が1分以内に勝ったら、健のスパーリング相手を続けてくれる?」「え、それはなぜ?」すると、衝撃的な答えが返ってきた。「健が、君を特訓して欲しいって言ってきたんだ。けれど、僕は健が君を甘やかしていると思うんだよね。」「もっとできるのかと思っていたけど、健が手加減していたのかな。」と、堰を切ったかのように挑発的なことを言ってきた。「何言ってんの?マジで。」シディークが立ち上がったので、俺も相手の目を見ながら立ち上がった。「次は殺すぞ。」と、後ろを振り返りもせずにリングに上がったが、1分ももたなかった。顎にきれいに入って軽い脳震盪を起こし、リングに崩れ落ちた。大の字で倒れる俺を見つめるシディーク。ちょっと笑っていたので飛びかかっていきたいが、カラダが思うように動かない。シディークはコーナーで悠然とカラダを預けて俺を見ている。意識がはっきり戻ったところでもう一度シディークに殴りかかる。しかしすんでの所でシディークの前蹴りが俺の鳩尾にヒットした。たまらず俺はその場にしゃがみ込んだ。シディークはロープに両腕を預けたまま動かなかった。避けさえもしなかったのに。「ま、まだ・・。」声を絞り出すのがやっとで、何とか立ち上がった。
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2018年04月01日

終わりの見えないデスマッチB(15)

シディークは選手ではなくトレーナー志望で、ナデートだけではなく、いろいろな人をサポートしているようだった。普段はただ、基礎的なトレーニングとかアドバイス、栄養指導をしているのだが、俺には特別に実技指導をしてくれることになった。要するに、教えるところがあるというよりは、まだまだ見ていて荒いのだろう。しかし、実来には、きっと舐められている、シディークにも勝てると思い込ませるほど、自分を甘く見られているというように思えた。自分では健に学ぶことがないというくらいの気持ちだったので、その高く伸びた鼻を叩き折られたような形で屈辱的であった。加減してやったのに、もっと痛い目に遭わせた方がいいのだろうか。シディークは、またも打ってこいと実来を挑発した。赤い旗を前にした闘牛の如くいきり立ち、結構最初から本気モードでシディークに打ちかかっていった。しかし、本当に当たらない。逃げられているのではなく、スレスレのところでかわされている。そして、ふいに打ち込んでくるけれど、それはなぜか脇腹ばかりにヒットする。そこに吸い付けられるかのように狙ってきたところを当てようと思うが、そう狙い通りにはいかない。ガードが下がれば顔ががら空きになってしまう。また、同じ脇腹に!そして実来は崩れるように前のめりに倒れた。シディークは笑って「これで五分五分だね。」と言う。いや、全然五分五分ではない。足がガクガクして全然立ち上がれない。あんな当たっているか分からないくらい軽いパンチだったのになぜ?喉が渇いたという理由で、相手に悟られないようにゆっくり立ち上がり、ベンチの方に向かった。「肩、貸そうか?」と、やはりシディークにはそんな繕った元気が見透かされているようだ。


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2018年03月31日

終わりの見えないデスマッチB(14)

実来は健に相談してみた。すると、ナデートについていたシディークがその役を買って出た。シディークは見たところ虚弱体質であるかのように線が細く、風が吹けば倒れるんじゃないかと思われるくらいだった。健と比べれば明らかに力の差があり、実践の相手だと聞かされるとからかわれているのかとムッとした。きっと見くびられているんだ、俺がこいつを打ちのめして突き返してやれば、俺の実力が分かるだろうと思い、早速シディークと実戦を行った。打って来いと一丁前に言うので、軽くローキックを放ったら避けられた。あんまり強めに蹴って相手を怪我させちゃってもなと思って様子見で健に徹底的に教わったジャブを繰り出すが、全然当たらない。フットワークがかなり軽くて避けられてしまう。シディークはケタケタ笑っている。余裕なんだ。しかし、あまりに当たらないと練習にもならない。こういうのは実力差がはっきりしている相手だったら分かるが、明らかにシディークの方が体格的に劣っているし、それでいておちょくられている。実来は、分かった分かったと手振りで示して、近づいていって、細い二の腕を掴んだところにボディを食らわせた。本気で殴ったわけではないが、うずくまって倒れ込み、エビの字になって呻いていた。さすがにやり過ぎたなと思って近づくと、実来の肩に手を乗せて、立とうとしたところにボディを食らった。取るに足らない相手だと思っていたし、そもそも腹筋には自信があったのだが、結構鋭いボディで、平静を保っていたが実は結構効いていた。「なかなか強いね。」とシディークはまだ腹を押さえていたが、ニヤッと笑った。
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2018年03月28日

終わりの見えないデスマッチB(13)

ジャナバルは腕が4本あり、指も6本それぞれ生えている。そのせいか、上半身の発育が尋常ではなく、おそらく実来の2倍はあるのではないかというくらいの肩幅で、胸ももの凄く厚く、肩幅もアンバランスに広かった。ただ、腕は上腕の方が太くて、普段はその上腕の方だけ使っていて下段の腕は垂れ下がったままだった。そのためか、下段の腕は2周りくらい細かった。ナデートは、ヒマラヤの雪男と言われても違和感がないくらい、ふさふさでやや硬めの黄金の毛に覆われていた。夏の間はその毛が薄くなって首や胸、内股の辺りは毛が全くなくなるが、その他の時期はその毛で皮膚が全く見えなかった。顔と尻は毛がなく、さっぱりとした顔つきをしていた。なので、ジャナバルと違って長袖シャツとジーンズをはいていれば気づかされないが、尻尾が足より長く、そしてその尻尾は手よりも自由自在に、そして素早く動かせるらしく、缶ジュースなどは尻尾を使って飲んでいるくらいだ。あと、口を開くと、糸切り歯が牙のように鋭く生えている。ひどい猫背で、聞くところによると四足で走った方が速いようだ。奇形と言われればそうなのだが、普段は実来に対してとても優しく接してくれ、普段から精悍で厳しい顔つきをしている健と異なり、いつもニコニコしていた。ジャナバルとナデートは、それぞれ別の専従の相手がいて、その人とトレーニングを積んでいたのだった。
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2018年03月25日

終わりの見えないデスマッチB(12)

終わった後、ハッとするとすっと鼻血が一筋垂れて、ジーンズを赤く染めていた。そして股間はずっと硬い状態を維持していた。一対一の喧嘩、それも誰にも止められることもないし、ルールに縛られずに強い者が勝つという単純明快なルール。今までずっと意味も分からず、時には理不尽なルールで雁字搦めに縛り付けられていた実来にとって、内から解き放たれた、とても爽快で弾け飛ぶような強い衝撃だった。こんなにも高揚とした気分は初めてだった。これが探していたものかとカラダに電気が貫通したかのようにビリビリという感覚が走った。帰ると、自分の気持ちを率直に仲間に伝えた。目標を持った実来は、それからは率先して暇さえあればトレーニングをこなし、そして健とスパーリングをした。というのも、他の者が全然相手にしてくれなかったからだ。頼み込んだがダメの一点張りだった。このデスマッチを選んでいるのはジャナバルとナデートだけだった。二人とも、今まで会ったことのない人間だった。人間には違いない。しっかりとした日本語をしゃべっているのだから。ジャナバルはトルコから、ナデートはタイから子どもの時に買われてきた、というよりは親に見捨てられて引き取られたというのが正解だろう。そもそも、風貌が人間とはいえず、親から忌み嫌われて生まれたときから孤児だったのである。


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2018年03月24日

終わりの見えないデスマッチB(11)

というか、ずっと気にはなっていたが、そのうち一方は片手で股間を握り締めているのか隠そうとしているのか、恥ずかしいのか防御なのかしらないけれど、どうも自分の股間を守ることで必死なようで、手数はどうしても股間を隠していない方が多くなっていった。殴る力も大したことはないけれども、片手が塞がっている以上攻撃も防御もままならず、結局は一方的な展開となった。やられっぱなしだったが、そんなにも股間が大事だったのか、負けた後も股間から手を離さなかった。健と目が合った。「何か、やる前から分かっていましたね。」「何が?」「勝敗の行方が。」「ん?そうか?俺にはわからんかったけどな。」え?まさかの答えだった。健より優位に立ったように思えた。健に勝てそうな気がしてきた。次の試合はデブ対デブの、これまた見ごたえのない試合だった。殴られて鼻血は出すわ、最後に歯が折れたのか、口から血と一緒に何か噴き出して、慌ててリングを去って行った。
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2018年03月21日

終わりの見えないデスマッチB(10)

それから、基礎体力に加えて、健がスパーリング相手になった。ただ、なんかこう、束縛感というか物足りなさが拭えなかった。ボクシングというのは如何せん制約が多すぎる。足が使えないし、拳はグローブでコーティングされている。メニューは淡々とこなして日に日に上達していったが、決められたことしかできないもどかしさが逆に募っていった。週1回、この会場で行われる賭けの試合をこの前、初めて観戦した。もちろん、総合格闘技やボクシング、レスリングやムエタイなど、格闘系の試合はDVDで何度も繰り返し、それこそスローで見たり巻き戻してみたりとそれこそ何度も何度も繰り返し穴が開くくらい見ていたが、生の試合を観るのはこれが初めてだった。試合、といっても、最初の対戦はガリガリに痩せた方が大声をあげて腕を振り回したり、狭いリングの中を逃げまどい、遂にはリングから自ら降りると言う、全然試合になっていない試合だったので、これはこれで衝撃だった。リングは2つあって、1つは低い賭け金でできる、古びたリングにパイプ椅子やベンチが無造作に周りに並べられた安普請なもの、しかし、もう一つは照明が眩しいくらいに照らされ、古代ローマ帝国のコロシアムのように、賭けに参加する人たちがゆったりと自宅でテレビを見ながら観戦しているかのように、前の方はテーブルがあってその後ろにゆったりとした一人がけのソファが並べてあった。観戦したのはもちろん安い方だ。それも立ち見で後ろの方から。次の試合も、いかにも弱そうな二人が上がってきた。喧嘩をしたことがあるのかどうかすら怪しい二人、つかみ合ったり手で殴りあって、絡み合って倒されて、また絡み合ってって勝敗がいつになったら決まるのだろうと思うくらい互角で決定力の欠く試合だった。
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2018年03月18日

終わりの見えないデスマッチB(9)

そんなことを続けて6ヶ月が経った。実来の顔はどちらかというとちょっとあどけなさの残る愛嬌のある顔だったのだが、ロードワークのおかげで引き締まって、日焼けで黒くなり、なかなか精悍な顔立ちになった。カラダつきもむしろほっそりしてきて、ボクシング体型になってきた。金髪で金のネックレスをした健が、「ちょっと上がってみるか?」と実来を誘った。その頃にはリングというものがいかに神聖なものであるか、実来にも経験で分かってきていたので、上がるだけでも緊張と感動で、実は泣きそうだった。「打ってみろ。」健が自分の腹を指して言う。「自分がですか?」健は軽くうなずいて、来いと手振りで示す。右脇腹に打ち込んだら、同時に健は実来の左頬を思いっきり殴った。その勢いでカラダがバランスを失って吹っ飛んだくらい強かった。「おい、それで本気か?本気で来ないと殺すぞ。」今まで優しかった顔しか見せなかった健の凄んだ声に正直驚きを隠せなかった。健は唖然として立ち上げれずにいる実来に蹴りを入れ、「来い。」と、さっきと同じく仁王立ちになって言う。殴り掛かるが、やはり蹴られ殴られ、リングに叩き付けられる。腹を蹴られて動けなくなった実来の髪を掴んで、無理矢理立たせ、「いいか、実来。俺たちは誰も助けてくれる奴がいないんだ。分かるか?誰一人として手を差し伸べてくれる奴なんていないんだ。自分の身は自分で守れ。それしか生き抜く道はないんだからな。」と説いた。実来は涙がこらえきれず、ワンワンと声をあげて泣いた。こんなに泣いたのは、朧気に記憶の片隅にある母親と死に別れたとき以来な気がした。

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2018年03月17日

終わりの見えないデスマッチB(8)

実来が選んだのは「格闘」だった。それは、腕っ節に自信があったわけではないが、複数の仲間が選んでいたからだ。そして、皆優しかった。まずはボクシングをやっていた金髪オールバックの5つ上の少年が、基礎から教えてくれた。基礎体力が重要だからとロードワークを延々と行った。倉庫が立ち並び、周りはフェンスと海で囲まれていた。そこから出ることは禁じられていたので、ただ延々と倉庫の外周を走り続けるだけだった。逃げようと思えば逃げられない環境ではなかった。しかし、ここから逃げて、今よりいいことがあるはずがないことは皆分かっていた。そもそも社会から捨てられた人間の集まりだ。表の社会には縁がない。腕っ節にかけるというのもごく自然なことだった。実来は中3「相当」になり、背は150cmくらいに伸びたが、まだまだ小柄だ。ただ、スパーリングなどせず、毎日毎日基礎体力作りだけ。普通であれば嫌になって投げ出すところだが、実来はそんなことをおくびにも出さなかった。

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2018年03月14日

終わりの見えないデスマッチB(7)

好きなこと、この空間にはいろいろな「モノ」がいた。ずっと朝から晩までコンピューターを弄って何やら作っている「モノ」、外国語の勉強を毎日毎日飽きずにしている「モノ」、それぞれが独特だったが、身体障害者が目立って多いのが何よりもびっくりした。腕が2本ともないが、口で筆を持って字を書いたり絵を描いたりしている「モノ」、足が1本しかなくて、ずっとケンケンで倒れもせずに動き回っている「モノ」、頭から火傷のケロイドがものすごい状態で残っていて、顔はもう髑髏に目があるようなひどい有様で腕もカラダに一部くっついているがアコーディオンを必死に弾いている「モノ」、中でもすごいのが、雪男かと思うくらい毛の量が半端なく、しかもなぜかずっと四足で歩いていて、尻尾まである「モノ」、そして他は特段変わらないのだが、ただ腕が4本ある「モノ」・・。兎に角、普通の人、特別な人に共通することとして、ここでは何か技術を身につけなければならないようだった。そして附加価値を付けて、他へと「売る」。だから、価値がないと判断されれば、後は悲惨だった。逃げて日雇い暮らしのホームレスになるか、暴力団に拾われて鉄砲玉として短い一生を終えるか、「養育費」という名の、実に覚えのない借金を背負わされて死ぬまで一生重労働に従事することになか、そんなところだ。

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2018年03月11日

終わりの見えないデスマッチB(6)

そして、いじめられることがなくなると、今度は不思議なもので張り合いがなくなった。もし、誰かが肩を小突いてきたら、因縁を吹っかけてきたらといつも気を張り詰めていたのだけれど、そんなことがピタッと止まったのだ。そして、そんな毎日に飽き足らなくなり、むしろこっちからきっかけを作っていくようになっていき、施設内外でいろいろいざこざを起こすようになった。そして、「売られた」。いや、表向きは引き取り手が見つかったというべきなのだが、実際は厄介払いであった。ただ、決して嫌で行くわけではなかった。最初は更生施設に行くのかと思っていたが、そうではなくて養成施設であり、そこでは仲間と切磋琢磨して好きなことをすればいいというものだった。元々居場所なんて初めからなかった実来にとって、新たな挑戦の場でもあった。

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2018年03月10日

終わりの見えないデスマッチB(5)

ときどき、どうしても寂しくなったときは、ベッドと布団の間に隠してあったそのシールを眺めた。ピンク色のハートに囲まれて笑いかける両親。どっちも会ったことは一度もないし、きっと会うことも永遠にないのだろうが、そのシールを見ると、不思議と寂しさが消えるのだった。その大切なシールを、奪われてしまった。2年上で、育てていた祖父母が死んで、幼い頃から施設に預けられ、この施設のリーダー格になっていた奴だった。
「なんだ、このシール。誰、コイツ?」
「返してください。」
奪おうとしても、背が高いので届かない。周りの奴らは皆嗤って見ている。
「誰って聞いてんだけど。」
「返してください。」
「言えば返してやるよ。」
「・・お父さんとお母さん。」
皆、笑い転げた。
「お前、バカじゃねーの?お前は誰でも股開く名もないソープ嬢と薄汚いハゲたエロオヤジの子なんだよ。」
そう言って、そのシールを丸めて投げ返した。何かプツリと切れる音がした。
「うおぉぉぉぉぉ!!!」
気づいたら、そいつがうずくまって呻いていた。怒りに任せて股間に蹴りを入れたのだ。普段からいじめている奴がまさか反撃するとは思っていなかったからか、不意を喰らってモロに急所を直撃した。痛烈な痛みにもがき苦しみ、痛みに耐えかねて声をあげて泣いていた。シールをまた伸ばしてから周りを見ると、皆目を反らした。実来はシールを元の場所に貼って、固くひんやりしたベッドの上に寝転がった。


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